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Chapter4 - Episode 40


結論から言えば、私達は対話を放棄しトドメをさした。

話が出来る相手かと言えばそうではないと思うし、そもそもの話。

フィリップがいる前で、あの蜃気楼の人狼と友好関係を結べるとは思えなかったからだ。


「やっぱり霧が濃いわね、ここ」

「すいません、話がしやすいってなるとここくらいで。一応周囲の霧は操ってるんでそこまで濃くはないと思うんですけど」

「大丈夫よ。戦闘中とかじゃなければそこまでだし」


私達はボスの素材をそこそこを受け取った後、崩壊を始めたダンジョンから脱出し、そのまま反省会などがしやすい『惑い霧の森』のボスエリアへと移動してきたのだった。

ちなみにフィリップはダンジョンの崩壊と共にどこかへと消えてしまった。


まぁ元がNPCというこちらとは出自自体が違うのだから問題ないだろう。多分。

また彼に会うことが出来たら、色々とあの村について聞いてみるのもいいかもしれない。


「で、話したい事って?まぁ色々と予想はつくけれど」

「あはは、まぁその予想が当たってればいいですけど」


苦笑いしながら目の前のグリムをその辺に座らせる。

それと共に、私は【血狐】と【霧狐】を発動し私の近くに控えさせた。

私の行動にグリムが眉を顰めたものの、彼女も彼女でゴブリンを召喚しつつ、その身から薄く黒い靄を発生させている。


「あぁ気にしないでください。この子ら、単純にダンジョンで使わなかったから寂しくて……って言っても信じてくれないです?」

「信じはするけれど、それに対して身構えないってのは色々無いわね」

「ですよねぇ。……よし、本題に行きましょうか」


一息。


「グリムさん、『重』ってコンテンツ?テクニック?……まぁなんでもいいんですけど、知ってます?」

「あら、あのダンジョンについてじゃないのね」

「そっちは自分の方で予想出来てるんで。大方、背景を知って面白そうだと思ったダンジョンに私達を連れて行ったんでしょう?偶然を装って」

「そこまでわかってるならいいわ。……あそこまで面倒な事になってるとは思わなかったけれどね」


彼女はごめんなさいと頭を下げる。

しかしながら私が聞きたいのはそこではない。


「話を戻しましょう。知ってます?」

「知ってるか知らないかで答えるなら知ってるわ。まぁ誰もがやるでしょうあんなの」


『重』。

言霊と魔術言語を組み合わせた結果、発動してしまった何か。

後から見直した結果、あれが発動したと共にカルマ値を獲得していたため……知っているであろう人に確認を兼ねて質問をした方がいいと踏んだのだ。


「習得魔術の悪性変異や改変を引き起こすカルマ値。それを獲得する手段は大きく分けて2つ。1つは禁書に関係するアクションを行う事。これは分かりやすいわね」


禁書を読む。

『禁書棚』を呼び出す。

それ以外にも色々とあるのだろうが、私の中でパッと出てくるのはこの2つだ。

どちらも実際に体験したのだから。


「そしてもう1つは、禁書から獲得した技術を『組み合わせて』行使する事よ」

「組み合わせて……?え、それってもしかして」

「あら、分かった?――私が知ってる組み合わせは『重』って名前じゃなく、『連』って名前なのよね」


率直に言って、悩みの種が増えた。

勿論『重』というもの以外にも種類があるであろうという予想くらいはしていたし……しかしながら、予想に過ぎないそれを前面に押し出して考えるということはしていなかった。

だからこそだろう。グリムの言葉を聞いた私は嘆息しつつ、苦笑いを浮かべる。


「ちなみにこの話って知り合いで知ってる人って?」

「私が把握してるのだと……まぁ貴女くらいじゃない?知ってそうなのは何人かいるけれどね」

「まぁいますよねぇ。灰被りさん辺りとか」

「あれは確実に知ってるでしょうよ。寧ろ私達が知らない技術も持ってそうだし……」


そこまで言って、私達2人は肩を落とす。

まだまだこのゲームは奥深いと共に、どこまで進んでも上には上がいると分かってしまうのだから。


「とりあえず『連』については後で詳細送っておくわ。ゲーム内がいい?」

「あ、それじゃあリアルの方のメールに送っておいてください。私も『重』の詳細……というか、発動した時の状況送るんで」

「了解。ある程度情報共有した方がいい案件だろうしそれでいいわ」


それぞれのリアルの連絡の取れるアカウントを教えあった後、私達は解散した。

今回のダンジョン攻略に関する反省自体はそれぞれの魔術の習得状況に関わってくるため、どうしても個人個人でやるしかなくなるのがArseareの悪い点だろうか。


1人になり、霧の操作をしなくて良くなった境内で空を見上げる。

思うところの多いダンジョン攻略だったと、課題の多く積みあがった出来事だったと思う。

思いあがっていたわけではない。それこそ、元々実力が足りていないままに格上と戦っていたりするのだ。自分が実力不足である事くらいはずっと理解している。


「いやぁ、今回は楽しい話は出来なさそうかな……」


出来るなら、あの『偽海市の群狼』くらいは1人で倒せるくらいに。

そう思いながら、私はどこかで聴いているであろうあの白狐に対して話を始めた。


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Name:アリアドネ Level:20

HP:450/450 MP:155/155

Rank:novie magi

Magic:【創魔】、【魔力付与】、【挑発】、【脱兎】、【衝撃伝達】、【霧の羽を】、【血液強化】、【血狐】、【ラクエウス】、【霧狐】、【血液感染】、【交差する道を】

Karma:『禁書棚』

Equipment:『熊手』、『狭霧の外套』、『狭霧の短洋袴』、『ミストグローブ』、『ミストロングブーツ』、『白霧の狐面』、『霧の社の手編み鈴』

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