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Chapter5 - Episode 39


『大丈夫な訳ないでしょう』

『……申し訳ありません』

『謝ってほしいわけじゃありません。話を聞いていたにも関わらず、何故顔を見せなかったのかと聞いているのです』


最深部のボスエリアから帰った後。

私はいつも通りに上層の直っている神社へと訪れていた。


『白霧の狐憑巫女』との再戦エリアに関してはまだ設置していない。

というのも、掲示板に中層以降が出現した旨の書き込みをした所、一種のお祭り騒ぎとなってしまったからだ。

ダンジョンの管理権限を持つプレイヤー達は、自身のダンジョンに中層以降が出現する兆候がないかの確認や、実際思い返してみれば……という書き込みで。

ダンジョンの管理権限を持っていないプレイヤー達は、『惑い霧の森』の中層以降に挑んでいたりと忙しい。


そこで私がポンと彼女の再戦エリアを配置すれば、更に混乱やら……下手すれば、またキザイアのようにダンジョン乗っ取りを狙う輩が出てきてもおかしくないからだ。

……まぁ今でもそれっぽいのは出てきてるっぽいんだけど。

だが、それくらいなら私が手を下す必要もなく、この場にいる2体のボスが勝手に制裁を加えてくれる。

以前乗っ取られかけたのは、その内の1体……今もネチネチと巫女に詰られている馬鹿狐が侵食されかけた所為もあるのだが。


「次のイベント、そろそろなんだよねぇ……」

『イベント……あぁ、お祭り事のようなモノですか。魔術師達も大変なのですね』

「えぇ、まぁ。でも楽しいもんですよ。次は大量にモブと戦う系かもだし……色々といつもより色んな魔術が見れそうなんで」


次回イベント【集い祓え鹿の者を】。

それに付随する様に大型アップデートがくるらしい、というのが最近の憶測やらリーク紛いの噂だが、実際の話まだ運営から詳細が送られてきていないため、どうなるかは分からない。


イベントの方は大型レイド戦、というのだけ分かっているものの。

それが本当に今回私達が経験したような防衛クエストのような形になるのか、それとも大型のボスとの戦闘になるのかはまだ分からない。

でも楽しみである事には変わりない。


「それまでに巫女さんの素材で装備を新調したいなって気持ちではあるんですよね」

『成程……ではやはり?』

「えぇ。やっぱりそろそろ何処かに設置しようかなとは思ってます。最深層のボスエリア近くにはしようと思ってますけどね」


だからこそ。

混乱云々はあるのだが、自分の利益の為に再戦エリアは設置しておきたい気持ちがあるのは確かなのだ。

公表しなければそこまで混乱も招かない可能性も十分にあるだろうとは思っているし、何より最深層にたどり着いているのは身内含めて私とメウラの2人だけ。


その内のメウラだって、1人でサクサクと最深層までたどり着けるかと言えば……そうではないだろう。

私もそうだが。


「何周かすれば良い感じにはなると思うんで、一旦また修行ですね」

『狐の女子……我の方の素材は要らないのか?』

「んー……尻尾使った系統の魔術を使うなら兎も角って感じ。今は良いかなぁ」

『そうか……』

「ん?何?もしかして寂しくなった?突然帰ってきた上役に私取られちゃったから寂しくなっちゃった?」


にやにやと『白霧の森狐』の方へと視線を向けると、視線を明後日の方向へと向け知らんぷりをしているのが見えた。

彼とはこのゲームの中では付き合いが長い方ではあるが新鮮な反応だ。


「ふふ、まぁ少し【霧狐】の強化や新しく耳を使った索敵魔術を創ろうかとか考えてるから、しっかり決まったら頼らせてもらうわ」

『そう、か。うむ』

『良かったですね、振られなくて』

『なっ……違いますッ!』


何やら言い合いを始めた2体のボスを背に、私は一息、空気を吸った。

澄んだ冷たい空気が身体の中へと入っていき、そして巡っていく。


……次は、どんなモノが見れるのかな。

まだ見ぬそれを夢見ながら、私は背後の痴話喧嘩へと混ざることにした。

また暫くは霧の森の社が静かになることはないだろう。



――――――――――

Name:アリアドネ Level:20

HP:450/450 MP:155/155

Rank:novie magi

Magic:【創魔】、【魔力付与】、【挑発】、【脱兎】、【衝撃伝達】、【霧の羽を】、【血液強化】、【血狐】、【ラクエウス】、【霧狐】、【血液感染】、【交差する道を】、【路を開く刃を】

Karma:『禁書棚』

Equipment:『面狐』、『狭霧の外套』、『狭霧の短洋袴』、『ミストグローブ』、『ミストロングブーツ』、『白霧の狐面』、『霧の社の手編み鈴』、『白霧の狐輪』

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