目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
Chapter6 - Episode 16


【魔術の等級強化が選択されました】

【【血液感染】の等級は現在『初級』となっています】

【習得者のインベントリ及び、行動データを参照します……適合アイテム確認】

【『菌死体の骨髄』、『腐乱狼の牙』が規定数必要となります……規定数を満たしていません:『菌死体の骨髄』、『腐乱狼の牙』】

【『菌死体の骨髄』が上位素材『病魔術師の粘液』に置き換えられました】

【『腐乱狼の牙』が上位素材『病魔術師の頭蓋』に置き換えられました】

【【血液感染】の強化を開始します】


素材の入れ替え……それもかなり昔に手に入れ、そしてインベントリ内に放置されていたものとの入れ替えが発生した。

もしかしなくても、私は【血液感染】をいつでも等級強化出来る環境にあったのに放置していたという事だろう。

……創った魔術はちょっとその場で等級強化出来ないかだけ確認する癖付けた方がいいかもなぁ。


本当はもう少し……それこそ、私よりもフィッシュなど多くのダンジョンに挑み、そしてボスを打倒しているプレイヤーならばしっかりと確認するものなのだろう。

しかしながら、私の普段が普段。適当に急ぎの用事がない場合は基本的に街や綺麗な景色を探しに知っている所をぶらついているだけなのだからそういう考えに至らないのも仕方がない。


「うーん……?」


『追記の羽ペン』と共に出現した魔導書の【血液感染】のページを見つつ、私は唸る。

書き足す内容自体も、制限自体も事前に決まっているのだから後は書くだけ、なのだが。

……なーんで、ここに悪性変異した【挑発】の時と同じオーラが出てるんだろう。


何故か【血液感染】のページは全体的に、つい最近も見た紫色のオーラで覆われていた。

習得魔術一覧から【血液感染】の情報を見た時に悪性変異を起こしている様子はなかったし、何よりカルマ値の貯まりそうな行動は、ある程度自制出来るならば自制しているために心当たりがない。

ならば最初からこうだったのかと考える……には流石に不自然だろう。


「……もしかして、悪性変異直前って事?まだどこが変異するかがシステム的に決まってない、けど前兆としてこうなってるとか」


そうなってくると少し面倒だ。

それこそ、以前【挑発】を等級強化した際は悪性変異している文字に対して対処する、という形で何とかなっていた。

だがまだ決まっていない、しかしながら悪性変異はするという状況で等級強化を行った場合考えられるのは、


「等級強化した後に悪性変異、次は上級になるまでそれを何とかすることが出来ない……とか十分あり得るよねぇ」


あり得ないと笑うことは出来ない。

正直Arseareならばそれくらいは普通に仕様だと言われそうだ。


「……うん、まぁいいか。普段からかなり使う魔術ってわけでもないし」


私は少しだけ悩んだ後、そのままペンを持つ手を動かし始めた。

正直な話、【血液感染】は現状も、そして将来的にもあまり使わない魔術になるだろう。

というのも、そもそもが範囲内の対象に対して無差別に攻撃を加えるタイプの攻撃魔術は使い勝手が悪いのだ。

現状は風邪薬さえ持っていれば予防、もしくはその場での回復が行える程度ではあるものの、それも強化していくとどうなるかは分からない。


それこそ、本当に私自身が相手し切れない量を1人でどうにかしないといけなくなった場面など、詰んでいる場合に使うしかないのが現状だ。

たまに『酷使の隷属者』のようにメタとして働くタイプのボスも居るだろうが、基本的に使うのはそういった場面なのだ。


これが【衝撃伝達】や【霧の羽を】、【路を開く刃を】などの最近よく使う魔術だったら話は別だった。

わざとカルマ値を貯め、悪性変異した事を確認してから等級強化に再度取り組むくらいはしていただろう。


「よしよし、じゃあとりあえず対象をとる範囲を広げちゃおう」


ある程度割り切りが出来た所で、私は魔導書に魔術言語を書き込んでいく。

元々【血液感染】は命中した相手を中心に5m以内に存在している対象に対して同じ効果を延々と与える魔術だ。当然限界数はあるのだろうが、それについての明記や検証を行ったわけではないために詳しい数字は私にも分からない。


そんな魔術ではあるのだが……やはり現状、感染力は低い。

命中した相手の近くに、感染した相手の近くに次の感染対象が居なかった場合にはただの単体攻撃になってしまうのだ。

だからこそ、少し感染力を強める形で強化を施していきたい。


と言っても、具体的な策はない。

どうすれば対象をとる範囲が広くなるかなど分からないため、出来る限り想像でそれっぽい魔術言語を書き足しておき、きちんと発動出来るようにだけはしておく。


「……よし、これで終わりかな」


【『言語の魔術書』読了による構築補助を確認しました。『カルマ値』を獲得します】


魔導書を閉じ、等級強化を完了させると同時。カルマ値云々のログが流れるのが見えた。

それ自体はまぁ良いだろう。問題はきちんと対象をとる範囲が強化されたかどうかだ。

恐る恐る、しかしながらどこか楽しみにしながら。私は習得魔術一覧を開いた。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?