棚倉先輩は教壇に立つと、マイクを持った。
「ここで今日の体育祭実行委員の結成式を終わりにしたいと思います。皆さん、後片付けの協力をお願いします。」
先輩は腕時計を見ると、言葉を続けた。
「なお、コンパ出席者は、このあと午後6時半までに駅前の雑居ビルにある居酒屋に集合です。店員に実行委員会の棚倉と言えば席に通されるはずです。会費は1人3,500円です。経理委員長の松裡か、経理委員の山埼に会費を忘れずに渡してください。総務委員長の泰田でも構いません。」
委員達は、飲み物や食べ物を総務委員たちが持っているゴミ袋に入れ、余ったお菓子や飲み物は各自で分担して持ち帰りながら撤収作業をしていた。
『コンパまで1時間ぐらいか…』
俺は疲れ果ててボーッとしていたら、棚倉先輩に声をかけられた。
「三上。相当に疲れているのは分かるが、乾杯の音頭をたのむ。新島がいないからお前にしかできないし、みんな期待しているからな。それと…。ほら、これはお前の分だ。」
棚倉先輩がそう言うと、バッグにギリギリ入るぐらいの飲み物とお菓子を渡された。
「これだけあれば、飢えてもお菓子だけで過ごせそうです。それと先輩、寮に戻っていいですか?。この量は流石に重すぎるし、ここからバスを使えばコンパに間に合うでしょう。」
「構わない。三上は主役だから、くれぐれも遅れるな。もしも何かあったら俺の携帯に電話を入れろ。俺たちは泰田や牧埜達と少し駄弁ってから向かうとするよ。」
「わかりました。寮に戻ったら、すぐに居酒屋に向かってしまうので、後はよろしくお願いします。」
俺は、このとき、村上や宗崎のために、色々と手を打ちたいことがあって、その種まきをしたかったので寮に戻りたかったのだ。
今日は村上の部屋に良二や宗崎が遊びに行っているはずだから、少し伝えたいこともあった。
俺は講義室を出ると、キャンパスを出て小走りでバス停まで行った。
バスに乗って寮に戻ると、受付室で目が死んでいる新島先輩を横目に、隣にいた高木さんに声をかける。
「高木さん、お疲れさまです。松尾さんは寮監室ですか?」
「三上くん、お疲れさま。あれ?コンパは?」
高木さんが俺の事を不思議そうな目で見ている。
「このあと6時半からですが、荷物が多いので、部屋に荷物を置きにきただけです。その前に、松尾さんに話したいことがあって…。」
俺の言葉を聞いて高木さんが少しだけ安堵の表情を浮かべていた。
「それなら、松尾さんは食堂で調理師さんと話をしていたわ。今なら捕まえられるかも。」
「高木さん、ありがとうございます。」
食堂に駆け込むと松尾さんを見つけた。
「三上君、どうした?」
俺は松尾さんに棚倉先輩や新島先輩には内緒で実行委員チームのバレーボールの練習があって、土日の夜の門限が厳しくなる話をした。
ついでに隣の部屋の村上も練習に付き合う話もした。
まだ、本人には話をしていないが、これはちょっとした俺の作戦があってのことだ。
「三上君、それなら大丈夫だ。君は信頼しているから、村上君も合わせて門限が遅れる申請書類も省こう。高木さんにもコッソリと内緒であることも含めて、話しておくから大丈夫だよ。」
「松尾さん、ありがとうござます。」
松尾さんとの話を終えて、急いで部屋に戻ると、隣の村上の部屋から宗崎の声が聞こえる。
俺は自分の部屋に戻ると、バッグに詰め込まれていたものを取り出した。飲み物は冷蔵庫に入れ、お菓子をカップラーメンなどが置いてあるラックに入れて部屋を出るとドアの鍵を閉めた。
そして村上の部屋のドアをノックした。
「三上だ。村上、宗崎もいるのか?」
俺の声に村上がドアを開けた。
「あれ?良二は?」
