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Chapter4 - Episode 18


【始まりの街】の宿屋にて一息つく。

とりあえず自分に分かる範囲で突如解放された『禁書』というコンテンツに関して調べてはみた。

みたのだが……その結果は芳しくはない。


「禁書庫はまだだけど、それ以外がほぼ分からないってのがすごいな……」


まず見た目の変わった『言語の魔術書』。

中身の厨二病テイストな文章も全て書き換えられており、内容は変わらないものの読みやすくはなった。

だが、それだけで何故変なオーラのようなものを纏っているのかは全く理解できなかった。

恐らくは事前情報やバックストーリー的な何かが存在しているのだろうが……それらをまともに攫えてない私には分からない。


一応【クートゥ】の方の図書館にも向かい混沌云々を調べてみたのだが、こちらも『混沌の魔術書』という紫色の本へと変わっていた。

変なオーラを纏って、内容も読みやすくなっている所を見るに私の知っている厨二病シリーズはどちらも厨二病から卒業してしまったようだ。


次に、情報がありそうな掲示板。

プレイヤー達がゲーム内外問わずに意見を書き込める……このArseareというゲームにおいて情報を調べる場合は掲示板を見た方が早い場合も多々存在するのだが……『禁書』に関してはただの1つも存在していなかった。

否、存在していないというよりは存在させられないようになっていた、と言った方が正確だろう。


そもそもとして、『禁書』に関係するワードなどが何故かAI判断で弾かれてしまう。

一応厨二病シリーズについても書き込めるかどうかを試してみたものの、そちらも弾かれてしまい……つまるところ、運営側的にはこの『禁書』というコンテンツは到達したプレイヤーのみ知っていればいいと、広まらないでもいいと考えているという事。

といっても、弾かれるのは結局の所ゲームに直接繋がっているこの掲示板だけだ。


少しだけログアウトし、他にも存在しているArseareの掲示板を覗いてみたのだが……そちらでも情報を集めることは出来なかった。

やはりゲーム内外問わず書き込むことが出来る掲示板が公式で存在してしまっているからだろうか。プレイヤー達の多くはそちらを利用するし、それ以外もそちらを閲覧し情報を集め参入するかどうかを決めてしまう。

つまりは、他の掲示板がまともに機能していたのはゲーム開始前までだった、という事だ。


「……これ、グリムさんなら何か知ってそうだよねぇ」


十中八九知っているとみていいだろう。

丁度彼女と共にダンジョンを攻略するという予定のような約束も存在することだし、その時に彼女に問えばいい。

とりあえず私がやるべきは先にこれ以上『禁書』について調べるか、それとも等級強化のための素材集めを優先するかのどちらかだろう。


どちらにもメリットは存在するはず。

その先にあるものが明確に分かっているか否かという違いはあるものの、どちらも私が強くなれるものだろう。


「よし、『禁書』の方にしよう」


結局の所、私の興味を惹かれたのは『禁書』の方だった。

等級強化用の素材集めに関しては、言ってしまえばダンジョンを攻略していれば勝手に集まっていくものだ。

たまにそれだけでは難しい素材もあるだろうが、それに関してはメウラなどの伝手を使い集めるしかないため、結局の所今出来る事は少ない。


一応、誰も攻略していないダンジョンを攻略し『対話』を選択することで、『白霧の森狐』のように、私の取得している魔術に何かしらの影響が出ないかどうかを確かめようかとも思ったが……ソロでダンジョン攻略なんてまともじゃない事をやるのはどうかと思ったため却下した。


「よし、じゃあとりあえず……【カムプス】の図書館に行くか」


そして私は【始まりの街】の図書館……ではなく。

【カムプス】の図書館へと向かい足を動かし始めた。

普通に『禁書』に関して調べるのならばそのまま【始まりの街】へと向かうだけでもいいのだが、各街に『魔術書』……厨二病シリーズが存在している可能性があるというのは、グリムとの会話から予想出来ている。

そのため、先に禁書庫というエリアに行くよりも【カムプス】の図書館を確認した方がいいだろう、という結論に至ったのだ。


……まぁ何もなくても、その分考えられる事はあったりするからいいんだけど。

【カムプス】へと移動した私はすぐさまマップで図書館の位置を確認し、移動を開始し始めた。

伊達に【始まりの街】の次に訪れ活動をしていない。

地図がなくても大体の道は見れば分かるのだが……一応、見ておいた方がいい気がしたためマップで確認したのだ。

自分の事を信じていないわけではない。むしろこの上なく信じている。

私以外のものを信じていないと言われても仕方がないくらいには信じているからこそ、私はマップを見つつ移動するのだ。


そして、案の定私は【カムプス】で約2時間ほど彷徨う事が出来た。

またも、顔見知りのプレイヤーに苦笑いで連れてこられた時は思わず天を仰いでしまったが。


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