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~エピソード8~ ⑧ やっぱりアーン♡は避けられないのよ♡。~2~

 俺たちは宗崎がいつも利用している駅に着くと、少しバスに乗って、オープンしたばかりの回転寿司屋に来た。


 ここからなら、宗崎の家まで歩いて行ける距離にあるし、食べ終わった後も楽に帰られそうだ。

 平日にもかかわらず、オープンしたばかりだから、少し混んでいるので待たされた。


 うちは大人数なので、テーブル席が3つほど空くまで、俺たちは店の入口で待たされていだ。

 入口付近の椅子に座って、雑談をしながら少し待っていると、泰田さんと守さんの母親が店の中に入ってきた。


 店に入ってきた守さんのお母さんから、最初に声をかけられた。


「あら、席が空くまで少し時間がかかりそうね。あと、三上さんと霧島さんは、帰りは泰田さんのお母さんの車に乗ってね。もう家の場所も分かっているから大丈夫よ。」


 俺が答える前に陽葵が即座に守さんのお母さんに答えた。


「ありがとうございます。でも、ここからなら、バスで帰っても大丈夫だし、今日は両親が都合でいないので…」


 陽葵は、月曜日に泰田さんのお母さんに送られたので、また、気を遣わせてしまうのは悪いと思ったらしい。


「気にしないで。霧島さんの家は泰田さんの家や、ウチからも、そんなに離れてないし方向的には通り道だから大丈夫よ。」


「どうもありがとうございます。」

 陽葵はすぐに守さんと泰田さんの母親にお礼を言った。


 明日の練習と送り迎えの件に関して、ここで泰田さんのお母さん達から話が出そうだったので、俺は先回りして答えた。


「監督(守さんのお母さん)とコーチ(泰田さんのお母さん)。明日の送り迎えですが、たぶん、守さんや泰田さんから聞いていると思いますが、土曜日に、陽葵の家族を連れて私の実家に行くことは知ってますが?。」


 それは守さんのお母さんが答えた。


「和奏(守さん)から聞いているわよ。霧島さんのご両親を連れて、色々な挨拶がてらで、三上さんの実家に行くなんて聞いたからホントに大変よね。それを聞いて、私の結婚間近に、亡くなった旦那の両親と挨拶をしたのを思い出したわ…」


「監督、そこは置いといて…。実は、レンタカーで実家の途中の駅まで行くことになりまして、明日は、大学に行くときに電車には乗らず、朝からレンタカーを借りて、それに乗って大学に通学をして、練習とコンパに行くことになりました。大学側から安全面を見て、しばらくの間は、電車での通学を極力、避けるべきと判断されまして…。」


 それについては、みんな初耳だったので、少しだけ吃驚していたが、守さんのお母さんが、俺の目を見てうなずくと、みんなの気持ちを代弁した形で俺に問いただした。


「直前まで知らせなかったのは、相手に知られないようにする為もあるわよね?。それを聞いて安心したわ。三上さんの実家に行くときだって、朝早くから霧島さんの家から車で出てしまえば、変や奴らにあとを追いかけられないからね…。」


「そうなんです。それなので、ここにいるメンバー以外に、直前まで公表するなと、学生課の職員からキツく言われていたのです。だから、このタイミングで話すことになって、本当にごめんなさい…。」


 それを聞いた、ここにいるメンバーの全員がうなずいた。

 ここにいない、残りの実行委員チームには分かってしまうが、みんなが口止めをするだろうから、大丈夫だろう。


 しかも、仮に明日の夜になってバレたとしても、土日は大学が休みだから、理化学波動研究同好会は何もできないはずだ。


 良二が少し明日の予定について質問をしてきた。


「お前は奥さんが使っている駅前のレンタカー屋に行って借りるのだよな?。でも、そのまま家に帰っちゃったら、そのレンタカーはどうするんだ?」


「あそこのレンタカー屋は、どこの営業所に返してもOKなんだよ。うちから、そこそこの距離がある少し大きい駅に、あのレンタカー屋があるから助かったんだ。だけど、乗り捨て料金がかかっちゃうけどね。あとは親父かお袋が、あの駅まで迎えに来て、車を乗り継ぐ感じかな。」


「なるほどなぁ。たしかに、1両編成の私鉄に乗り換える駅の近くにあのレンタカー屋があったよな。何度もぼやいているけど、あの電車に乗り継ぐのに、そうとうに待たされたから、よく覚えているよ。」


