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~時が流れても変わらぬ仲間の絆6~ 嬉しい再会。~1~

 俺が旅館の小さい宴会場に戻ると、なぜか全員が拍手をしているから、困ってしまった自分がいる。


「みんなが期待しているよりも、俺は何もできないから勘弁してくれ。とりあえず、子どもたちは陽葵と逢隈さん(牧埜の奥さん)が面倒を見ているし、この宴会が終わったら子どもたちは、マイクロバスで、ここに戻ってくるからね。」


 俺は皆にそう言って席に着こうとしたときに、相変わらずお酒が少し弱い仲村さんが、陽葵が子どもたちの面倒を見てもらえている事に関して感謝をされてしまった。


「三上さんの家で、子どもたちの面倒を見てもらって助かりました。小学生や中高生にとって、この場にズッといるのは、なかなか辛いものがありますからね…。」


 それに関して仲村さんの奥さん(守さん)も続く。


「ホントに子供がいると、なかなか、こんな感じで飲める時間なんてなくてね…。陽葵ちゃんや紗良(逢隈さん)さんが見てくれているのは助かるわ…。」


 天田さんの奥さん(山埼さん)も、ほろ酔い気分で俺に話しかけてきた。

 あの当時と同様に、同時に複数の会話が聞けるのは変わらない。


「三上さん、うちの子供の面倒も霧島さんに見てもらっているから助かっているわ。逢隈さんにも感謝しないと…。それはそうと、牧埜さんへの説諭はとても良かったわ。弘法筆を選ばずと言うけど、ホントに仕事ができる人って、道具を選ばないわよね。」


「それとは少し違いますが、似たような感じ…」


 仲村さんの奥さん(守さん)に牧埜に話したことを詳しく説明しようとした時に、村上がスマホを見て、素っ頓狂な声をあげたので、俺は何事かと思って疑問に思っていると、宗崎もスマホを見て大声で吃驚して叫ぶような声をあげている。


「三上!!!。スマホのメッセージアプリを見ろ!!!。とんでもない事が起こっているぞ!!」


 宗崎が俺に向かって叫んだ声を聞いて、即座にメッセージアプリを立ち上げると、見覚えのある名前と共に、とても意外だと思われる人物が、2人同時に登録されたことを告げる通知があった。


「マジか…?、マジか?。どうして2人は結婚したのか…。どういう縁で?。俺はパニックになっているけど、とりあえず、2人が無事に生きていてホッとしたよ。」


 宗崎や村上の奥さんは横から旦那のスマホをのぞき込んで、とても驚いているが、他の人たちは事情を知らない。


 それと同時に、俺の携帯に陽葵から電話がかかってきたので、俺は皆に事情を説明するのが面倒だから、あえて外部スピーカーにして、事情を知ってもらうことにした。


 電話に出た俺は、先に陽葵に話しかけた。


「陽葵、事情はよく分かっている。とりあえず、みんなに説明するのが面倒だから、外部スピーカーにして、ここにいる宗崎や村上にも会話に加わったほうが早いと思って。」


「うん、それは良く分かるわ…。もう、吃驚したわよ。本橋さんからメッセージアプリの登録があって…その次に、本橋美緒の名前を見て、ここにいる牧埜さんの奥さんと2人で吃驚してしまったのよ。」


 それを聞いて他の面々はあんぐりと口を開けたいたが、延岡さんが恐る恐る口を開ける。


「三上さんの奥さん…。それって、もしかして…、本橋さんが、女子寮長だった三鷹さんと結婚を???」


「延岡さん、その通りよ…。私はとても驚いているわ。」


 みんなが良二と見た傘先輩の結婚について驚きを隠せずに、各々がざわついている状況だ。

 無理もない。長い間、連絡が途絶えていた人と、こうやって繋がっていて、意外すぎる人と結婚していたのだから…。


 陽葵は、言葉を続ける。


「あなたも、宗崎さんや村上さんも、本橋さんから、同じメッセージがきているわよね?。仕事で九州に飛ばされた後に、三鷹さんと偶然に出くわしたけど、同棲を始めた頃に、住んでいたアパートが水害で家ごと流されて、車から家財道具まで全部を失ったから、みんなの連絡先が全く分からなくなったと…。」


