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Chapter5 - Episode 23


空中に霧を生みだし、簡単な魔術言語を複数一気に成型して見せる。

中には今RTBNが手元で書いていたものの無駄な部分を簡易的に消したものも作り、見えるように配置しておいた。


「ほら、これなんかは今RTBNが書いてた奴。余計っぽい所削ってみたけど、こんなのとかどう?」

「……確かにこれならロスは少なくなるけど、その分かかるコストも増えない?」

「ならこっちで『周囲魔力吸収』を追加していけばいいから問題ないかな」

「成程……?いや知らないなその魔術言語。……うん、任せよう。起動用に必要な単語だけ横に羅列しておくから、それ組み合わせてもらっていい?」

「了解、じゃあ最低限敵の目の前まで行って視界塞ぐくらいは出来るようにしておく」


ささっと起動用と思われる特殊な魔術言語を羊皮紙の隅に書くと、途中まで書いていた羊皮紙を私へと渡してくる。

さて、此処からは私の仕事だ。

と言ってもやることは簡単。

しっかり起動するように魔術言語の始まりと終わりを最初に設定する。

その後、起動後のエネルギー供給を『周囲の存在する魔力を吸収』という意味合いになるよう魔術言語で設定し……と、そこまでやった所である事を思い付いた。


といっても、簡単な事だ。意味もないかもしれない。

元より、魔術言語というものはその文字列を円状に配置することによって効果を高める事が出来る仕様のようなものがある。

だが、それは別に必ずしも円状である必要はないのだ。

それこそ、その魔術構成に関係する形ならば少しは作用するだろうから。


……起動は心臓部に、行動パターンは頭部にかな……。

イメージは文字で出来た人。

人の外郭を最低限の防御機能……『敵性モブ』が『触れた』ら『凍らせる』という魔術言語で象り、出来上がった簡易的な文字の人の中に、起動用、パターン、エネルギー補給用の魔術言語を埋め込むように書き込んでいく。


「最後にっと……」


そうして出来上がったホムンクルス起動用の羊皮紙に、最後の仕上げを施しておく。

極力小さく……今の私が出来る最小のサイズで円状に『使用後』に『炎上』し『霧散』させる魔術言語を構築し、焼き付けて完成だ。

悪用防止と言えば聞こえは良いが、これは単純に知識の流出防止用の措置。


他の魔術書の技術や、それこそ普通に創造できる魔術に関する情報ならばこの様な措置は必要無いのだが……魔術言語という技術に関してだけは必要不可欠なモノだ。

なんせ、ある程度……それこそ、基礎だけでも知識があるものが見ればそのまま同じように書くだけで真似が出来てしまう技術である。


そして私の使う魔術言語は使用者に良いとは言えない副作用も含むのだから、後々トラブルを産まない為にも必要だろう。


【『言語の魔術書』読了による構築補助を確認しました。『カルマ値』を獲得します】


それを裏付けるように、『カルマ値』を取得した旨の通知が届く。


「よし、完成〜。1枚だけで大丈夫?」

「問題なし。こっちも素体が出来上がったから、これに転写して素体を複製すれば良いから……あっち!」

「あ、ごめん。使用後に焼却処分する魔術言語も組んでたの言うの忘れてた」

「ふぅん……?あぁ、そういう・・・・技術も使ってるのかぁ。成程ね」


どうやらその処理だけでRTBNにはどのようなモノなのか伝わったようだが……まぁ、良いだろう。

一瞬だけで読み取れるようなモノでもないからだ。


「さて、時間だぜお二人さん」

「次はなにが出てくるかしら」

「んー……多分、兎か狐のどっちかだと思いますよ」


フィッシュに言われ武装のチェックをしながら、グリムの疑問に答える。


「その心は?」

「所謂中層以降に出てくるモブがミストヒューマンみたいに私を参考にしてるなら、本人の真似の次は習得魔術の真似になるでしょうし……」


【カウントダウン終了】

【Seven Wave Start!】


「大体、私の習得順を考えるとこうなりますから」


アナウンスと共に、境内の入口から弾丸のように突っ込んできた何かに合わせるように、私は【衝撃伝達】を纏わせた足を振るう。

瞬間、私の足とその何かがぶつかると同時に2つの衝撃波が発生し……そして掻き消えた。

衝撃波同士がぶつかり合い相殺されたのだ。

しかしながら私の蹴りの勢いは相手に伝わったらしく、そのまま小さい身体を吹き飛ばしていく。

その姿は薄い霧を纏った白い兎のように見えた。


「うん、やっぱり兎。どのアクションかは分からないですけど、接触すると衝撃波を撒き散らす可能性大です」

「アリアドネさんの【衝撃伝達】モチーフ……って事ですかね?」

「それだけじゃなさそう……ですねッ!」


次いで、2体目3体目と似たように弾丸のような速度で飛んでくる仮称霧兎達を捌いていると、動きが少しおかしい個体がいるのが目に見えた。

否、他の霧兎と比べると一回り大きいソレは息を吸い込むように身体を膨らませると、


「うわ、【挑発】ッ!」

『――ッ!!』


咄嗟に声をあげ【挑発】を発動させると同時。

一回り他より大きい霧兎の口から何やら金切音の様なものが聴こえ、


「これ、は……」

「【注目】と【狂化】の二重デバフが入ってます!効果が切れるか、あの個体を倒すまで他らのモブに攻撃が当たりません!」

「あと遠距離型は下手な攻撃はやめた方がいい!【狂化】の効果で範囲攻撃やらはターゲットランダムに飛んで行くことになるから自爆するかも、ねッ!」


私の習得魔術の中でも厄介な部分がモチーフとなった敵性モブである事が分かってしまった。


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