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Chapter3 - Episode 25


「で、相談とは?僕は別にシステム面を熟知してるわけじゃないんでアドバイス出来る事も少ないとは思うんですが」

「いやまぁ、そこまで難しい話をしたいわけじゃないです。……1対1での戦い、所謂決闘みたいなシステムってこのゲームにあったりするんですか?そんなに興味なくて調べてなかったんですけど」

「あぁ、成程……」


バトルールに聞きたいのはシステムの中でも、対人戦。

他のゲームで言う決闘やPvPなんかと言われるコンテンツの事だ。

何故彼に聞くかと言えば……近くに対人戦が好きそうなフィッシュが居るため、そういうものが存在していれば確実に内容自体は覚えているだろうからだ。


もう1人、知識としては知っていそうな灰被りに聞かなかった理由は、彼女には周囲の警戒をフィッシュと共に行ってもらいたかったため。

フィッシュはそもそも元より選択肢にすら挙がっていない。


「決闘、というよりはこのゲームで言うとデュエルシステムというものが存在してます。まぁ直訳してるだけなんで同じ何ですが」

「どんなのが出来るんです?」

「やろうと思えば色々と。魔術による攻撃のみしか有効判定にならないルールや、相手のHPを一定値削りきるルール、相手を殺しきれば勝ちのルールもあれば、それこそ平和にじゃんけんで決めるルールなんてものも存在してます」


実際にやってみましょうか、と彼はウィンドウを出現させた。


「このデュエルシステムの起動自体は相手の承認さえあれば簡単にできます。その後、自分達の目的に沿ってルールを決めるわけですね」

「目的に沿って、というのは?」

「決闘というのは、大抵何かを決める時に発生する事柄です。例えば相手との優劣を決定したい、だったりだとか……このゲームで言うなら、モブからのドロップの取り分なんかでしょうか」


彼の手元にあるウィンドウを見せてもらうと、デュエルシステムのルールがずらりと並んだ画面が表示されていた。

この中から自身と相手の目的に沿ったルールを決める、らしい。

イマイチピンと来ていなかったものの、ルールを読んでいくと次第にどういうことか理解できた。


「あぁ、成程。ルールの内容が重くなればなるほど相手に要求出来る範囲が広がっていくと」

「そういうことです。じゃんけんで勝つと素材の取り分程度しか決める事が出来ませんが……それこそ、デスペナを食らうHP全損ルールなんかだと、一定範囲にシステム的に近づけないように制限を掛けたりすることができるわけですね」

「しかも自身も同意してから決闘するから、後から文句を言った所で全部意味がないと……」


キザイアの顔面を殴るためだけに、周りに被害が出ないようにと考え教えてもらっているシステムだが、中々にえげつないことが出来てしまいそうだ。

それこそ、詐欺師がこのゲームをやったらこのシステムだけで色々悪さが出来てしまいそうなほどに。


「まぁそういうことが無いように、しっかりと事前にお互いでどうするのかを決めるようにはなってるんですよ。決闘開始前に勝者は敗者に何を要求するのかを設定してAIがそれを判断、問題なければカウントダウン後に決闘開始、って感じで」

「まぁそうしてないと色々と面倒ですからね。うん、ありがとうございます」


礼を言い、デュエルシステムのウィンドウを自分でも開く。

様々な項目がある中で、やはり目を惹くのはデスペナ付与HP全損のルールだろうか。


相手に勝つには相手のHPを全損させる以外になく、全損させられればデスペナが一定時間付与され決闘にも負けるというこのルール。

これの設定をした運営スタッフはかなり重めなルールだと考えたのか、このルールの勝者はある程度の事ならば敗者に要求することが出来るようだ。


といっても、私にとっては特に使う必要のないルールでもある。

キザイアが決闘を受けてくれるかは分からないものの、私の目的はそのキザイアの顔面を1発でも良いからぶん殴ることなのだから、別段HPを全損させたり色々な事を要求したいわけでもない。


「な、なぁ、今大丈夫か?」

「ん?どしたの?キザイアさんの居場所が分かった?」

「あぁ。アイツは今、【カムプス】から更に南下していってるらしい。第3マップの方に向かってるみたいだ」

「第3マップ……あぁ、上位陣の方ではもうそこまで進んでるんだっけ」


掲示板でちらほらと話題に出ていたのを見た記憶がある。

基本的にはソロでダンジョンの攻略などを普段はしている私は、自力が足りない事、それに他の街なども回ってみたいと考えているため、まだ行く予定すらなかった領域だ。


上位陣も上位陣で、数人の……それこそ今私達の代わりに周囲を警戒してくれている灰被りのようなプレイヤーを除き、ほとんどが死に体の状態で街を解放したという話を聞いているため猶更だ。

私が行くなら取得魔術の半分以上を等級強化しなければ厳しいだろうと考えていたのだが……どうやら計画を変更さざるを得ないらしい。


「よし、じゃあ行きましょうか!」


灰被りとフィッシュに声を掛け、『駆除班』の3人を解放してから【始まりの街】へと戻る。

どうせ襲われても拘束出来る事が分かったのだ、荷物になるようなものは要らない。


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