 俺は、この事態を解決すべく良案を思いついた。


「これさ、メッセージアプリに登録されている、うちの実行委員チームのグループを利用して、それに延岡さんも加わってもらって、ビデオ同時通話をやってみようか?。ここは宿泊客用にwi-fiも繋がっているから通信費が莫大にならないし…」


「それは良案よ。パソコンのキーボードを打つのは、あなたに敵わないけど、スマホならわたしのほうが早いから、2人にその旨を告げて、今のプレ企画の話を交えながら、やりとりをしてみるわ。その間に、みんなのwi-fiの設定とか、メッセージアプリの設定なんかを宗崎さんや村上さんと一緒によろしくね…」


 陽葵は即座に、2人への詳細な連絡を買って出た。


 それに皆は、当然の如く賛同して、俺もここに居るメンバーに良二や三鷹先輩のアカウントを教えて、それぞれが繋がった。


 スマホの操作に弱い延岡さんや、牧埜、それに仲村さん夫婦のスマホを俺たちは操作して、wi-fiの設定をしたり、メッセージアプリの同時ビデオ通話を試みるための準備をすることにした。


 その間に、俺は家から持ってきた、棚倉先輩とのDMのやりとりを皆に見せたが、これがまた、かなり勢いで皆に受けてしまっている。


 俺たちが皆のスマホの設定を終えたところで、最初に良二から俺に向けて単独でビデオ通話がかかってきたので、皆は寄り集まって、食い入るように俺のスマホを見つめている。


「良二、お前が生きていて良かったよ。まさか、三鷹先輩と結婚したとは思わなかったけどな…」


 しばらく間があって、良二の顔が画面に見えて、隣に三鷹先輩がいるのが分かったが、2人とも少しだけ老けた印象があるが、全く変わっていないから安心している自分がいた。


「恭介や、それに村上も宗崎も、連絡が取れなくてごめんな。うちの嫁が棚倉さんと連絡がとれたお陰で、こうやって俺も、連絡先が分かったんだよ。ちなみに嫁は、俺と結婚したことを棚倉さんには話していない…。」


 良二がそう話すと、今度は画面に三鷹先輩の顔が映る。


「恭ちゃんお久しぶり!!。このまま同時通話をやっても面白いけど、まだ7時台だから、陽葵ちゃんと相談した結果、そこの宿に泊まることになったのよ。すでに旅館の人と話がついているみたいよ。」


「三鷹先輩も相変わらずですね。陽葵と話しがついているなら、詳細は端折りますが、締め切りは大丈夫なんですか?。編集さんから進捗なんて聞かれて、後から缶詰にされても俺は知りませんよ?」


「もぉ、恭ちゃんは、若いときから、そういう鋭いところは相変わらずよね。うちの担当は、理恵ちゃんだから大丈夫よ?」


 俺は再び驚いたし、隣にいる宗崎や村上も含めて口をポカンと開けている。


「はぁ?、木下は漫画の編集者になったのですか?。偶然が偶然を呼びすぎですよ?」


「細かい話は、車の中でメッセージアプリの同時通話をやりながらしましょ。こっちの通信費は大丈夫だわ。編集さんとのやりとりで、外出先でもメッセージアプリを使うから、通信は無制限にしてあるのよ。それにしても、恭ちゃんと一緒にいるメンバーの結婚も偶然すぎるわよ。こっちも2人でポカンと口を開けたたままよ!。」


 そこで良二に再び代わった。


「ウチの嫁は、お前もご存じの通り、こんな感じなだから俺が簡単にまとめると、数ヶ月前に東京に戻ってきたから、今は東京の外れでアパート暮らしだよ。木下さん…今は大宮と結婚しているが、近所に住んでいるから、声をかけて一緒に連れて行くよ。もう、お前の奥さんは、ビデオ通話の向こうで、逢隈さんとあんぐりと口を開けたままだったぞ…。」


