目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
Chapter6 - Episode 17


「……悪性変異はぁー……うん、あるね。まぁ先に【血液感染】見よう」


――――――――――――――――――――――

【血液感染】

種別:血術・攻撃

等級:中級

行使:動作未設定・発声

制限:【戦闘以外の用途を禁じる】

効果:相手の血液を侵す病魔を射出する

   命中した相手を中心に7m範囲に存在する者に対して、弱体化した効果を与える

   病魔に侵された相手は一定確率で重症化を引き起こす


ダメージ:病魔 1ダメージ

     【感染症:血液】 25ダメージ/s

 重症化:身体から病魔が滴り落ち、それに触れた者に対しオリジナル同様の効果を与える

     滴り落ちた病魔は3秒後に消える

――――――――――――――――――――――


……うわぁ。

予想の斜め上の方向に強化されている。

それこそ私の書き加えた魔術言語の所為もあるのだろうが、それでもだ。


「重症化の要素ね……」


ここにきて出現した重症化。

掲示板で見たことも、それこそ自身が喰らった事もない要素だ。

名前のまま考えるのであれば、症状が重くなること。

確かに説明を見る限り、完全に何か危ない流行り病に罹っているようにしか見えないだろう。

しかし、そんな要素が新たに加わったからこそ、今まで以上に集団戦……味方が近くに居る状況では使えなくなった。


「とりあえず動作は……手に向かって息を吐く、にしておこうかな」


まるで手を温めるようにして、病魔を作り出す。

一見、寒さに耐えているようにしか見えないだろうが……それで出てくるのが悪意の塊というのも中々だ。

寒そうにしていればもっといいかもしれない。


「……で、まぁ元々【血液感染】は良いんだよね。うん。ソロプレイ用の魔術じゃないし」


そう言って私は【血液感染】の詳細を閉じ、悪性変異を起こしてしまった魔術の詳細を開いた。

ついに来たか、という気持ちと。それと共に仕方ないという意味での溜息が漏れてしまう。


――――――――――――――――――――――

脱兎ラビットステップ

種別:補助

等級:初級

行使:発声行使

悪性:行使時HP-7%、【捻挫:足】付与

効果:発動から(自身の精神力の値)秒間、敏捷を5%向上させる

   自身をターゲットにしている相手からのダメージ+5%

   (敵対者から逃亡している状態である場合敏捷-10%)

――――――――――――――――――――――


【脱兎】。

初期も初期から私が創造した魔術の1つで、しかしながら等級強化をせずに使っていた魔術の1つでもある。

そもそもとして効果量が低くとも使い勝手が良いために後回しになってしまう、という点もあったはあったのだが。


「えぇっと【捻挫】ってのは……あったあった。確率でダメージを受ける状態。この場合だと足を使った行動をしてる時に判定かぁ……」


掲示板を横目に、【脱兎】の詳細と睨めっこする。

前回【挑発】が悪性変異した時は【聴覚異常】という耳が聞こえなくなるデバフが掛かるようになっていた。

そして今回は【捻挫】……恐らく、悪性変異で付くデバフはその魔術に関係するデバフが付与されると考えて良いだろう。

だが、今回の問題は正直な話そこではない。


「……脱兎の良い所が全部デメリットに変わってる」


以前は、敵対者から逃亡している状態で敏捷に対して追加の強化を得ることが出来ていた。

それなのに対し、今回変異した影響か。逆に逃げている場合は足が遅くなるという仕様に変化してしまっている。

尚且つ、相手に対してダメージ増加バフまで完備しているという……正直このまま使う理由が1つもない程度には使えない魔術へと変化してしまった。


私がダメージに反応するタイプの魔術……それこそ、ダメージ量に対してカウンターを放つ等のようなものを持っていれば話は別なのだろうが、私のプレイスタイル的にそういったものは一切持っていない。

……一応、【脱兎】の強化素材は集めてあるから今すぐ強化出来るのだけが救いかな。


キザイア、そしてRTBNと集めた素材を思い出し、ほっと息を吐く。

本当に先に素材集めをしておいて正解だったと思う。

これから前回の【挑発】のように素材から……となると流石に時間も伝手もない。

私もそうだが、他の皆もそろそろ来るイベントに対して準備をしているのだから。


唯一準備も何もしていなさそうな狼獣人の女性プレイヤーが頭を過ぎったが、彼女は彼女でいつも一緒にいる後輩が彼女の分まで準備をしていることだろう。

変に連れまわして彼の心労を貯めるわけにはいかない。


「時間は……ちょっと遅いか。一旦今日はここで切り上げておこうかな」


現在時刻……リアルの方の時間を確認し、明日の予定を考えた後に私は一度ログアウトする事を選択した。

別段明日に予定はない。ないのだが……普段通りの生活をしていると、恐らく2日後のイベント開始に起床などが間に合わない可能性があったからだ。


変なものを置いていないか、出しっぱなしにしていないかを確認した後に私はゲーム内からログアウトした。

明日、インしてから【脱兎】の等級強化については考えよう。




【※プレイヤー非通知ログ※】

【※カルマ値が一定値に到達したプレイヤーが一定数を超えました※】

【※悪性変異切除数……13%※】

【※特殊イベントクリア数……2%※】

【※ワールドクエスト【■■■、■■■■】が開始されます※】

【※プレイヤー皆様のこれからの魔道に、知恵の光あらんことを※】


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?