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Chapter6 - Episode 15


私が煙管を作り直した後。

運営から大型イベントの日程が発表された。

といってもそこまで長く時間が空くわけではなく、2日後の正午。

12時になったと同時にイベントが始まる……らしい。


らしい、というのは今回のイベント【集い祓え鹿の者を】は事前に大型レイドイベントと紹介されていたのだが。

今回日程と共に発表されたイベント説明にはレイドボス云々について触れている文章が存在していなかったのだ。

単純に考えるのであれば、大型レイドと言っても普通の敵性モブが大量に出現するタイプのイベントかと思うものの。


「……まぁ、そんなわけないよねぇ」


――――――

イベント名:【集い祓え鹿の者を】

内容:大型レイドイベント

   参加プレイヤー全員が協力しクリアを目指すイベント


説明:敵性モブを倒すごとに討伐ポイントを獲得することが出来る

   イベント終了後、プレイヤー全体で獲得した討伐ポイントによって賞品が贈呈される

   また、個人で獲得したポイントを賞品と交換することも可能


概要:【始まりの街】、その周囲に瘴気が立ち込める

   瘴気に侵された生物達は燃えるような尾を、角を持ち、人々を襲い始める

   あぁ、瘴気の影から奴らがやってくるぞ

――――――


ある程度Arseareというゲームをやっていると、正直本当にそうだとは思えない。

あるとしても、大量のモブを倒していくとボスが出現する……などが一番無難だろう。


……魔術の等級強化自体は……まぁ間に合うっちゃ間に合うか。

変な事が起きない限りは問題ないだろう。

そういう事が起きるのがこのゲームなのだが。


「というか、現在進行形で起きてるしね。変な事」

『……どうした?狐の女子』

「いや、どっちかって言うとそっちに言いたいんだけど。なんでそんなに離れてんの」

『あー……あぁ。問題はない。否、問題があると言えばあるのだが。だが狐の女子に言っても変わらないだろう?『禁書棚』の時然り』

「まぁそうね。……まぁいいか。ちょっと等級強化するからちょっかい出さないでね」


何やら私から距離をとりながら、しかしながら姿を現している『白霧の森狐』に対し変な目を向けつつも。

理由を言わないのなら気にしてても仕方がないため、自分の作業を開始する。

イベント開始までに等級強化を行った方が良い魔術が何個かあるのだ。


……優先順位は……索敵系と範囲攻撃系か。

私の持つ魔術の中でそれらの特性を持っているのは大枠含めて4つほど。

【霧狐】、【ラクエウス】、【血液感染】、【路を開く刃を】の4つだ。

【ラクエウス】は生成する罠の種類を落とし穴に限定すれば、地上を行く敵性モブと霧を見通せないプレイヤー達を諸共引っ掛ける事が出来るだろう。

近場に居るプレイヤーに対してはきちんと警告はするつもりだが。


それと似た魔術として、【路を開く刃を】は私の周囲の霧の中に刃を出現させる魔術。

変にこちらに近づいて来ようものなら、刃によってズタズタにされてしまうのがネックな所だろうか。


「……うん、よし【血液感染】にしよう」


【血液感染】。

そもそもの性質からして自分を含めた範囲内の対象全てに対して効果を表す攻撃魔術だ。

だが、だからこそ対多との戦闘には向いている。

一時的に近づけないエリアが発生するものの、それもアイテムを使う事で予防も出来るのだから、私の持つ範囲攻撃系の魔術の中では対処がしやすい方だろう。

変に霧を使わないというのもポイントだ。


ならば制限をどうするのか。

まぁ普通に考えて【魔力付与】と同じように【戦闘以外の使用を禁じる】で良いはずだ。

というか【血液感染】を戦闘以外で使う場面など来る方がおかしいのだから、ここは基本的にノーリスクと同じだと考えて良い。


……あとは何を書き加えるかって所かな。

最後に決めておくべきは、何か新しい要素を付け加えるかどうか。


「付け加えるより書き換えちゃった方がいいか」


書き換えるべきは範囲か、それとも対象か。

考え出すとキリがない事ではあるため、ある程度適当でもいいかもしれないが。

それこそ上級に等級を上げる時に今回選ばなかったものを入れればいいのだから。


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