 良二がうなずきながらも、うちの実家にやってきて、時間が悪くて、かなり電車を待ったことを、再び思い出して俺にぼやいていた。


「レンタカーになった理由の一つに、陽葵の弟が、まだ小さいからね。長い時間、電車を待たせるのは無理との判断もあってさ。」


 俺が陽葵の弟のことを話すと、泰田さんが大きくうなずいた。


「そうよね、だって、あのぐらいの子だと、最後には待ちくたびれて泣きそうになる子供もいるわよ。私も村上さんや宗崎さんから聞いた話だと、接続が悪いと2時間以上も待たされる事もあるって言っていたから、大変よね…。」


 そこに村上が、この会話に加わってきた。


「あの時は駅前のファミレスで時間を潰した後に、少し小さな駅ビルの中を散策して、2時間近く待ったんだよね。三上が、あまりに待たされるなら、電話を寄越せと口酸っぱく言っていた理由が分かったのは、2度目に行った時だった…。」


 そんな会話をしていたら、宗崎が思い出したように手を打って、話を本題に戻した。


「そうだ、そうすると、明日は俺たちは駅に集合しなくて大丈夫なのか?。借りたレンターカーによるけど、全員は乗れないと思うし…。」


 俺は宗崎の質問に、少し疲れ気味になって答えた。


「うーん、これが高木さんが気を利かせて、8人乗りのワゴン車を借りてしまったから、みんなが乗れるけど…」


 それを聞いた瞬間に、村上や諸岡と白井さんを除くメンバーが一気に喜んだ。


「三上寮長、私たちは仕方ないですが、白井さんと一緒に、普通に大学に行きますからね。早起きしなくて済むから楽ですが、やっぱり、三上寮長の運転する車に乗ってみたかった本音はあります…。」


 白井さんも同じような感じで、少しだけガッカリしていたが、2人は極秘で付き合っているから、誰にも邪魔されずに一緒に大学に行けることに内心は喜んでいたようだ。


 村上も少し寂しそうだったけど、少しホッとしたような表情も浮かべていた。

「俺も、諸岡や白井さんと同じように寮生だから、大人しくバスで大学に行って、お前たちを待っているよ。」


 泰田さんが、少し喜びを露わにしながら、俺が言う前に、明日の朝の結論を早々に言ってしまった。

「そうすると、レンタカーの手続きもあるだろうから、いつもの時間よりも30分ぐらい早く駅前に集まって、車に乗って行くイメージよね…」


 宗崎は泰田さんの話にうなずいた。


「霧島さんから大学の方向は、通勤ラッシュとは逆方向だから、事故やトラブルがない限りは間に合うと思うよ。少し遅めになる事もあるけど、本館や工学部のキャンパスに行く裏道なんかも俺は知っているし、三上の道案内役を買って出るよ。」


 そんな話をしていたら、ようやくテーブル席が空いて、俺たちは3つの席に分かれた。

 俺と陽葵の席には諸岡や白井さんが、村上や良二、宗崎の席に仲村さんがついて、泰田さんや守さんは親子で座った形になった。


 お互いの席は、そんなに離れていないが、小さい声ながら内緒話もできるぐらい離れている。


 まだ日も暮れていないし、泰田さんのお母さんは運転も控えているから、飲める人はアルコールを頼むことはなかった。


 俺はレーンから離れた席だったから、寿司を陽葵に取ってもらいながら、小声で諸岡と白井さんに内緒話をした。


「お前ら2人も順調に交際しているみたいだから、安心したよ。それと、車の件は悪いけど、そうなるのは仕方ないし、月曜日から俺の車は、もっと人が乗れないから、このケースは十分にあり得るからな…」


 白井さんと諸岡は俺の言葉にうなずいた。

 陽葵は食い入るように寿司を見ているから、俺の言葉なんて聞いていなかった。


 白井さんが、恥ずかしそうにして少しだけ顔を赤らめながら、俺の問いに小声で答えた。


「三上寮長や陽葵ちゃんが目立っているお陰で、私たちはコッソリと付き合えている感じだわ。でも、いまのところ、私たちはそれで良いと思っているの。でも、みんなにバレたら、その時は2人のように居直っちゃうから大丈夫よ。」


 そのうちに、無料サービスで店員が持ってきた味噌汁と茶碗蒸しを食べながら、諸岡が白井さんの言葉に少しだけ補足を入れた。


「三上寮長や霧島さんのように、私たちは、いまのところ堂々と付き合うのは怖くて駄目ですよ。三上寮長は、棚倉さんや三鷹さん、それに橘さんなんかも、綺麗にあしらってますけど、私が見ても、あの人たちは、三上寮長よりも癖がありすぎて、とても厄介なのは分かりますからね…」


