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Chapter4 - Episode 17


目標は決まった。

だがやろうと思っていた事もある。


「あ、ちょっといいです?魔術言語関係の本ってどこの棚にあるんですか?」

「魔術言語ならば6番の棚にありますよ」

「了解です、ありがとう」


そう、シギル魔術の時と同じようにコストが軽減される可能性のある、魔術言語の本を読みに来たのだ。

結局の所、私は魔術言語をよく使ってはいるものの図書館に訪れた時に貰った教本を読んだだけだ。


実際に効果があるかは分からない。データが少なすぎるし、言霊だけの現象だったのかもしれないからだ。

しかしながら、可能性があるのならば試した方がいいだろう。


「えぇっと6番……ここか。本は……」


ずらっと並んでいる本の中から、必要そうな本を数冊引き抜いては戻していく。

私が探すのは教本と同じレベルの初心者用の本、その応用書、そして。


「あっ、これはもう一種のシリーズみたいなものなのかな」


混沌云々と同じ厨二病患者が書いたと思われる『言語の魔術書~限りある言から限りない世界を~』という黒い本を見つける事が出来た。

パラパラとページを捲ってみるものの、斜め読みしただけでは内容が理解できない……というよりは書かれている言葉が理解できない辺り、混沌云々と同じ厨二病シリーズであることが分かる。


……まさかこんなのを探す事になるとはねぇ。

あるとは思っていたが、実際に見つけてしまうと変な笑いがこみあげてきてしまう。

恐らくだがグリムもこのシリーズの事は知っているだろう。

そして再会した時、私が持っていた混沌云々を見て同じシリーズがあるという事に気が付いているはずだ。

その上で、言霊というものがあると教えてくれたのだから、彼女には感謝しかない。

或いは私がこうやって他の厨二病シリーズを探す事になるだろうと予想して、先に教えてくれたのだろうか。まぁ、本当の事は本人にしか分からないのだから、今はいいとしよう。


「……よし、まずは普通の本から読むか」


どちらにせよ、私が読む順番は変わらない。

初心者用の本、応用書、言語云々。この順番で読まなければ、いくら混沌云々を読み解いた私であっても理解できない部分が出てくるだろうと容易に予想できたからだ。


シギル魔術の時も同じ。

アレは応用書などを読んだ後だからこそ、違いに気が付くことが出来たし元々基礎を理解していたからこそ頭の中で翻訳し混沌云々の内容をかみ砕く事が出来た。


私は確かに魔術言語をよく扱っている。

しかしながら、結局の所それは教本に記されていた範囲のものでしかなく、応用と言える活用をしたのは【霧狐】を生み出した時くらいの事。

つまりは私は初心者も初心者なのだ。

ただちょっとその使い方が周りとは少しだけ違うだけの。


「応用の方の内容はやっぱり魔導書に書き込んだり既存の魔術の構成変更とかか……」


1度やっているから理解はしやすい。

知識なしでやり遂げた所の補完なのだから当然だろう。

そして驚いたのは言語云々の内容だ。


「……うん?これ私やったことあるね?」


そう、書かれていた内容を解読していくと、複数書かれている内容の中の1つに私が実際に戦闘中に行った事があるものが存在していた。

それは、魔術言語を円形に並べ魔法陣のようにする……キザイアに使ったあの使い方。


「えぇっと……『魔術言語には一定の力の流れ方が存在し、その流れが構成全体に循環することで現象として発現する』……と。成程?円形が一番その効率がいいって事かな」


特段それに名前はない。

しかしテクニックとして、魔術言語を一定以上に扱えるものは誰しもが使っているもの。

それが円形に配置しMPを流す、という方法らしい。

何故円形にした方がいいのか、というのは言語云々の著者にもよくは分かっていないらしい。

しかしながら、他の魔術にも言える事だが……それらしい形や配置にすることによって何故か元の性能よりも効果が向上する現象が確認されているため、世界の理として認識されているらしいというのが読み取れた。


「ゲーム的な設定、もしくは本当に意味があってバックストーリーとかが探せばある系かなぁ。……そういうの探すのって結構大変そうだけど、余裕があったら探してみるかぁ。私も気になるし」


そう言いながら読み終わった言語云々を閉じ……その瞬間、通知が流れた。


【混沌の魔術書の読了を確認しました】

【言語の魔術書の読了を確認しました】

【魔術書2種類の読了を確認。コンテンツ『禁書』を解禁します】

【今後、図書館の禁書庫にアクセスできるようになりました】


「は?」


内容を読み、噛み砕き、理解して。

そしてなお理解できずに頭を抱えそうになり、何気なく今しがた閉じた言語云々へと視線を向けた。

すると、だ。


「……うわ、変わってんじゃん。『言語の魔術書』って……サブタイトルも無くなってるし」


黒かったカバーは白く。

何も感じなかったはずのそれは、薄っすらと何かオーラを纏っているようにも見える。

明らかに先程の通知が原因で何かが変わったのだろう。私の見方か、それとも世界の方か。

どちらにせよ、等級強化のための素材集めに行く前に確認する事が増えてしまったようだった。


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