目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
Chapter3 - Episode 17


「おっけー、ちょっと試したい事があるからちょっと待ってね。【創魔】」

『クフッ、良いでしょう良いでしょう!待ちますともッ!』


何やらテンションの上がったアルファを前に、私は【創魔】を発動させる。

選ぶ素材は『霧霊狐の霧発器官』と『辻神の布』、選んだ魔導書は今回は【白紙】だ。

そして『詳細』ではなく、今回は『自動創造』をタッチし、【補助行使】に設定して魔術を創造させる。

自分で諸々を考えない理由は、単純にどれが正解に近いのか分からないため。

そうして出来上がったのは、この魔術だ。


【魔術を創造しました】

【自動創造のため、名称が自動設定されました】

【自動創造のため、行使方法が自動設定されました】


――――――――――

交差する道をクルーセス

種別:補助

等級:初級

行使:発声

発動待機時間:60s

効果:一番最近に通ったことのある十字路にのみ転移することが出来る

   霧が存在する場合、それらを使い発動を補助する事が可能

転移時:自身の最大HPの80%を消費する

――――――――――


「おー本当に出来た出来た。どう?」

『すっばらしいィ!では、私の仕事はなくなったようですので、ここらで。アリアドネ様の今後のプレイに幸あらん事を』


私の方に礼をして、そのまま虚空へと消えていくアルファを見送りながら。

私は出来てしまった魔術の詳細をもう一度読んだ。

……どこに転移するのか全く分かんない……。


新たな問題が発生しているような気がするものの。

私はとりあえず、発動させてみることにした。

何処に転移するか覚えていないため、出来れば街の何処かが良いなと思いつつ……魔術の宣言を行う。


「【交差する道を】……へっ?」


瞬間、私の足元に穴が開き……私は下へと落下していく。

穴の中は暗く、何も見通すことは出来ない。


【行動情報取得……取得完了しました】

【転移先指定、情報保護完了】

【転移完了します】


そんな通知が流れたかと思えば、突然私の視界に光がさした。

足に地面の感触が伝わり、思わずたたらを踏んでしまう。

周囲には多くの人やプレイヤーらしき人達がせわしなく動いていることから、ここが街なのが分かった。

……成功、というか運良いなぁ私。


どこの十字路に出たのかは分からない。

しかしながら、行った事のある街が少ない私は何処に出たのかすぐに理解する事が出来た。


「【始まりの街】……帰ってこれたァ……」


肩を落とし、安堵しようとして思い出す。

そういえば私は『惑い霧の森』で【ボス奪還戦】なんていうものに参加していたのではなかっただろうか、と。

流石にずっと私が腹から出てこないのはまずいだろう。

パーティ表示を見ると、そこには私1人の名前しかない。転移する前まではきちんと他の名前がそこに表示されていたはず。つまりは転移すると同時にパーティから抜けてしまったのだろう。


減った体力を回復薬によって無理矢理回復させながら、私は少ないMPを絞り出すように魔術を行使し、その場から離脱するための準備を始める。

現在位置が街のどの辺りかはよく分かっていないものの、こちらにはマップ機能が存在するのだ。

目的地である『惑い霧の森』にマップ上でピン……強調表示させるように設定し、そちらの方向へと走り出した。



『ようやく戻ったか、狐の女子よ』

「遅かったなアリアドネ。こっちはもう終わってんぞ」

「おかえりなさい」

「あは、良いところは持っていっちゃったぜ。そっちもそっちで大変だったみたいだけどねぇ」


【衝撃伝達】を連続で使用しながら、自分の中で出来る限りの最高速でボスエリアに戻った私を待っていたのは、どこをどう見ても正常に戻っている『白霧の森狐』とメウラ達だった。


「……え?どういうこと?」

『……思考を放棄するのではない。薄々察していただろう?』

「あー……えっと?いやまぁ、あんたが意識ありそうだなってのは分かってたけど、それにしたってえぇ……?」


呆れたような声を出す『白霧の森狐』に、思わず素で返答してしまうものの。

この弛緩した空気から分かるのはただ1つ。

どうやら【ボス奪還戦】は無事に終了したようだ、ということだ。


「とりあえず終わったなら良かった……すいません灰被りさん。私が連れ回したのに、その私がどっか行っちゃって」

「あぁ、いえ。大丈夫ですよ。慣れてるので」

「慣れてる……すいません、次から気を付けます」


彼女の言葉から色々感じ取ることが出来たため、もう一度きちんと頭を下げて謝罪しておいた。


「よし、色々と終わった所で……なんで狐はそのまま残ってんの?仕事放棄?」

『……今回の件に関しての話をしてやろうかと思っていたのだが必要ないようだな?』

「あーごめんごめん、ありがとう、そのまま説明してくれると助かるから光になって消えないで」

『分かればいい、分かれば』


そうして種明かしのような、どうして辻神のような者がこのダンジョンに迷い込んでしまったのかという説明が巨大な狐の口から語られることとなった。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?