目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
Chapter3 - Episode 20


周辺、とはいっても【始まりの街】を中心にした【平原】に存在する救援を必要とするダンジョンへと移動し、そこのボス奪還戦に戦力として参加する。

主にダンジョンに出現するモブは、『惑い霧の森』の辻神のように何かしらによって能力が制限されていたり、動きが単調なモノばかりになっていたため苦戦はしなかった。


だがやはり、『対話』が出来る程度には知性が元より高かったからかボスには時間が掛かってしまう。

その中でも気になったのが、どのボスにも『祟霧の遺狐』のような黒い何かが纏わりついていたことだ。

それにボスの名称にも決まったように『祟』という文字が付けられていた。


ここまで揃っていれば、流石に頭の悪い私でも分かる。

恐らくはあの黒い何かは祟りという概念的なものが視覚化されたものなのだろう。


【ダンジョンクエスト『ダンジョン内に出現した犬神を討伐せよ』をクリアしました】

【参加人数集計……31人】

【報酬ランクを決定します。行動評価集計……完了】

【クエストクリア報酬をそれぞれのインベントリへと送信しました】


「ふぅーこれで終わりかな?」

「そうみたいですね……ここで何個目でしたっけ」

「確かー……4個目かな?うん、中々な数だしそろそろ犯人も分かりやすくなってきたねぇ」

「あっちょっと先輩。声が大きいです。まだ確定したわけじゃないんですから」


今も『祟土の岩人形』というボスが倒され、そしてその身体から逃げ出すように出てきた犬の頭だけのモブ……所謂、犬神と言われる憑き物が遠距離系の攻撃によって討伐された。

毎回毎回入る報酬は『祟霧の結晶』や『祟土の結晶』などと言う良く分からないアイテムだったため、現在しっかり詳細を確かめることはしていない。

どうせこの騒動が終わってからならいくらでも時間はあるのだ。それに名前からして色々な種類があることが予想されるため、出来る限りサンプルが多くなってから確かめた方がいいだろう。


「次は?」

「えーっと……あぁ、この近くですね。『偽装溢れる農村』です。主な出現モブは牛や羊なんかの家畜系。ボスは巨大な1匹の犬らしいです」

「……家畜で羊が居て犬って事は、イメージは牧羊犬?」

「恐らくは」


何とも平和なイメージのダンジョンだろう。

その前についている『偽装溢れる』という特性の所為でそのイメージも偽装されたものかと思ってしまうが。


「特性はー……あぁ、成程。可哀想になるくらい『農村』と噛み合ってないですね」

「トラップが感知されなくなる、モブの姿が戦闘に入るまでは見えなくなる……で、『農村』が単純にフィールドが広くなる代わりにトラップが設置されなくなる……うん、だからこそ『対話』にして偽装系の素材を集めようとしたわけだ。納得だねぇ。楽だもん」

「特性が噛み合う方が珍しい部類なので仕方ないですね。雨が降り続ける砂漠とかもあるので」

「それはそれで地面がぬかるんで動きにくそう」


そんな雑談をしながら、周囲に居るプレイヤー達に軽く会釈した後、私達は移動を開始した。

十分他のプレイヤー達から離れた後、薄く霧を発生させ索敵用に【霧狐】を発動させてから、バトルールに本命の質問を行う。


「……で、それは管轄?管轄外?」

「勿論『駆除班』の管轄外、アリアドネさんやメウラさんのようなゲーム外のチームに所属してないプレイヤーの管理するダンジョンです」

「正直十分な証拠だとは思うけどねぇ?灰被りさんはどう思う?」

「まぁ……そうですね。彼らはボスなどを狩るのが目的のチームなので、今回のような事が出来ると知れば……やるでしょう。実際他のゲームでもやりましたからね」

「あ、もう前科持ちだったんですねぇ」


私が普段接している『駆除班』のメンバーはまだ良い方の部類なのだろう。

それ以外の印象がないため、割と頼ったりもしていたが……どうやら彼らに頼るのはあまり良い事とは言えないようだ。


「本当に初見でのボス討伐なんかや、高難度のダンジョン攻略なんかだと頼りにはなるんですが、目的が目的なのでその後が本当に……特にこのゲームだとボス奪還戦なんてものが存在しているのが分かってしまったので、これからも続くでしょうね。今回が始まりなだけで」

「……暗黙の了解、というかマナーの問題にはなってきそうだけどねー。まぁ言ってきかないなら殴って聞かせるしかないわけで。ほら、おいでなすった」


フィッシュが言った瞬間、私はその場から後ろへと跳び退いた。

瞬間、私の居た位置に複数の石礫が降り注ぐ。


ここは【平原】、出現するモブはイニティラビットと、たまに誰かが失敗して逃がした元ボスの2種程度で、石礫を降らせるような攻撃をしてくるモブは現在存在していない。

つまりこれは……プレイヤーによる攻撃魔術。


「チッ、避けられちまったか」

「おいおい誰だよ、一番やりやすそうな人からって言ったの」

「相手は対人イベント出場者だ。元から避けられるのは想定しておけと言っただろう。……やぁ、アリアドネさん、元気?」

「……君達、こうして会うと流石に多少はショックを受けるんだけど?」

「それは申し訳ない。でもこっちもやりたい事をやってるだけだから諦めてほしいかなって」


声のする方へと視線を向ける。

するとそこには私も話をしたことがある、『惑い霧の森』によく屯している『駆除班』のメンバーが3人立っていた。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?