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Chapter5 - Episode 27


第7ウェーブが終わり、RTBNに対する諸々の礼が終わった後。

次回ウェーブ開始まで残り2分と言ったところで、彼が到着した。


「すまん、遅れた」

「お、メウラくんじゃあないか。仕事かい?」

「フィッシュさんお久しぶりです。まぁさっきまで。……初の人も居れば知り合いも居るな」

「まぁ私が集めるって言ったらこうなるよ。お疲れメウラ」

「おうおう。時間は……ねぇな。簡易的に見てやるから『熊手』出せ」


ゴーレムの馬に乗ってきたメウラに対し、『熊手』を放りなげつつ。

彼が誰なのかを知らない面々に対して適当に説明をしていく。


「彼はメウラ……まぁ、私の装備をほぼほぼ作ってくれたり、今見たようにゴーレムを主に使って戦うタイプの生産職だね」

「ん、私は知ってるねぇ。一応彼のダンジョンには割とよく行ってるし?実物を見たのはこれが初めてだけど」

「ってことは完全に初見なのは私だけですかね?……生産職との繋がりは中々大事ですし、ちゃんと自己紹介しておきますか」


そう言って、クロエが『熊手』の点検をしているメウラの所に歩いていくのを見ながら。

私は視線を1人……今後の防衛攻略に重要な役割を担っているであろうバトルールの方へと向けた。

彼は今、視線を虚空へと向けつつ手から血液を流しながら何かを書き込んでいる。

……不可視設定だと、あんな風に見えるのかぁ。

状態異常を防ぐ魔術。彼の使っている他の魔術的に、今等級強化している魔術もタロットカードの何かをモチーフとしているのだろうが……実際に出来上がるのがどんなものなのか、多少は気になる。

それに、休憩時間に入ってすぐに始めたというのに未だ等級強化が終わっていないのだ。

純粋に何を魔術言語で書き続けているのか気になって仕方がない。


「……話しかけても大丈夫です?」

「ん、あぁアリアドネさん。大丈夫です。どうしました?」

「いえ、あと1分ほどで次のウェーブが始まるっていうのと、延々と書いてるので気になって」

「あぁ、少しばかり面倒な事をやってまして。下書きに保存してある魔術の基礎部を全部写してる……って言えば分かりやすいですかね?」

「あー……成程?このゲーム、魔術言語に対してはコピペ出来ないですしね」

「そういうことです。興が乗って少し書きすぎましたねコレ」


そう言いながらもずっと書いている彼の手の動きは分からない。

否、何かを書いているような動きをしているのは分かるものの、それがどんな魔術言語を書いているのかが分からないのだ。

……流石に腕の動きでも読み取れないようにはなってるか。

システム的なものか、それともバトルール自身が施したものかは分からない。


「まぁ一応、そろそろ書き終わるので大丈夫ですよ。終わらなくても他のバフは起動するようにはしてあるので」

「時間差、というよりはトリガー式の起動ですか」

「まぁそういうことが出来る技術があるってことですね。もしアレだったら後でどこで勉強出来るかは教えますよ」

「良いんですか?」

「まぁ技術は広めた方が後々得になったりしますから。あと……僕が使ってる物はそこから応用に応用を重ねたものなので、優位性は変わりませんし……よし、終わり」


彼が顔をあげ、手から流れる血が止まる。

それと同時、周囲にブザーが響き渡った。


【カウントダウン終了】

【Eight Wave Start!】


「トリガー起動、次いで【ハイ・教皇プリエステス】」


彼の宣言と共に、白く色付いた結界と淡い青色の結界が出現した。

先のトリガーによって起動した結界は恐らく、今まで張っていた複合補助結界なのだろう。

バフが4種しっかりと付与されている。それと共に、【状態異常無効】というバフが新たに追加されているのが見え、彼が等級強化に成功したのが分かった。

……これ、一体どういう強化と制限の入れ方してるんだろう。

基本的に魔術の効果はリスクやコストを高くすれば比例するように高くなっていく。

それに加え、使用用途を狭める事によって更に効果を引き上げる事が出来るのがこのゲームだ。そう考えると……バトルールの使う複合補助結界は一体どのようなコストや制限をかけているのか、素直に気になってしまう。


「とりあえず勝手は前回と同じだろ?適当に砦作るから、作業終わるまでそこに籠らせてもらうぞ。一応ゴーレムは出来る限り出していくから」

「よろしくぅ……と、新規は一体どれだい?」


と、そろそろ私も目を前線……モブ達が出現し始めた方へと戻そう。

第7ウェーブで追加された霧兎は私の【衝撃伝達】、【挑発】、あとは恐らく見た目要素として【脱兎】がモチーフとなっていた。

習得魔術順で出てきている以上、次に出てくるのは【霧の羽を】か【血液強化】、【血狐】辺りの性質を持った敵性モブが出てくるのだろうと予想出来るのだが。


「あ、居た居た。あれじゃない?」

「あれは……ダチョウ?」


敵性モブ達の群れの中、1体のみ見えたその姿は霧を纏った白いダチョウだった。

【霧の羽を】は見た目にのみ作用したと考えたいのだが……実際に戦ってみないと分からないだろう。

それに、他と違って1体しか出現していないのが不穏でしかない。

私は濃い霧を引き出し、周囲から見れば白いまりものような状態となった後、


「とりあえず、私が行きます。一番対処が分かってるんで」


行った。


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