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~時が流れても変わらぬ仲間の絆6~ 嬉しい再会。~2~

 総勢15人のビデオ通話における、同時通信は俺が良二にかけた言葉から始まった。


「良二が無事で良かったし、三鷹先輩はファンレターで生存確認ができていたから、そのうちに出現するだろうと思っていたけど、木下と大宮のほうはマジに腰を抜かしたよ。」


 良二は運転中なので車のハンズフリーの機能を使って、音声だけだったが、木下夫婦の子供の声も聞こえて車内は賑やかである。


 三鷹先輩や木下、それに大宮はビデオ通話で参加しているが、夜の車内なので、画面が真っ暗になるときもあるが、今は東京郊外と言っても、ここら辺とは違って街灯がそこら中についているから、その光でよく顔が見える。


 木下も大宮も、スマホの画面を見る限りでは、さほど変わっていない。

 俺の言葉に先に反応したのは、木下だった。


「三上くんも、霧島さんたちも、お久しぶり過ぎて、涙が出そうだわ。ファンレターの件は別の編集者が見ていたから、三上くんの存在に気づかなかったのよ。画面を見る限りでは、みんな変わりがなさそうでホッとしているし、15年以上経って、もう一度、みんなに会えるなんて想いもよらなかったわ…。三鷹さんも、内緒にしていて話してくれなかったし。」


「木下は、かなり苦労をしたよな。俺としては、今になって知っている人と結婚して、支えてくれているだろうから、ホッとしてるところだよ。」


 その言葉に大宮が反応した。


「三上とは、竹田の結婚式以来だから10年以上はご無沙汰だったな。すまぬ、途絶えてしまって。竹田が結婚した時点で、仕事や周りの人間関係で精一杯だったからさ。でも、こうやって再び会えたし、あの旅館に行くのは2度目だから楽しみだよ。」


「まぁ、仕方ないさ。大宮は一度、実家に帰った後に、大学の周辺で就職が決まって再び実家から引っ越したことは、SNSの竹田のDMで分かっていたけど、アイツは今も遠方に住んでいるから、結婚式以来、全く会えてなくてね。北海道では仕方ないけど、棚倉先輩たちが来るときは一緒に来たいと言っていたんだよ。」


 俺の竹田の話に大宮が話をする前に、三鷹先輩がすかさず横やりを入れた。


「え?。大宮くんと一緒の理学部だった竹田くんって、そんなに早く結婚したの?。わたしはあの当時は、失恋のショックで実家に引きこもっちゃったから、そのあたりの事情が分からないわ…。」


 それに答えたのは俺よりも大宮のほうだった。


 このマルチ通信は、サーバーや通信環境で少しだけタイムラグがある場合もあるから、車内でリアルに話しているほうが、実際は早いだろう。


「竹田は、女子寮生でバイトの長だった大久保さんと結婚したんだよ。竹田が4年の最後になった文化祭の手伝いで、お互いの距離が近づいてね…」


「え~~~!!!」

 木下と三鷹先輩が同時に驚きの声をあげたが、木下が自分の夫に抗議の声をあげる。


「あなた、そういうコトは早く話してほしいわ。三鷹さんも同じだけど、大久保さんはバイトの長だったから、白井さんと一緒に、私たちは食事に連れて行ったりして、とても可愛がっていたのよ。」


 俺は、その上で、この2人には、もう1つの情報を流して、驚きに追い打ちをかけることにした。


「ちなみに、その白井さんは、学生時代、密かにつきあっていた諸岡と結婚して子供もいるぞ。時々、俺の家に押しかけるようにして遊びにくるから油断できない。」


「え~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」


 車内にいた良二、三鷹先輩、木下、大宮が、大きく驚いたが、その声があまりにも大きかったから、大宮夫婦の3~4歳の子供が驚いて泣いてしまっている。


 諸岡と白井さんが付き合っていることは、木下も三鷹先輩も卒業まで知らなかった事実だったし、俺が4年次になって、白井さんのミスで新島先輩にバレたのだが、本人たちの懇願もあって、結局は誰にも話さなかったのだ。


 その子供の泣き声を聞いて、陽葵が会話に加わった。


「木下さんや大宮さんも、お久しぶりすぎて、ちょっと涙が出そうだわ。うちは10歳違いの子供がいて、下が3歳だから木下さんの苦労は分かるわ。辺りが暗いし、みんなが大きな声を出したから吃驚しちゃったのよね。」