良二がいない事が不思議に思って2人に問う。
「アイツは、同人の打ち合わせがあると言って、さっき帰ったよ。それに、コミケの関連で気になってる女の子もいるらしい。あの方面はお前も含めて、あまり近寄らないしな。」
村上が少し呆れたような表情で俺に話しかけた。
「それなら良二がいないほうが好都合だ。お前らさ、俺とバレーボールの練習に参加してみないか?。チームとしての参加じゃなくて、あくまでも練習の手伝いだけどね。無論、泰田さんや松裡さんも一緒だよ。土日の夜にあるらしいが、もしかしたら…という可能性に賭けてみないか?。」
2人とも、気になる人がいることが何となく分かったので、俺は仲間の手助けをしようと決めたのだ。
俺の言葉を聞いて宗崎の顔がパッと明るくなった。
「おおっ、三上。俺は参加するよ。だって、この学部は男女の交流なんて全くないし、今は相手にその気がなくても、何かのきっかけを作れるかも知れないし。バレーボールはチョッとしかできないけど練習の足しになればいいさ。うちの学部は体育もないから体が鈍っているし、よい機会かも知れない。」
村上も激しくうなずくいて口を開いた。
「宗崎、その通りだと思う。女子との接触がない工学部で、これは、またとない機会だよ。これでポイントが稼げるかも知れない。俺も運動不足でちょっと体が鈍っているから心配していたところだ。バレーボールは体育で少しやってたけど、みんなそのレベルだろうから。」
『よし、上手くいった!。』
俺は心の中でガッツボーズをしつつ、これで、うちの仲間を含めて体育祭が終わっても、2人が自然と交流ができる場を設けられたことに安堵を覚えていた。
「今から俺は準備委員会のコンパだから、そのことを泰田さん達に伝えてみるよ。なんとかお前達も練習に行けるようにしてみる。明日、良二に内緒で、お前達にどうなったかは伝えるから。」
「三上。本橋をマジに外して大丈夫か?」
宗崎が俺の顔を見て心配そうにしている。
「たぶん、良二のことだから誘っても運動は全くダメだから絶対に断るだろうし、アイツの性格だから冷やかしに来る可能性もある。そうなったら泰田さんにメチャメチャに怒られるのが関の山だ。」
三上の予想は当たっていた。
後日談として教育学部の体育祭が終わった後、このことが良二にバレてしまう事態があったが、詳細を話しているうちに「俺はそれを聞いたら絶対に冷やかしに行っていた。たぶん、泰田さんに殺されたかも知れない。お前はナイスな判断をした。」と、ぼやいていたのだ。
「本橋は少しふざけた部分があるからな。泰田さんや松裡さんは真面目そうだし、確かに気が合わないかも。俺らは出会いが少ないから本当に助かるよ。これがダメでも、お前の世話好きに感謝だよ。」
宗崎は手を合わせて俺を拝み始めた。
「いや、宗崎、俺は神様仏様じゃないから…。そろそろ実行委員会のコンパがあるから。忙しくて悪い…。」
俺はそう言って苦笑いをしながら宗崎を見た。
「三上、くれぐれも頼むよ!」
村上の声に応えると、部屋を出て、駅前の居酒屋に急いで向かった。
◇
『20分前か。時間はちょうど良いな…。』
俺は寮から歩いて駅前の居酒屋につくと、雑居ビルの中に入った。
「あっ、三上さん、いたぁ~~。こっちですよ。」
山埼さんの呼ぶ声がして、俺が声が聞こえたほうを振り向くと、泰田さんや牧埜さんもいた。
「山埼さん。助かった、誰かに場所を聞こうと思っていたから。」
俺は山埼さんに礼を言って、あたりを見渡して棚倉先輩がいないことを確認した。
バレーボールの練習のことを話したかったので、そこにいた泰田さんに声をかけた。
