(リ、リ、リチャード殿下が猫の私にキスをしたぁ――!!!)
フワッと。
モフッと。
優しいキスと、照れ笑いのリチャード殿下に私の心は釘付けされた。前世の推しで、婚約者のリチャード殿下との接点が増え。
推しの、溢れんばかりの魅力。
推しの、底なしの優しさ。
推しの、笑ったときの可愛いさ。
推しの、側にいて感じる心地良さ。
を知ったが。
(ヒロインの登場でリチャード殿下が変わったとき、私は耐えれるのかな?)
お風呂で手を洗い終えると、リチャード殿下は丁寧に私の小さな手をタオルで拭いてくれた。
「これでいいな。ミタリア嬢が舞踏会で着ていたドレスはメイドに渡したから。準備した服を着てくれ、俺も濡れたから着替えてくる」
「……は、はい」
耳がまだ真っ赤なまま、脱衣所を出て行くリチャード殿下を見送り、服が入った籠を覗いた。中にはブレスレットと、リボンの付いた薄いピンク色のワンピースが入っていた。
(……おうっ、リチャード殿下はピンクが好きなのかな?)
どう見ても私って、ピンクとか、華やかな色はヒロインの色。ゲームのミタリアはその反対で薄暗い色が多かった。
♱♱♱
「リチャード様、お待たせしました」
「おお、いいところに来た。今、お茶がはいったよ」
「ありがとうございます」
用意されていたワンピースを着て、紅茶が用意されているテーブルに着く。紅茶の他に、切った桃がガラスの器に盛られていた。
座ってと、殿下も反対側に座って紅茶を一口飲み。
今日の舞踏会での事を話しはじめる。
「正直、驚いた――あのチココとか言う食べ物が、俺たち獣人にとって毒になるとは」
「そうですね。チココの他にも人族の国では食べられていても――私達、獣人には毒になる。ほかの食べ物でもまだあるかも」
「うん、有りそうだな。その逆もありうるかもしれないから、一度、調べてみないといけない。あと食べてしまったときの、対処方も調べないと……ハァ、こればかりは人族のカーエン殿下の協力を仰がないとな」
リチャード殿下に賛成だと、私はコクリと頷いた。
殿下の部屋で、お茶をしているのだけど。
(……おかしい)
お風呂場でリチャード殿下にキスされた後から、お腹のアザが熱を持っているし。無性にリチャード殿下に甘えたくて仕方がない。だからいま、ちょっとでも気を抜けば喉を鳴らして、リチャード殿下に飛びついて、彼の頬に自分の頬を擦り付けてしましそう。
あと、グリグリ、リチャード殿下に撫でられたい……ブラッシングされたい。
――なんだか、愛情に飢えた猫みたい。
「ミタリア嬢、桃食べる」
「ふぇっ?」
今、この状態での『あーん』は私のご褒美だと、口を開けると、甘い一口に切られた桃が口の中に入る。
――ンン、甘い。
「どう、美味しい?」
「みずみずしくて甘い、美味しいです」
「よかった、ここに雫が垂れてる」
リチャード殿下の指先が伸びてきて、私の唇を拭い、その指をペロッと彼は舐めた。
(ヒェ、これ以上、リチャード殿下の側にいたら、甘えたい気持ちが爆発する!! はやく屋敷に帰って落ち着かなくっちゃ……)
「リチャード様、ありがとうございます。あの、遅くなりますから……今日は帰ります」
急いで、テーブルから立ち上がった。
「あ、ああ、そうだな、明日……」
と、リチャード殿下が言い終わる前にコンコンと、部屋の扉がノックされた。殿下が返事をすると国王陛下からの伝言者だと言い。扉を開けず、扉の向こう側から陛下からの伝言を私達に伝えた。
「リチャード様、ミタリア様、お寛ぎのところ失礼いたします。陛下からの伝言です『ミタリア嬢、今日は疲れただろうから客間に泊まっていきなさい。公爵家には既に連絡済みだ』そうです」
――りょ、両親に報告済み⁉︎
「ありがとうございます、国王陛下のお心遣い感謝いたします」
「分かった、知らせてくれてありがとう。ミタリア、夕食はここで取ろうな」
「……はい、リチャード様」
リチャード殿下に甘えたい欲望が治らないから、すぐに帰りたかったのに。陛下からのお心遣いを断ることなんてできない、いや拒むことは許されない。
――今、目の前で嬉しそうに微笑むリチャード殿下に、頭をワシャワシャ撫でられたい! ――くっ、耐えれるのか私!