「さすがは、霧島さんだわ。あまりにも子供が私に頼りすぎて困っているし、旦那にあまり寄らないから困ってしまったわ。あとね、本橋さんから聞いたと思うけど、その…、前の旦那は、白血病で…。」


「木下さん、それは仕方ないわ。まだ若いから、その再スタートを周りがサポートしてくれたからこそ、大宮さんと結婚できたと本橋さんが言っていたわ。」


「ごめんね、霧島さんとあの時、一緒に真剣に選んでくれた良い人だったけど、これは運命だったわ。そういえば、坪宮さんの占いでね、1度目の結婚は悲劇が起きるけど、2度目は必ず良くなると言われていたのよ。」


「坪宮さんの占いは恐ろしいぐらい当たるわよね…。私は今だから話せるけど、ズッと旦那とそのまま生涯を過ごすことになるわ。今は旦那も苦労しているけど、歳を取ってから苦労から解放される感じらしいわ。」


「ふふっ、坪宮さんが見なくても、霧島さんと三上くんは、絶対に離れないと誰もが思っているわ。もう、今でもラブラブなのがわかるもの…。」


 それを聞いた宗崎が、俺が『嫁成分が足りない』などと、SNSで書いてたことを思い出して、飲んでいたビールを吹き出しそうになる。


 それを隣にいた宗崎の奥さん(松裡さん)や、村上夫婦が不思議そうな顔をして見ていたが、俺はあえてスルーすることにした。


「わたしよりも、次は村上さんが、大宮さんと話したそうにしているわ。」

 陽葵が村上に話を振ると、大宮が先に切り出した。


「村上も竹田の結婚式の後に、音沙汰が途絶えて申し訳なかったよ。でもね、こうやって会えて、俺はメッチャ嬉しいよ。」


 村上はニコッと笑いながら大宮に語りかけた。


「大宮、そんなに謝るな。それと本橋もお久しぶりだよ。この年になってくれば、色々な事情もあるし、俺だって寮の仲間の大半は連絡が途絶えているよ。三上だって、俺たちの他にも諸岡夫婦や江川夫婦、それに棚倉さんや新島さんと繋がっているのがやっとだよ。竹田はSNSでたまに交流している程度だから。」


「え??。江川ともお前達は繋がっているのか!。三上は後輩思いだったから、諸岡や白井さんはもちろんだけど、その当時、三上が助けてやった江川の彼女も含めて、恩に着るのは当然だよな…。」


「諸岡や江川の件はおいといて、ここで大宮や木下さん、三鷹さんや本橋に会えたのも、三上の縁だよ。俺は、お前達が来るのが待ち遠しいよ。」


 今度は良二が運転しながら、村上や宗崎に話しかける。


「しかし、恭介と話しているときに、チラッと見えたけど、村上や宗崎も変わらないなぁ。まさか、泰田さんや松裡さんと結婚したとは思わなかったけどさ、やっぱりうちの恭介は、どこかで周りを結婚まで引き寄せる力を持っているよな。だからこそ、こいつは運が吸い取られているのかも知れないけどね…。」


 それについては宗崎が良二に言葉をかけた。


「本橋、何年ぶりなのか分からないぐらい、お久しぶりだけど、三上の運のなさは、それがあるかもしれないなぁ。俺たちを結婚に導いたのは、間違いなく三上だし、ここにいるメンバーが一堂に会しているのも、間違いなく三上のお陰だよ。」


「良二、俺の運は、可愛すぎる陽葵と結婚したことで、俺の人生の運を全振りしちゃっているから仕方ねぇ。周りがこうやって結婚できて生活を送れているのは、みんなの努力の賜物だよ。」


 あとは、他の面々が木下や大宮、三鷹先輩や良二に話しかけながら、あっと言う間に時は過ぎて、近くの高速のインターチェンジに降りたようだ。


 そこから後が大騒ぎだった。


 良二は過去に何回か俺の家に来た経験があることから、夜で不安がある山道の運転を俺に代わって欲しいと言ったので、俺はアルコールを口にしなくて正解だと思ってホッとしていた。


 俺たちの様子を伺っていた旅館の女将さんは、従業員を呼び出して、マイクロバスで子供達を迎えに行きながら、俺と陽葵、それの逢隈さん(牧埜の奥さん)がマイクロバスに乗り込んだ。


