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Chapter5 - Episode 6


『風駆ける遺跡』、ボス『白塵の立兎』討伐。

素材、『塵立兎の脚』、『塵立兎の耳』、『塵立兎の眼球』複数入手。


『自傷する廃坑』、ボス『他滅の人形』討伐。

素材、『他傷形の腕部』、『他傷形の眼球』、『他傷形の操糸』複数入手。


『死病蔓延る図書館』、ボス『病源の魔導書』討伐。

素材、『病源書の頁』、『病源書の栞』複数入手――、


「こんくらい有れば、とりあえずは強化できるだろう?」

「そうだねぇ……でも【血狐】と【霧狐】は出来ないかな。何か心当たりとかある?」


ざっと、3つのダンジョンのボスを2人で倒して回り。

【始まりの平原】の適当な場所で話をしながら、次に行くダンジョンを見繕っていた。

どのダンジョンも第1エリアとも言うべきこのフィールド上に存在しているものなのか、今の私とキザイアが揃っている現状では苦戦も何もなく……どちらかといえば楽勝で周回していたレベルだ。


「ん?あぁそれならアンタがいつも一緒にいる生産組のダンジョンがあるから確保済みだと思ったんだけど」

「生産組……あぁ、メウラのダンジョンか」


そう言えば彼もまたダンジョンを管理しているプレイヤーの1人だ。

詳しい詳細は知らないものの、使役系の魔術を強化出来る素材を得ることが出来るらしいダンジョンを。


「思いっきり忘れてた」

「……まぁ、言っておくけどあそこにはアタシはついていけないからね」

「ついていかないんじゃなく、いけない?」

「あそこは特性的に、使役系魔術が使えないと中に入っても何も出来ないのさ。ワタシの魔術は使役ではないから」


そう言って彼は、自身の足元の影から人面鼠を出現させるものの……すぐにそれは消えてしまう。


「【ジェイキン】だっけ?使役系じゃないの?」

「こいつは攻撃さ。対象がないと今のみたいに消えちまうから使役系みたいには運用できないのよ」

「へぇ……中々難しいなぁ、魔術」


今更な話ではあるものの。

似た様な魔術でも内部データとも言うべきモノに違いがあれば全く違う効果を得ることがある。

それこそ、掲示板で公開されている汎用性の高い魔術のレシピの通り作ったとしても、全く同じものは作れないと検証をしているプレイヤーが愚痴を零していたくらいだ。


だからこそ、彼の【ジェイキン】も使役系に見えて、そうではない。

使役系を作ろうとして、対象選択形の攻撃魔術が出来てしまったとそういうことだろう。


「とりあえず、行ってみるかぁ……『万象虐使の洞窟』だっけ」

「そうね。アタシが言うのもなんだけど1人でいくの?」

「まぁメウラとかそこらへんに声は掛けてみるけど……パッと思い付く使役系魔術の使い手の知り合いがあんまりいないからねぇ」


私が苦笑いを浮かべながらそう言うと、彼は少し考えるように顎に指を添え。

その後、どこかへと連絡を取り始めた。


「……何してるの?」

「いやぁね。アタシの知り合いの中に丁度暇してて、尚且つ使役系の魔術を使える子が居るのよ」

「成程?」


連絡をつけてくれる、ということだろうか。

しかしながら、相手が誰なのかが全く分からないし……それに紹介元がこのキザイアだ。

少々、いやかなり心配になってくる。

最悪ダンジョン内で笑顔で敵対される可能性もあるのではないだろうか、と考えながら身を固くしていると。


「あぁ、もしもし?アンタ今暇?……ホムンクルス作ってる?暇ね。ちょっとこの後【始まりの平原】まで来れる?来れるわね。待ってるわ」

「えぇっと……連絡はついたん?」

「勿論。あの子が来たらきちんと紹介してからアタシは別用で消えるけれど、まぁ大丈夫でしょう」

「一応聞くけれど、名前は?」


そう聞くと、彼はにっこりと良い……否。

悪い笑顔を浮かべ、こう言った。


「RTBN。知ってるでしょう?この間のイベントで準優勝だったあの子よ」

「……がちぃ?」


思った以上の大物の名前がその口から登場し、私は思わず変な顔をしてしまう。

私の素材収集は一筋縄では終わらない気がしてきた。


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