「泰田さん、例の練習の件ですけど、補欠の松裡さんと牧埜さんの2人だけでは手持ち無沙汰になるから、この前、お好み焼き屋で一緒になった宗崎や村上と一緒にお相手として参加して良いですか?。さっき寮で彼らに話してきたばかりでして。」
俺の言葉に泰田さんが喜びをあらわにした。
「三上さんっ!!。それは嬉しすぎるわ!!。たとえ、バレーボールができなくても、うちのお母さんや守さんのお母さんが丁寧に教えるわ。みんな最初はそんな感じだから。三上さん、ほんと嬉しすぎます!!。」
そういうと、泰田さんは俺に軽く抱きついてきた。
『うわぁっ、これはスキンシップだけど…ちょっとドキドキだよ…。』
「やっ、泰田さん。嬉しいのは分かるけど、そのスキンシップは恥ずかしいです。それに、あまり大きな声を出すと、棚倉先輩にばれたらヤバいので…。」
「ふふっ。大丈夫だわ。棚倉さんは、他の人と駅前の中で待ち合わせをしていて、このあと相当な人数を率いて入ってくるわ。」
泰田さんは俺に抱きつくのをやめると、かなりご機嫌になっている。
「それなら安心しました。棚倉先輩、背が大きいし体も大きいから目立つもんなぁ…。あっ、本橋は練習に参加しないので、秘密にしておいて下さい。あいつは冷やかしに来るタイプなので誘ってません。」
泰田さんの抱きつきから解放されてホッとしていると、こんどは牧埜さんから声をかけられる。
「泰田さんとの話を聞いていると、バレーボールの件は面白いコトになってきましたね。そうそう、三上さん。先に座っていて下さい。私は皆の誘導がありますから。もう、松裡さんが席で待ってますよ。」
牧埜さんたちに案内されて席に案内されると、松裡さんが目にとまった。既に10人近くの人が席に座って、それぞれ雑談をしている。
松裡さんは俺の姿を見ると席を立って、そばまで来て声をかける。
「三上さん、待ってたわっ。時間前にしっかり来てくれているので安心したの。主役がいないとコンパも始まりませんからね。」
松裡さんは俺の右腕を抱きしめて引っ張る。
『うおっ??。』
「三上さん、こっちよ…。」
松裡さんを見ると、ほんのり顔が赤くなってるような気もするが、居酒屋の少し暗い照明では分からない。
「まっ、ま、松裡さん。ありがとう…。そ、そんなに慌てなくても…。」
先ほどの泰田さんといい、今日は2人ともスキンシップが少し激しいような気がする…。
席は6人掛けになっている。実行委員本部の席なので、予約した残りの4つのテーブルが見やすい位置にしたようだ。俺は横並びに棚倉先輩と、牧埜さんと座る。泰田さんと松裡さんが正面に座る形になった。
そうすると、守さんと山埼さんがじゃんけんを始めた。
「泰田さん、2人は何でじゃんけんを?」
「いっ、いや…どちらの委員が本部の隣の席になるかを決めてるだけだわ…。松裡さんは本部で固定だから、割り振りが難しいのよ。ははっ。」
『席が多いから、なかなか決まらないのだろう…。』
あいこが続いて、激しいじゃんけんの末に山埼さんが勝つ。
「山埼さんは、わたしのさんの左隣で、広報も含めて守さんは本部の隣のテーブルね。」
『そうか。席の割り振りが微妙な感じになるから、本部に座る人を決めた訳か。』
そのとき、棚倉先輩が20人近くの委員を連れてきた。
「おお、やっと集まったよ。30人近くいるから、大所帯だ。」
それぞれが、泰田さんや松裡さんなどの指示で席に着く。
そうすると1人の委員が松裡さんに声をかけた。
「松裡。会費を持ってきたよ。」
委員の一人がお金を渡すと、名簿に○が書かれた場所に赤ペンでチェックを入れていく。チラッと見たら、俺と棚倉先輩には既にチェックが入れられている。既に棚倉先輩が新島先輩のお金で俺の分も払ったのであろう。