「俺だってあんぐりと口をあけたままだよ。竹田は文化祭の流れから、早々に女子寮にいた子と結婚していて、SNSで未だにやりとりしているけど、木下は学生時代の彼氏と別れて大宮と結婚なのか?。」


「それがさ、木下さんは前の旦那と結婚して1年も経たないうちに死別してしまったんだよ。大宮は科学雑誌の編集部に入った縁で、木下さんと再会したわけよ。それで、数年前に再婚して、子供もいるけど、お前の下の子供と同じぐらいかな。木下夫婦と子供も一緒に連れて行くよ。」


「はぁ???。構わないどころか、むしろ歓迎だけど、それも旅館に伝わっているんだよな?」


「大丈夫だ。お前の奥さんにそのことも伝えてあるからさ。それじゃぁ、一旦、切るぞ。木下さんたちを迎えに行った時点でマルチ通話をするけど、ここから旅館まで1時間半ぐらいだ。夜だし首都高が空いているからもっと早いかも知れない。俺の実家から行くよりズッと近いからな。」


 そこで、一旦、メッセージアプリを俺は切ると、こんどは旅館の女将さんが入ってきた。


「三上さん、奥さんから事情を聞きましたけど、お部屋は空いているから大丈夫だし、2家族ぶんの語夕飯のお支度も、ここでできますからね。今から1時間半前後なら、お開きは10時頃でしょうから、その間はごゆっくりして下さいね…」


「女将さん、急なお願いで申し訳ないです。段取りが悪すぎて本当に申し訳ない、こちらも吃驚してしまって…。」


「三上さん、大丈夫ですよ。ここは秘湯の湯で温泉好きの間では有名だし、この山間の道を運転してきたお客さんが、暗くなって運転に不安を覚えて、急に素泊まりをするお客も多いですから。三上さんのご友人なら安心ですよ。」


 その女将さんの話に天田さんがボソッと口を開いた。


「私も運転免許は持ってますが、ペーパードライバーに近いから、この道を運転しろと言われたら、崖から落ちそうで怖いですよ…」


 その天田さんの言葉に、仲村さんの奥さん(守さん)が追従する。

「わたしも、三上さんや陽葵ちゃんみたいに、あんなに上手く運転ができないわよ。牧埜さんも、キャンプ場から宿に戻るときに、峠のくねくね道で2人の車に離されて、吃驚していたもの…。」


 とりあえず、良二たちが動画通話をやるまでの間、俺たちは席について、各々がお酒を飲んだり、残っている食べ物をたべたりしている。


 俺は、途中で良二が道に迷ったり、峠道などの不安があった場合、途中から迎えに行くことも考えて、アルコールを口にすることを控えた。


 そのうちに、陽葵と逢隈さん(牧埜の奥さん)が葵をつれて、旅館の宴会場に顔をのぞかせる。


「あなた、この事態だから、子供たちのことは恭治に任せて、ここに来たわ。恭治がいるし、みんな真面目な子が多いから、家の中で無茶苦茶に暴れることもないし、ここは田舎だから、どれだけ笑い声が大きくても、近所が遠すぎて迷惑がかからないわ。」


「陽葵、色々と面倒をかけてすまない。良二がいるから、三鷹先輩の長話を防いでくれているから、無駄話が避けられた。旅館の手配や明日の昼食の手配をやってもらって助かった。それと、木下や大宮が結婚したのも吃驚だったよ…」


「あなた、本橋さんは三鷹さんのことを阿吽の呼吸で分かっていて、最悪の事態になる前に防いでくれるから、安心して会話ができたのよ。そうそう、木下さんの再婚も吃驚だったわ!!。あの人と死別しちゃったのは可哀想だったけど、大宮さんと再婚できて良かったのよ。」


「まぁ、人生って何があるか分からないよな…」


 俺たちはこの状態で、周りを話しながら良二たちが来るのを待っていると、俺も含めて、皆のスマホにも随時、大宮と木下のアカウントが追加された。


 次に、三鷹先輩がホストになって、同時ビデオ通話が始まったのだ。

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