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第22話

「父上が警戒している相手だ……ミタリア嬢、10月の舞踏会では俺の側を離れないでほしいが――無理な場合、人族がもし不用意に近付いたら距離をとった方がいい」


「はい、分かりました」


 出来れば私も、カーエン王子とお会いしたくない。

 でも、乙女ゲームでのカーエン王子は笑うと糸目になる、キャラ的には好きな外見だったけど……執着愛は苦手だ。


 このカーエン王子も、学園でヒロインと知り合い笑顔を取り戻すんだ。ストリーはリチャード殿下の次に好きだった。



 のんびり進む帰路を進む馬車と、ふわふわお布団の上で、出そうになるあくびを噛み締めた。それを見たリチャード殿下は笑い、本を取り寝そべった。


「俺はいまから本を読むから、公爵家に着くまで寝てていいぞ」


 リチャード殿下は、いまにも眠りそうな私に気遣ってくれた。


「リチャード様、ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきますね」


 ヒールを脱ぎ、お布団の上にコロンと寝転び目を瞑った。やはり高級お布団はふかふかで触り心地も良い……


「おやすー、すー」


「ミタリア嬢、もう寝たのか? 母上に会うから、緊張して疲れたんだな」




 ♱♱♱




 ――ん? 蒸し暑いし動けない? ふかふかなお布団の上で寝返りを打ちたいけど、何かに邪魔をされていて動けない。最終的に「暑い!」で目が覚めた。


 え? 目が覚めて自分の状態に驚くしかない。

 なんと、リチャード様が猫に獣化した私を膝の上に乗せて、読書していたのだ。


 ――何をどうしたら、こうなったの?


「あ、あの、リチャード様」


「もう目が覚めたのかミタリア嬢、まだ屋敷まで着かないから寝てていいぞ」


「リチャード様、寝れません。この状況の説明をして欲しいです」


「布団の上で、ミタリア嬢が寝苦しそうだったから、ペンダントを外したんだ、そしたら読書する俺の膝に乗ってきた」


 ――ひぇえ!


「私が、自分から乗ったのですか?」


「そう、俺の膝の上で丸まった」


「リチャード様の膝の上で……そ、そんな行動をする前に止めて、起こしてください」


「無理だな、可愛いくて起こせない」


 ククッと笑い、リチャード殿下は読んでいた本を閉じると。「俺も、獣化するかな? 一緒にお昼寝して帰ろうな」と言いだす。


 ――こ、この状態で?


「私が待って!」とリチャード殿下を止める前に、カチッとブレスレットを外してオオカミ姿になり、私を連れてお布団の上に寝そべった。


「リチャード様! この状態を見られたらどうするのですか?」


「気にしない、俺は別に気にしないよ。ミタリア嬢は俺の婚約者だし、俺は王子だ。それに、あいつらは俺が小さな頃から支えてくれた者ばかり、言わば俺の大切な友達だ」


「リチャード様の大切な友達」


「ああ、そうだ。……それと、今日はありがとう」


 改めてお礼を言ったリチャード殿下は、私の顔に近付けてスリスリした。


「フフ、どういたしまして、リチャード様」


 仲良く、お布団に寝そべって帰ったのだった。

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