 葵は泰田(村上の奥さん)さんに面倒を見てもらうことにしたが、もう、自分の子供かと思うぐらい泰田さんに懐いている。


 マイクロバスが俺の家に着いて、陽葵が子供たちを呼びにいって、子供たちがマイクロバスに乗り込もうとしたところで、良二たちが俺の家に着いた。


 まずは、玄関に良二たち入れると、俺と良二は固い握手を交わした。


「良二、なんだか涙が出そうなぐらい、嬉しいよ…」


 良二は今にも泣きそうな感じで、俺に話しかける。


「恭介、マジに久しぶりすぎて俺も涙が出そうだ…。そうだ!!。奥さんから聞いたけど、お前の親父さんやお袋さんも亡くなっちまったんだよな。線香は危ないから明日、あげるにしても、みんなで仏壇に手だけ合わさせてくれ。葬式にも出られなかったから…。」


 その後は、三鷹先輩や木下、大宮と挨拶を交わすと、俺と陽葵は、良二や三鷹先輩、それに木下や大宮とその子供も含めて仏間に案内する。


 5人は神妙な顔で軽く手を合わせているのをみて、陽葵は俺にボソッと声をかけた。


「木下さんのお子さんも、あんなに小さいのに神妙にお参りしているから、シッカリした子よね…」


 俺は陽葵の言葉にいうなずくと、お参りが終わった良二に声をかける。


「村上も宗崎も、旅館に寄らずに真っ先に、俺の家に来るのは、これがあるからなんだ。あいつら2人は葬式に来たけど、やっぱり、今はもう無くなってしまった、俺の実家の想い出が強いらしくてね…。」


 良二が俺に向かって深くうなずいて答えた。


「それはそうだよ。ここのメンツは全員、お前の親の顔を知っているんだよ。俺なんかここで何回もお世話になっているし、大宮だってあの時にお世話になっている。嫁や木下さんはお前が入院していた時に、顔を知っているからな。」


「それで思い出した!。恭ちゃんさ、男子寮だけで恭ちゃんの家に行くのはズルいって!。あの時は理恵ちゃん(木下)も、美保ちゃん(白井)も不満の大合唱だったからね!!」


 三鷹先輩が少しだけ顔を膨らませて、あの当時の苦情を俺に言ってきたが、今となっては過去の事だから、あの時の内情を正直に話しながら、言い訳を交えてなだめることにする。


「先輩、それは、亡くなってしまった、高木さんや荒巻さんに文句を言って下さいよ。あれは、大学理事側からの男女合同での宿泊許可が下りなかったのが原因です。あちらさんは、男女間で間違いがあってはいけないからNGだけど、俺と陽葵は婚約者で親公認だからOKという理由でしたからね。」


 そんな事を話していたら、マイクロバスに子供たちが乗り込んだので、逢隈さん(牧埜の奥さん)俺たちを呼びに来た。


 もう、陽葵は温泉に入るためにタオルやらバケツなどを持っているから、旅館の温泉に入ってから家に戻る感じらしい。


 俺は慌てて良二のワゴン車に乗ると、助手席には陽葵が座って、その後ろに良二夫妻、そして大宮夫妻が座るが、大宮夫妻の子供のチャイルドシートが置かれていて、大人しく座ると、三鷹先輩が、そのお子さんに声をかける。


「愛理ちゃん、良い子ね、3歳なのに、あまり泣かないでここまで来たから、私もホッとしたわ…」


 大宮夫妻の子供が葵と同じ3歳で名前が『愛理ちゃん』と分かって、陽葵が即座に木下に声をかける。


「木下さん、うちも同じ3歳の女の子がいるの、うちの葵と同じだから遊び相手になって良いかも。泰田さん…いや、村上さんの奥さんがね、とても子供好きだから面倒を見てもらえると思うわ。」


 少し後ろを振り返ると、木下と大宮が嬉しそうな顔をして、木下が陽葵に話しかけた。


「今まで引っ越し続きだったから、愛理は、あまり友達がいないの…。三上くんのお子さんと同じ女の子同士だから、仲良くなるかな?。それに泰田さんが面倒をみてくれるのは本当に助かるわ…。」


 良二の車の中は一気に子持ちの夫婦同士の会話になったのだ…。


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