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第20話

 時期は7月――ぽかぽか陽気を通り過ぎ、ジリジリと熱い庭園のテラスに私はいた。飲み物はアイスティーとひんやり桃のシャーベット。


「さいきん暑くなってきたから、冷たい飲み物と食べ物が美味しい!」


 ふと節電と言われて、クーラーも殆どかけてもらえず、暑い中……パソコンの前にいた事を思い出して苦笑いした。


(あのときは大変だった……異世界の夏も暑いけど、前世よりは我慢できるのよね。扇風機がなくても日陰にはいれば涼しいし)


 そして夏が終わり10月に入ると、来年スズリア学園に入学する、学生を王都に呼び集めて舞踏会が開催される。そのあと訪れる冬――ローランド国は豪雪地帯の為、冬時期が来ると貴族達は領土に引っ込んでしまう。


「毎年、大雪が降るのよねぇ」


 今とは違う厳しい冬を思いだして、アイスティーをスプーンでかき混ぜ、ため息をついた。


 夏はいいのだけと、冬は寒いから苦手だ。




 庭園のテラスで、王妃様とリチャード殿下の話が終わるのを待ってい。先程、王妃様のご懐妊の話には驚いた。今3ヶ月なら、4月の学園入学にはリチャード殿下に弟か妹が生まれている。


 だけど、乙女ゲームの王妃様はリチャード様以外のお子様はおらず、4月になる前にご病気で亡くなったいた。


 ――そう考えると、10月に開催される舞踏会で何か起きる?


 乙女ゲームでは「ご病気の国王陛下」の言葉と「リチャード様、あの舞踏会の日……誰も"アレ"に気付きませんでした、誰にも止められなかったわ。……今更、悔やんでいても前に進めません」母親を亡くして落ち込み、悔やんでいるリチャード殿下に、ミタリアが言ったセリフがあった。


(王妃様にお会いしたとき、頭によぎった昔の記憶……)


 だけど、ミタリアがリチャード殿下に言った「アレ」が、何に対して言っていているのか分からない。前世の記憶を思い出して「アレ」を止めたい。




 ♱♱♱




「ミタリア嬢、お待たせ」


 王妃様との話を終えた、リチャード殿下が庭園のテラスに現れた。


「リチャード様、お先に冷たい飲み物とデザートをいただいています」


「アイスティーも桃のシャーベットか、美味そうだな」


 リチャード殿下は私の反対側に腰を下ろし。


「ミタリア嬢ありがとう……俺1人だったら、この場所に来れず、父上と母上の仲と、母上の妊娠も知らないままだった」


 と話して、目を細めた。


「……リチャード様、わ、私もここへ来てよかったです」


(喜ぶ姿と、その笑顔が見れて……)


 嬉しいのと、リチャード殿下の笑顔に照れてしまい下を向いた。その隙に「それちょうだい」と、私のアイスティーを勝手に全部飲んでしまう。 


「え? それ、わ、私のアイスティーです! 待って、シャーベットはダメ……欲しいのなら頼んでください!」


 ダメだと止めても。リチャード殿下はペロッと、シャーベットも食べてしまった。

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