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Chapter4 - Episode 22


『声響く洞窟』。

洞窟型のダンジョンで、『声響く』という特性から一言発するだけでダンジョン内に居るプレイヤー全てに声が聞こえてしまうほどに声だけが拡散されてしまう。

それに加え、『洞窟』という特性から灯り、もしくは暗視能力がない限りはダンジョン内で行動するのは難しく、ダンジョンの前には松明を作って屋台で販売しているプレイヤーも見られた。


「ほら、着いたわ。中は……まぁ1人で大丈夫でしょう?」

「まぁね。流石に【平原】のダンジョンは相性が悪すぎないかぎりは何とかなるし……まぁ、他にも手は増えたしね」

「それが何なのかは聞かないでおくわ。一応言ってはおくけれど、このダンジョンの劣化ボス出現エリアは入ってすぐ横の小部屋よ。今回はボイスウルフが目的だから……まぁ、必要ないとは思うけれど」

「了解、難度は?」

「3よ。【平原】の対話後ダンジョンは基本3になるらしいわ」


成程、と1つ頷いた後。

キザイアと別れ、松明をしっかりと何本か買った後にダンジョン内へと侵入した。


【ダンジョンに侵入しました】

【『声響く洞窟』 難度:3】

【ダンジョンの特性により、照明機能が一時的に制限されました】


中に入ると、全く周りが見えなかったためすぐに松明を灯した。

ゲームの松明だからか、火が付いている状態と付いていない状態をアイコン1つで切り替えられるというのはありがたい。


……声を出したら他のプレイヤーに迷惑をかけるから、基本【動作行使】だけ……うん、前に経験したことあるし余裕あるなぁ。

実際、声を出さないで戦闘を行う事自体は楽だ。

私の主力を担っている【魔力付与】と【衝撃伝達】の2つはどちらも【動作行使】にて行使できるようになっているし、【霧の羽を】を使えれば相手を一時的に行動不能にも出来る。

といっても、それはダンジョン内・・・・・・で戦う場合の話だ。

個人だけで戦うエリアに移動すれば、そんな配慮はいらないだろう。


私はキザイアに言われた通り、入ってすぐ横にある劣化ボスエリアへ移動し、劣化ボスとの戦闘をするために設置されていたコンソールを操作する。


確かに【挑発】の等級強化に要求された素材は『咆哮狼の喉』、というモブからドロップするものだ。

しかしながら私は【霧の羽を】の等級強化時に上位素材があれば自動的にそれに置き換わることを知っている。

素材がドロップするかどうかは……まぁ、私のリアルラックに関わってくるだろうが、どうにかなるだろう。

モブの血液を得るときも生け捕りにして容器を使えば入手出来たのだから、それこそボスの喉を切り取ればなんとかなるだろう。


すぐに周囲の景色が切り替わり岩で出来た広場へと転移させられた。

インベントリ内から『熊手』を取り出しながら周囲を見渡すと、私の中腰くらいの大きさくらいしかない人型の何かが居る事に気が付いた。


……アレは、ゴブリン?

通常のダンジョンボスが出現した時に流れるムービーは劣化ボス時にはなく、入ってすぐに戦闘へと突入する。

松明によって照らしてみると、少し離れた位置にいるその人型の何かの見た目がはっきりと見えた。


頭にちっちゃな錆びている王冠を乗せ、マントのようなボロボロの外套を羽織り。

手には錆びた剣を持って、こちらを見つめる大きな目。

緑色の身体を持ったそれは、ファンタジーで緑小鬼と称される事の多いゴブリンの姿に酷似していた。


【ダンジョンボスを発見しました】

【ボス:『反響の小鬼王』】

【ボス討伐戦を開始します:参加人数1人】


戦闘が始まると同時、装備を付けたゴブリン……『反響の小鬼王』が大きく空気を吸い込み始める。

それを見つつ、私はとりあえず『白霧の狐面』で霧を発生させつつ【動作行使】によって【魔力付与】を盾状に展開した。

これで1撃までなら耐えられる。


そう考え、私は相手の行動を止めずにそのまま見ていたのだが……『反響の小鬼王』が大きく声を挙げた。


『――ッ!!』

「ッ?!」


瞬間、私のステータス上に【聴覚異常】という最近見たデバフが付くと共に霧が吹き飛ばされる。

次いで、周囲の松明が届いていない暗闇に何かが出現したような気配を感じ取った。

……まさか……そういうこと?


ゴブリンと言えば、ファンタジーではよくよく駆除対象に指定されているモブである。

その理由としては、何処でも存在し、ある程度の知性を持った上で人間のような集落を形成し、人間を攫ったり殺したりするためだ。

だがそれだけならば他の種類のモブもやる話。


しかし、ゴブリンはしばしばその存在をゴキブリに例えられるほどに繁殖力が高いとされる。

1匹みたら50匹いると思えと言われるほどに、一気に数が増えるためにゴブリンは駆除対象に指定されてしまう。


話を戻そう。

私が松明を恐る恐る周囲が見えるように振り回すと、そこには。

こちらの持つ光を睨むように大きな目を細めつつ、こちらへと近寄ってこようとしている数十体のゴブリンの姿があった。

……集団戦型のボス戦かよ……ッ!


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