「野村くん、たしかに受け取ったわ。」
松裡さんは専用の集金袋にお金を入れていた。
全員が席に着いたところで、まずは棚倉先輩が立った。
「みんな聞いてくれ。」
棚倉先輩の声で周りが静かになる。
「前もって言っておくが、明日は講義やゼミもあるので二次会は御法度にさせて欲しい。特に実行委員長代理の三上は理系だから、課題やレポートが私達よりも圧倒的に多くて講義に差し支えが出る。あとは未成年に酒は禁止な。うちは教育学部なので、そのあたりのモラルはしっかり守りたい。」
出席者のほとんどが先輩の言葉に同意のうなずきなどをしている。やっぱり学校の先生の卵だけあるので、こういうモラルを守る事に関しては、キチンとしているようだ。
先輩は腕時計を見ると言葉を続けた。
「制限時間があって今から2時間だ。9時にお開きになるから気をつけるように。」
棚倉先輩の言葉が終わると、複数の店員がやってきて、ウーロン茶やビールの瓶を置いていく。他のソフトドリンクやチューハイなどは各々が注文するスタイルらしい。
枝豆や冷や奴などのお通しがきて『3,500円コース』と書かれたメニューが置かれた。これを2時間以内に自由に頼んでいく。
早速、俺は店員を呼んでサラダやホッケの塩焼き、もつ煮込みなどを頼む。
俺の注文する品を聞いた棚倉先輩がツッコミを入れてきた。
「三上よ、頼んだメニューが渋すぎるぞ。典型的な酒飲みのようだ。」
「先輩。普段、寮では出ない食べ物を食おうとしてるだけです。それはともかく、そろそろ乾杯をしましょうか。」
俺は隣の牧埜さんにウーロン茶の瓶を持ってコップに継ぎ、隣の棚倉先輩にビールを継いだ。
牧埜さんが、慌てて俺のコップにウーロン茶を継いだ。
それを見ていた周りが、次々と乾杯の準備を始める。
みんなが乾杯の準備を終えたことを確認すると、席から立ち上がった。
俺が立ち上がったので、みんなが一斉に立ち上がった。
「みなさん、今日は実行委員会の初会合、お疲れさまでした。体育祭が無事に成功しますように祈りまして、乾杯!!」
そうすると、一斉にみんながグラスを突き合わせて席に着いた。
泰田さんがグラスのビールを飲み干すと、途端に笑顔になった。
「ぷはぁ~~。やっぱり最高だわっ!!」
俺はすかさず泰田さんにビールをついだ。
「だめよ、実行委員長代理さまに、そんなことはさせられないわ…」
そう言いながらも彼女は笑顔を絶やさないでいる。
続いて棚倉先輩にもビールをつぐと、棚倉先輩にすこし小言を言われた。
「三上よ、そういうところが、本当にマメだぞ…。そこまで脇役に回らなくてもいいぞ…。」
俺が、みんなにビールやウーロン茶をつぎ終わって、ホッケの塩焼きを食べ始めたら、隣のテーブルから守さんが話しかけてきた。
「三上さん、このさいだから聞きます~。三上さnは彼女とかいますかぁ??」
なんだか正面にいた泰田さんたちの目線が気になったが、俺は両手を横にして、守さんにいつものお約束になっている台詞を出して答える。
「守さん。こんなしがないオタクに彼女なんているわけないですよ。医学部や薬学部はともかく、工学部は典型的な理系ですから男所帯だし、私は高校も工業高校だったから女子との交流なんて皆無でしたから。」
俺の答えを聞いて4人が何故か笑顔になった。
山埼さんが俺に首をかしげながら質問をなげかける。
「三上さん、工業高校を出てこの工学部に入った理由は?。しっかりとした目的がありそうだわ。」
棚倉先輩が何やらニヤニヤしてるが、俺は無視をして山埼さんの質問に答える。
「私は、親父が小さな町工場をしてるので、その跡継ぎなのですよ。だから意を決して、その道に入るために、ここにいるわけです。」
