第2マップ北部の街【クートゥ】。
和風建築の建物が多く、一見すると日本の降雪地域の街にも見えなくないこの街には、【始まりの街】と同じように巨大な図書館が存在するらしい。
実際に来たのはこれが初めてであるために、それがどの程度のものなのか全く分からないが。
「よし、街の中にも入ったし、私の役目はここまでかな?」
「すいません案内してもらって。今度余裕あるときに何かお礼しますね」
「あぁ、いいよいいよ。今回は私がヘマしたお詫びって意味合いもあったからねぇ。また今度ダンジョン攻略でも一緒にしようぜ」
フィッシュはそう言って、何処かの街へと転移していった。
恐らくはバトルールと合流しに行ったのだろう。
彼らは彼らで知らないうちに強く、そして面白い魔術を習得してきているため、また今度機会があったら見せてもらいたいものだ。
……よし、とりあえず私も私の目的を果たそうかな。
近くにある宿屋に部屋をとった後、私は今回【クートゥ】を訪れようと思った理由であるモノを探しに街へと繰り出した。
雪避け用にと作られた雁木の下を歩きつつ、今回ここに訪れた目的を思い出していた。
私の目的、それは印章……シギル魔術の習得だ。
シギル魔術は魔術言語に似たような、しかし似て非なるもの。
魔術言語が汎用的な文様を組み合わせ汎用的な効果を生み出すものならば、シギル魔術は局所的にしか使えないものの強力な効果を生み出すものだ。
今現在、私の習得している魔術や、パッと使える魔術言語の特徴を考えると……シギル魔術を習得しておいた方が何かと役に立つ場面は多いだろう。
そもそもとして、【外凍領の雪女】との戦闘で思い知ったが、私は気温が低い環境や冷気を操る相手に滅法弱い。
それこそ、ほぼほぼ攻撃手段がなくなってしまう程度には弱い。
元より、霧や血と言った温度の低下に弱い物をメインに据えているため、何処かしらでこういった問題が出てくるのは薄っすらと理解はしていた。
それが偶然、シギル魔術を習得しようと【クートゥ】を目指す道中で明らかになっただけなのだ。
「……えぇっと、とりあえずこういうのは知識系って事で図書館?」
街に出た、と言ってもこの街に訪れるのはこれが初めてであるために、何処に何があるかなんてわかるはずもない。
一応マップを見ながら移動はしているものの、私は自慢ではないが方向音痴だ。
知っている道ならば兎も角、見知らぬ街ならば迷わない方が稀というもの。
「あ、アレかな?」
だがそんな人物がいるのを想定していたのか、それとも偶然か。
周りの施設などよりも頭1つ大きい建物が目に入る。
一応マップ機能によって確認してみれば、それが私が探そうと考えていた図書館であることが分かった。
何とも親切な街だろうか。
何処かの図書館に辿り着けなかった【平原】近くの街にも見習ってほしいものだ。
しばらく歩き、勿論少し迷いながらも図書館へとたどり着く。
中に入ってみると、そこは一見【始まりの街】に存在するウェールス図書館とあまり変わらないように見えた。
否、変わらない事がおかしいのだろう。
確かあの時に私を歓迎してくれた司書が言うには、他の街に存在している図書館は【クートゥ】と【始まりの街】以外そこまで大きくはないとの事。
つまりはこれがおかしいほうなのだろう。
「ようこそ、ウェールス図書館クートゥ支部へ。私達は貴女様を歓迎いたします」
「あ、ありがとう。シギル魔術についての本ってどっかにあったりする?」
「シギル魔術ですね、少々お待ちください……そこの3番の棚に入門書から応用まで一通りそろっております」
「了解、助かったよ」
案内された方へと進み3と書かれた棚を確認してみると、そこには混沌魔術に関係する本がまとめられているのか、シギル魔術以外にも複数の種類の本が収められていた。
中々に気になる本もあるが、とりあえずはシギル魔術の入門書だけを手に取って図書館の読書スペースへと移動する。
借りずにこの場で読むだけならこれで問題ないため、やはり図書館というものは素晴らしい。見つけにくい事と辿り着くまでに迷う事を除けば、だが。
本の題名はそのまま『シギル魔術入門書』。
他にも入門書らしきものはあったものの、少しばかり読みにくそうだったため分かりやすいこれにした。
ページを開き、読んでみると。
やはりといっていいのか、本の中身はすべて魔術言語で記されており、魔術言語を知らないと内容を理解できないようになっていた。
……うわ、これ凄いな。魔術言語だけどMP流しても暴発しないようになってる。
下手にMPを流しても問題ないようになのか、それともこういう設定の元書かれているのか。
どちらかは分からないものの、この本に記されている魔術言語はそれぞれが内部的に絡み合ってそれぞれの特性を打ち消しあい。
MPを流しても問題ない、現象として成立しないように構成されていた。
まだ私には出来ないレベルでの魔術言語の構成。元はシギル魔術を学ぶためにこの本を選んだものの、少しだけ魔術言語の勉強も出来そうだと分かると自然と口角が上がってきていた。