ふかふかお布団に私は秒殺で夢の世界。スースー私は寝ているけど、外の音は聞こえたいる。それはリチャード殿下の本を捲る音、独り言まで聞こえだ。
あのバスケットの中身はお昼なのか? とか。
今日のミタリア嬢の格好、可愛いなとか……その言葉に体がピクンと反応して、耳が殿下の方へと動いてしまう。
その姿に何か察知したのか、リチャード殿下の布が擦れた音が聞こえた。
「フフ、ミタリア嬢に聞こえているのかな? ……本当のことだからいい、ミタリア嬢の可愛い寝顔も見えるからな」
(私の可愛い格好? 寝顔⁉︎)
「だが、その格好は可愛いけど、スカートの丈が少々短くないか? 布団に寝そべると捲れて膝が見えるから、触れたくなる」
(わ、私の足に触れる?)
「ん? ミタリア嬢の頬がなにやら赤くなっていないか? 変な夢でも見ているのかな?」
いつもなら、このタイミングで獣化して逃れるのに。
自分でブレスレットは外せないから……恥じらうと頬が熱くなる。
「ククッ、俺を信頼しているのは有り難いが……俺は男でオオカミなんだけど……いや、男は皆オオカミか? そんな無防備に側で寝て、その隙に俺が触れるとか、ふっくらな唇を奪われるとか思わないのかな?」
――く、唇!
「リ、リチャード様!」
我慢できず口元を手で押さえて、瞳を開いた。
反対側で私を見つめる、意地悪な瞳があった。
やられた……リチャード殿下の意地悪だ。
彼はすごく、楽しそうだった。
「クク……やはり俺の声が聞こえていたのか。気にするな、全部、俺の本心だ。所でミタリア嬢、時刻が昼になった街で食べるか? 結構大きな街だから何でもあるだろう」
(街? お昼の時間?)
カーテンを開けて外を見ると、馬車は街の近くに止まっていた。近衛騎士は馬車にとどまり、御者とリルは街に昼食に出ているとリチャード殿下は言った。
「ミタリア嬢もお腹すいたろ? 俺たちも何か食べに行こう」
と誘う、リチャード殿下に私はバスケットを取り。
「家で――サ、サンドイッチを作ってきたのだけど、リチャード様もた、食べますか?」
持ってきたバスケットを見せた途端、反対側で寝そべっていたリチャード殿下が体を起こして、素早く私の隣に座った。
「サンドイッチ? ミタリア嬢が俺の為に作ってきた? 早くバスケットの中が見たい」
凄く食いついた殿下に急かされて、バスケットの蓋を開けた。中に入っているサンドイッチを見た、リチャード殿下の瞳は大きく開き『ゴクっ』と喉を鳴らした。
「美味しそうだ……こんなに具をたくさん挟んだ、綺麗なサンドイッチは初めて見た」
「そう? うちじゃ、いつもこうだよ。これがハムとチーズ、卵を挟んだサンドイッチ。こっちが鳥ささみと野菜をふんだんに使ったサンドイッチ。後レモネードと蒸しパンも作ってきたよ」
「どれも、美味そう。俺、鳥ささみ食べたい」
無邪気に喜ぶ、リチャード殿下に包み紙に鳥ささみサンドを包んで渡した。殿下はじっくりサンドイッチを見て、また喉を鳴らして勢いよくかぶりつく。
その途端に耳と尻尾がぴーんと伸びて、ゆっくり
「う、うまい。こんなに具が入っているのに味が喧嘩してない。鳥はぷりぷりで野菜がシャキシャキ、パンも甘めで美味しい」
手製のサラダチキンとコールスロー、ナターシャの手作りのパンを気に入ってくれたんだ。リチャード殿下は城でのお茶の時間、ケーキを食べるときでさえも優雅だけと、今は無我夢中でサンドイッチに齧り付いている。
その食べっぷりに嬉しくって顔が緩む。
「クク、なに可愛い顔してんだよ」
その言葉に、もっと真っ赤に私の頬は赤く染まった。