牧埜さんも含めた周りが俺の言葉に納得をしている。代表して松裡さんが所感を述べる。
「え~~。凄い!!、なんで最初にそれを話してくれなかったの?。あの振る舞いは、そういう環境もあるのね…。」
いつもの通り棚倉先輩が俺のことを語り始める。
「ははっ。三上は、あまり自分のことを語ろうとしない。だから、けっこうミステリアスな部分を含んでいるのだ…。」
俺は、棚倉先輩が自分のことを勝手に語り始めたので、諦めて放置をする事に決めた。
そして、隣の牧埜さんと2人で話を始めた。
「牧埜さん…。私はね、棚倉先輩と一緒にいると、ほとんど台詞を取られちゃうから困っているんだ。」
俺は牧埜さんのウーロン茶を継ぎながら愚痴をこぼし始めた。
「三上さん、よく分かりますよ。こうなると本人が恥ずかしくて出る幕がないですよね。」
牧埜さんも俺のウーロン茶を継ぐ。
そのウーロン茶を飲んで、サラダを食べながら牧埜さんとの会話を続けた。
「そうなのですよ。今、女性陣が棚倉先輩の話に夢中だけどさ、台詞が取られる苦労ってコレですよ。棚倉先輩は酔うと会話が早くなるので、突っ込むタイミングを失うのです。彼は相当に頭の切れる人ですから、横やりを入れるのは頭脳戦になるし、後輩としての立場があるから難しいのですよ。」
牧埜さんは、ソーセージを食べながら、俺に同情の言葉を言った。
「三上さんの苦労はよく分かりますよ。まして目上なので逆らえませんし、強くも言えませんからね。」
俺はもつ煮込みを食べながら牧埜さんの言葉に疲れた表情を見せながら答えた。
「はぁ、牧埜さんはよく分かっていらっしゃる。ここで、苦労をしている人間同士で友人の契りでも交わしますか?。実質の実行委員長と副実行委員長ですから、仲良くしておいた方が得策です。」
そう言うと、牧埜さんは俺のコップにウーロン茶を入れ、俺も牧埜さんのコップにウーロン茶を入れる。
乾杯の音頭は牧埜さんが行った。
「では…、お互いが友人になることに乾杯!!」
周りは棚倉先輩の話に夢中になっていから、棚倉先輩たちは突如として、俺と牧埜さんが笑顔で乾杯している理由が分からずに不思議になっていた。
しかし、山埼さんだけが、なぜかクスクス笑っている。
「三上と牧埜。お前らは何をしている?」
棚倉先輩が、俺と牧埜さんの事を見てかなり不思議がっていたが、俺は平然とした顔で先輩の疑問にシレッと答えた。
「いいえ、先輩。牧埜さんとは実質の実行委員長と副実行委員長だから、友人になっておきますか?と、声をかけただけですよ。当然、友人同士ですから、今の気持ちを素直に語ったに過ぎませんよ。」
棚倉先輩の話を聞きながら、俺たちの様子を聞いていた山埼さんがお腹を抱えて笑い始めた。
「みっ、三上さん、上手すぎる!!!、おっ、おかしいわ!!、ははぁっ!!!」
「三上、牧埜…。お前ら、何を企んでる?。お前の考えてることは分からないから怖い…。」
俺は棚倉先輩の質問を無視して、山埼さんに問いかけた。
「山埼さん、けっこう器用ですね。棚倉先輩の話を聞きながら、私たちの話も聞くなんて。」
「それはよく言われるわ。しかし、三上さんが面白いことがよく分かったわ。この面白さ、かなり癖になりそうよ。」
このコンパも棚倉先輩が俺のことを語り続けて時間が過ぎていく…。
そのたびに、俺が牧埜さんに、皮肉が効いた愚痴をこぼすので、それを聞いた山埼さんがお腹を抱えて笑う展開が幾度も続いた。
『はぁ…、精神的に疲れるなぁ…。』
俺はコップに入ったウーロン茶を飲みながら、棚倉先輩が俺の話が止まらなくて、どうしようかと思いながら溜息をついていた。