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Chapter3 - Episode 35


決闘が終わった。

少しだけ気になったことはあるものの、それでも私が勝者という形で終わることが出来た。


一息つきつつ、霧を晴らすように操作していると私のすぐ近くに光が集まっていき……先程デスペナとなったキザイアが死ぬほど嫌な顔をしながら立っていた。

どうやら決闘でHPが全損し消えても、決闘が終わった後にその場で復活するらしい。


【デュエルシステムを適用します】

【勝者に対し報酬が付与されます……付与完了】

【敗者に対しペナルティを付与します……付与完了】

【デュエルシステムを終了します】


私とキザイアの身体が一瞬光り……視界の隅に【デュエルシステム:アクティブ】というバフが掛けられた事を示すアイコンが表示された。

元々決闘で賭けていたのは私の所有するダンジョンを好き放題してもいいというもの。次いでに勝った者が負けた相手の顔面に1発分の拳をお見舞い出来るというものだ。

アイコンに注目すると、残り時間と共にキチンと明文化された賭け内容がウィンドウとして表示される。


「どうも、今のお気持ちは?」

「……最悪よ。デュエルシステムの所為でアンタに一時的に攻撃もできないし、出来たとしてもデスペナでいつもよりもステータスが下がってるから返り討ちになる可能性が高いし。ほら、殴りなさいよ」

「あ、そんなすぐに殴っていいの?もっと何か言いたいことがあったら言ってもらってもいいんだけど」

「あるわけないでしょう。私の運がないから負けた。アンタは運がよかったから勝った。それだけよ。そこに後からワーギャー理由をつける方が恰好悪いわ」


……なんか、色々とイメージが違うなぁ。

元々『駆除班』のメンバーから聞いていた話や私が感じた印象とは違う、自分が負けた事を素直に認め、その上で逃げずに殴られようとしている姿を見て、少しだけきょとんとしてしまった。


「面白いじゃん。フレンド登録しとかない?」

「は?……いやいや、何言ってんのアンタ。馬鹿じゃない?どこをどう考えたら私とアンタがフレンド登録する流れになるのよ」

「いや、割と一緒に行動したら面白そうだし、それに色々魔術関係で教えてもらえそうな事も多そうだし?」

「私が教える前提なのはどういうことなのよ……馬鹿じゃないの……」


額に手を当て天を仰いでいるキザイアを見ながら、少し笑う。

ダンジョン関係の事では確かに苛ついた。

それに関してはキチンと今回の報酬を使ってすっきりするつもりだ。


「まぁ良いじゃん良いじゃん。こういう所で交流関係増やすのもMMOの醍醐味みたいな所あるじゃん?」

「……はぁ、まぁ良いわ。ほら先に殴りなさい。そしたらしてあげるから」

「あ、本当?じゃあ遠慮なく。……【血液強化】、【衝撃伝達】」

「は?いや、ちょッ?!」


なけなしのMPを絞りきり、魔術を発動させてその呆けた顔をぶん殴る。

およそ人体から出てはいけない音と共に吹っ飛びながら、再度光となって消えていくキザイアを見つつ。

私は笑う。


「はぁー……最高。まだまだ楽しめそうだなぁ、このゲーム」


こちらへと苦笑いを浮かべつつ近づいてくるフィッシュ達に視線を向けながら、私はそう独り呟いた。



「……って感じだったんだけど、どうよ?楽しめた?」

『まぁ、な。狐の女子がいつも独りで語る話は嘘ではないかと疑いたくなるものばかりだ』

「独りの部分を強調するのやめてくれる?」


場所は移り、いつものボスエリア。

しかしながらそこにはいつもは居ないはずの白狐が、私の話し相手としてそこに居た。


「で、あんたはまたお役目に戻るの?」

『それが我の役目……言うなれば仕事だからな』

「ふぅん。まぁ良いわ。今度はあんなヘマしないでよね」

『次は危なくなったら狐の女子を真っ先に頼ることにするから安心しろ。……では、また』

「えぇ、またね」


白く、美しい大きな体が光となって消えていく。

今回は色々と予定外の事も多かったが……まぁ、色々と見れたから良しとしよう。

次はどこへ行こうか。



――――――――――

Name:アリアドネ Level:18

HP:430/430 MP:145/145

Rank:novie magi

Magic:【創魔】、【魔力付与】、【挑発】、【脱兎】、【衝撃伝達】、【霧の羽を】、【血液強化】、【血狐】、【ラクエウス】、【霧狐】、【血液感染】、【交差する道を】

Equipment:『熊手』、『狭霧の外套』、『狭霧の短洋袴』、『ミストグローブ』、『ミストロングブーツ』、『白霧の狐面』、『霧の社の手編み鈴』

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