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Chapter3 - Episode 30


「ほらぁ!そろそろ諦めたらどう?!」

「そう言われて諦める馬鹿はこんな所で喧嘩売ってないんだよ」


検証の意味を込めて、試してみる事数度。

私はインベントリ内から回復薬を取り出しHPを回復しながら、その結果を頭の中で整理していた。

……うん、大体索敵に関しては分かったかな……。


まず分かった事1つ目。

それは、キザイアを見ている時に『攻撃』魔術を発動する事で索敵魔術は発動する、という事。

これはほぼ間違いない情報だ。

【魔力付与】、【衝撃伝達】、【ラクエウス】、そして【血狐】。

キザイアを見据えた状態でこの4つのうちどれかを発動させた場合は、すぐさま居場所を感知され反撃のように攻撃をしてきた。


変わって、【脱兎】や【霧狐】、動作での【霧の羽を】など、補助魔術を発動させた時は全くと言っていいほど反応しなかった。

もしかすれば相手に作用するタイプの魔術に反応する可能性はあるものの……それでも補助魔術自体は問題なく発動する事が出来る、と分かっただけでも収穫だろう。


【血液感染】に反応するかは……まぁ一応攻撃魔術だから反応はするだろう。

あれは私にも効果が返ってくるタイプの魔術のため、流石に検証に使うことは出来ない。

というか、インベントリ内にある風邪薬の数が残り1つだったため、使うとしても自爆に近い形になってしまうため、検証段階で使いたくはなかったのだ。


そして2つ目。個人的にはこちらが問題だ。

【血狐】と私が直接キザイア自身を攻撃した時に感知された索敵魔術は違うものだとわかった。

というのも、まずまず条件が噛み合わないためだ。

確かに【血狐】が襲い掛かった時、【血狐】と共にキザイアを見ては居たが……私は別段、魔術を発動していない。


つまりは索敵のトリガーとなる行動をしていないのにも関わらず感知されたのだ。

キザイアとの距離か、それともキザイアに危害が及ぶものが近づいた時に発動するタイプの索敵か、それともあの時キザイアが自分で索敵魔術を発動させていたかは分からないものの……頭に入れておいた方がいいだろう。


だが、ここまで分かればある程度は戦いやすくなったはずだ。

それこそ、見ていなければ攻撃魔術を発動させても問題ないのは【ラクエウス】で検証済み。

つまりは色々と悪さは出来るという事。


……【血狐】、頼んだよ。

検証用に発動し近くに控えるように佇んでいた【血狐】を、自分の足元……影を覆うように形状を変化させる。

何の意味があるかと言われれば……それは分からないものの。

これでキザイアの人面影鼠が飛び出してきた時の勢いが削がれればいいな、という思い付きでやってみただけの事。

実際に意味があるならばもっと早くにやっているし、そもそもとして【血狐】自体がキザイアと相性が悪いことが分かってしまったために使っていなかったのだ。


【血狐】は元より、物理系の攻撃には滅法強い。

それこそ振るわれた剣を受け止め、ダメージがほぼ無い状態でぴんぴんしている程度には強い。

しかしながら、先程のような実体のない攻撃……突風などを使った攻撃には弱いのだ。

試してはいないが、灰被りの火の花びらなどにも弱いだろうしダンジョンでいえば『死病蔓延る村』の劣化ボスの攻撃なんかにも弱いだろう。


そもそもとして、今まで戦ってきた相手に物理攻撃持ちが多すぎた。

思い返してみれば、ダンジョンボスに関しても先述した『死病蔓延る村』と『天日照らす砂漠』のアリジゴク形態くらいしかまともに実体のない遠距離攻撃を使ってきた記憶がないし、プレイヤーにしても灰被りを除けばイベントのバトルロイヤル以外では記憶がない。

だからこそ弱点として失念していたというのもある。


「……耳は悪い、かな?」


小さな声でそう呟きながら。

私はそろりそろりと音を立てないように、キザイアへと近づいていく。

当然私自身が生成し設置した罠が大量に存在しているが、霧の中を見通すことができる私にとっては見てから回避すること自体余裕だ。


そうして近づき、トラバサミの1つを反応しないように手に取った。

鎖が地面に繋がれていたものの、設置者である私が触ったからかすぐに持ち運びが出来るように鎖が霧となって掻き消える。

……よし取れた。後は……まぁぶっつけ本番かな。


虚空から生えてくる刃先に関しては、【血狐】を身体に纏おうかとも思ったものの、動いてさえいれば何とかなるため置いておいて。

それ以外に現在見たキザイアの魔術から、ある程度ダメージを与えるまでの道筋は見えてきた。

だが勿論、見えていない札も警戒はしないといけない。

それに関しては誰と戦う時も同じだ。だからこそ、今何がくるかとかを考えていても仕方がない。


しかしながら、系統くらいは考える事は出来る。

幸いにして、私は詳しくはなかったもののフィッシュ達からキザイアの名前の由来、そしてその由来に関係する体系の話を移動中にある程度までは教えてもらう事が出来た。

それに加え、相手が使っている魔術……突風はどうなのかは分からないものの、人面の鼠を模したものなんてものを使っているのだ。習得している魔術もそれに似たような系統で集めていると考えてもいいのではないだろうか。


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