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Chapter4 - Episode 16


その後、何事もないように装いながら劣化ボス出現エリアからボスエリアへと移動し、声を張り上げた。


「馬鹿狐!いるんでしょう!?」

『――叫ばずとも聞こえている』


すると、すぐに私の近くの霧が集まり『白霧の森狐』の本体が出現した。

その顔は少し不機嫌そうで、私にあんな方法で負けたのが気に入らなかったのだろう。


「あんた、もしかしなくとも私の行動とか見てたりしてるわよね?」

『……いや』

「目を逸らすな。いや、別にいいのよ。見るくらい。でも見るなら事前に言いなさいよ」

『いや、だから覗いてはいない。なんといえばいいのか……狐の女子に渡した仮面があるだろう。それが縁となっているのか、我の方に狐の女子の扱う術の情報が全てとは言わないが、少し流れてきてな』

「は?これ?」


私は普段つけている『白霧の狐面』を手にとってまじまじと見てしまう。

確かにこれは1番最初に『白霧の森狐』を倒した時に本体からもらったアイテムだ。

掲示板でも意志がしっかりとあるタイプのボスから贈り物という形でアイテムが与えられる事がある、という話は聞くが……それがきっかけとなってボス側が強化されていく、なんて話は聞いた事がない。

というか、そんな話があるのならばもっと話題になっているはずだ。


「……ちなみにあのトラバサミみたいなのって私の魔術のアレンジ?」

『あぁ、そうだな。流石に穴は自分の身体に開けられないだろう』

「成程ねぇ……」


ありえない、とは断じることは出来ない。

そも、この世界Arseareはオカルトマシマシのごった煮のような世界だ。

西洋魔術の概念があるかと思えば、そこに東洋魔術の考えをぶちまけ、強引に混ぜる事でArseare上の魔術としている節まで存在している。

混沌魔術、とはよく言ったものだがここまでの混沌もないだろう。


「そっちだけ流れてきてる……ってわけじゃなさそうねぇ……」

『だろうな。我の血を使ったにしては形が狐に寄りすぎている。他にも霧の狐も居るのだろう?それらは確実に我の影響を受けているだろうな』

「道理で特に何も指定してない時でも狐の姿で出てくるわけだわ」


私の持つ魔術、その中で知らず知らずのうちに影響を受けているとすれば【血狐】と【霧狐】がそれだろう。

名前を付けたり、そも内部の構成自体を弄ったりもしたものの、形自体がそうなるように、とは弄っていない。むしろ、最近よくやっている【血狐】の羽衣のような、色々な形状になればいいな程度でしか考えていなかったはずだ。


『対話』を選択したボス、その影響を習得している魔術、もしくは今後習得する魔術が受ける。

メリットとも考えられるが、デメリットとしても考えられるのが頭の痛いところだろう。

私でいうのならば、半ば自動的に狐の形へと変化していくため、それ以外の形状に変化させるタイムラグが発生しているのがデメリットとなっている。


「どうせこっちに影響与えるならあの霧での転移とかにしなさいよ」

『……そも、再現するにしても狐の女子はそれらしい魔術を習得していないだろう』

「まぁそれもそうなんだけど。あ、でも今はどう?限定的だけど転移魔術は持ってるわよ?」


【交差する道を】。

辻神との戦闘後、その場から帰還するために習得した場所の限定された転移魔術だ。

普段は使えないし、そもダンジョンから帰るのならばセーフティエリアから直接街に飛べばいいため、ほぼほぼ出番のない魔術と化している。


『あれはまた違うだろう。辻神の影響は受けているだろうが……我の力を受けるなら、等級を上げねば難しいだろうな』

「ふぅん?もしかして【霧術】ってあんたの影響を受けるようになった魔術についたりするの?」

『……まぁ、受けやすくなるのは確かだな』


この口ぶりから、恐らくはほぼ確定で【霧術】は目の前の狐の影響を少なからず受けているのだろう。

そうなってくると、【血術】や他の体系も何かしらの影響を受けている可能性はあるが……そこについてはまた別の機会に調べればいいだろう。今は目の前の事だ。


「オッケーオッケー……ちなみに、さっきの戦闘中に言ってた試練ってのは受けられるの?」

『受けられなくはないが……突破は難しいだろうな』

「ん?あんたと戦えばいいんじゃないの?」


実際の所、試練が何の試練なのか等分からない事も多いため、今すぐ受けるわけではないが……難しいと言われると少しだけ気になってしまう。


『戦うには戦うが、先程は結局の所分体だった、ということだ』

「あぁ、そういう……能力の制限とかもあったって事ね?」

『そういう認識で構わない。さて、そろそろ我は戻る。次は中級の魔術を増やしてから呼ぶといい』

「了解、その時は試練受けさせてもらうわ」


私がそう言うと同時、『白霧の森狐』はふっと息を噴きだした後に霧となって消えていった。

とりあえず知りたいことは知れたためいいという事にしよう。

言われた通り、所持している魔術の等級強化を当面の目標にして行動することにした。


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