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Chapter5 - Episode 5


【飢餓】の効果時間が切れるまでだらだらと頼んだ料理を食べた後。

私は宿の自室へと戻ってきていた。


デスペナルティ自体はとっくに切れており、何処かのダンジョンやエリアへと繰り出すならばすぐにでも動ける程度のコンディション。

しかし、それでいて何故宿の自室へと戻ってきたかと言えば。

……上のランク、かぁ。


フィッシュが言っていた、私よりも上だというプレイヤーランク。

前回上がった時は【衝撃伝達】を中級へと上げた時……習得している魔術の内、3つが中級となった時だったが、そこから長い事ランクアップする事はなかった。


「確か図書館とかが解放されたのもそのタイミングだったっけ」


思い返せば今の私の主戦力とも言える魔術言語が解放されたのがそのタイミング。

その後の流れを考えると、よくもまぁそのままのランクでここまでやってきたものだと思うものの、


「等級強化もやってなかったし当然かなぁ……」


無論、新しい魔術を創っていなかったわけではない。

【霧狐】や【血液感染】、【交差する道を】などという攻撃よりは自身の戦術を広げる為の魔術や、つい先程新たに得た【路を開く刃を】なんていう攻撃手段も手に入れた。


「フィッシュさんとの訓練用に新しい魔術を考えないとだけど、既存の強化もしないとこれから先厳しいかな」


そうと決まればやる事は1つ。

まずは現在初級である習得魔術の等級を中級へと押し上げる事だろう。

現在、中級となっている魔術は4つ。

【魔力付与】、【挑発】、【衝撃伝達】、【霧の羽を】だ。

どれもこれも最近の己の戦闘の基部となっている魔術であり、主戦力といっても過言ではないだろう。


「だからこそだよねぇ……他を後回しにしてたのって」


なまじそれで戦えてしまっていたからこそ、他の等級強化を後回しにしていたということでもある。

それこそよく使う【脱兎】が未だ初級なのが良い例だ。否、悪い例だろう。


「……とりあえず、知り合いと掲示板の伝手で等級強化に使える素材を集めよう」


まずは、【脱兎】。

その次に出来たら【血液強化】や【血狐】など、これまで習得してきた順番に強化をしていこう。

問題はそれらの進行がイベントまでにどれ程間に合うかだが、

……最悪、素材だけでも集めてイベント中に強化するのもありだしね。

今回は別に、自分1人で戦うわけではないのだ。

自己強化系は強化しておいた方が良いとは思うが、習得順で考えるならばその自己強化系魔術が1、2番目に強化されるため問題はない。


「フィッシュさんとの訓練もあるし、物語的に言うなら修行パートその2ってわけだね。それも私の頑張りでどうにでも強化具合が変わるタイプの、サボれない奴だ」


苦笑を零しながら、しかし目と手を使い知り合い達へと連絡を送る。

と言っても今回送る相手はほぼ1人……最適な人物が存在している。


「あ、もしもし?今大丈夫かな――」




「……で、アタシが出せる情報はその程度よ。満足?」

「いやぁありがとうキザイア。やっぱダンジョンの事なら『駆除班』を頼るのが良いよねぇ」


場所は移り、【クートゥ】。

適当な飯処で軽食をつまみながら、私は連絡がとれたフレンド……キザイアに情報提供をしてもらっていた。

勿論、情報の対価としてこちらが出せる素材などを渡している。


「というか、まだアンタnovieだったのね……」

「そうだよ?キザイアと戦った時もそうだしね」


ボス専門の討伐ゲーム外クラン『駆除班』。

以前は迷惑もかけられたが、やはりダンジョン関係の情報を集めるならば彼らを頼った方が正確で必要な情報が集まるのは確かなのだ。

そして、そのトッププレイヤーであるキザイアは勿論、保有している情報の質が掲示板よりも良い。

頼れるのならば頼った方が色々な部分でスムーズになるのは間違いないのだ。


「うん、足関係も血関係もある……流石に『惑い霧』系のダンジョンは攻略する人少ない感じ?」

「少ないわね。そもそも誰かのダンジョンが序盤のマップにあるから、遠出してまでダンジョン攻略する旨味が薄いのよ」

「あぁ……成程ね」


掲示板の方を覗いても、キザイアから受け取ったダンジョンの情報リストをよくよく見てみても、そこに『惑い霧』のような霧に関係するダンジョンが見当たらない。

確実に私の管理している『惑い霧の森』の所為で、攻略してもボスを討伐してしまっているのだろう。

……個人的には、序盤のダンジョンよりも進んだマップのダンジョンの方が良いとは思うんだけどなぁ。

まぁそれを言ったところで現状は変わらない。


「よし、じゃあ早速ボス攻略に行きますかね……っと。キザイアも来る?」

「あー……いいわね。行きましょうか」

「えっ」

「何よ誘っておいて」


ノリで誘ってみたら思わぬ返事が返ってきてしまい、変な表情を浮かべてしまう。


「また、なんで急に?」

「次のイベントの準備よ。ほら、次はレイドイベントでしょう?『駆除班』以外のプレイヤーとの連携も出来ないと色々と不便にはなるでしょうに」

「成程……」


こちらとしてはキザイアのようなプレイヤーが付いてきてくれるというのは中々に心強い。

笑みを浮かべ、


「よし、じゃあ行こうか!」



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