 白井さんは少しだけ恥ずかしくて顔を赤らめながら、茶碗蒸しを食べていた。

 彼女は、可愛げがあって愛くるしい女の子だから、諸岡が、こういうタイプが好みなのはよく分かる。


 そんな白井さんを見ながら、諸岡の話にうなずきながら答えた。


「白井さんが助かっているのは、木下が、こっちの仲間だってことだよ。だからこそ、お前と白井さんが付き合えている部分もあるからさ。ただ、棚倉先輩はともかく、三鷹先輩や橘先輩は、こういう事があると冷やかすからね。それが嫌なのは凄く分かるから。」


 そんな会話のあとは、陽葵が回転寿司が好きすぎて夢中になっている事や、陽葵が母親に回転寿司に行ったことを携帯で話すと、4人分のお持ち帰りを買って欲しいと連絡があった。


 どうやら、颯太くんが、俺や陽葵がいないから、外食を嫌がったらしく、その電話があった後は、陽葵も食べる量少しだけセーブしておいた。


 お持ち帰りは陽葵が気を利かせて定員を呼ぶと、お持ち帰りのメニューがあって、5人分ぐらい頼んでいたし、フライドポテトや唐揚げなんかも頼んでいたので、少しだけ不思議に思っていた。


 どのみち、皆がお腹いっぱいで食べられなければ、俺が全てを食べる感じになるのだが…。


 今日の夜は外食だと決まっていたので、陽葵はお母さんから余分にお金をもらっていたようなので、俺は一切、お金を払わなくて良いからと、陽葵に強く言われてしまった。


 お持ち帰りのぶんは、陽葵がレジに行って先に会計を済ませていた。


 それを見ていた。守さんお母さんが、俺たちの席のぶんを先に会計したと勘違いして慌てたようだが、お持ち帰りの会計だと分かって、ホッとしていた。


 守さんや泰田さんのお母さんは、太っ腹にも人数分を奢るつもりでいたらしい。

 俺たちは、それを聞いて一斉に慌てて、割り勘で払うかと申し出たが、2人の母親は、頑張って陽葵をみんなで助けたご褒美だと言って、聞かなかった。


 俺は、泰田さんと守さんの母親たちが会計を済ませている時に、皆に声をかけて、月曜日のからの動きついて説明をした。


「月曜日からは、平常通り寮に戻りますから、そこで私の車を使って陽葵を送り迎えする事になります。今まで毎日のように、みんなが俺や陽葵に寄り添ってくれて、本当に嬉しかったです。今後は、色々な都合で車を使えない場合に電車になる場合があるときに、皆さんにお声かけをしますので、よろしくお願いします。」


 それに関して、みんなが「そんなことはないよ」なんて言い出すと、良二が渋い顔をして少しだけ心配そうに俺を見た。


「逆に言えば、お前の負担が増すのを心配しているよ。大学側の配慮で、工学部のキャンパス内の駐車場に決まったのは安心したけどね。まぁ、ウチの学部内なら、奥さんのあとを付けるような輩は目立つから動けないだろうからね。」


「あとは、陽葵は工学部の駐車場で降りたあとに、裏門のバス停から経済学部のキャンパスに行くことになります。陽葵と一緒に時刻表を見ていたけど、朝は本数があるから、道路事情で少し遅れてもバスに難なく乗れるようだ。」


 仲村さんは俺の言葉にうなずいていた。


「三上さん、霧島さんを車で経済学部のキャンパスや本館まで送るとなると、連中に見つかるから止したのは正解だったと思うよ。あそこのバス路線は使う学生が限定されるから、容易には分からないよ。」


 店から出ると、夕方になっていて日も暮れ始めていた。

 宗崎と仲村さんは、バスでそのまま帰って、良二や村上、諸岡に白井さんは歩いて駅を目指した。


 俺は陽葵が買ったお持ち帰りのトレイを2つ持って、泰田さんの車に乗り込もうとしたら、守さんと泰田さんも、それぞれ、お持ち帰りを持って車の中に入った。


 泰田さんのお母さんは、二つのトレイを持った俺と、フライドポテトや唐揚げが入った容器を持っている陽葵を見て、クスッと笑って話しかけてきた。


「うちも結局、同じ事を考えたの。これから守さんの家で旦那も呼んでお食事会になるわよ。」


 俺と陽葵は泰田さんのお母さんと同じようにクスッと笑いながら、うなずいた。

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