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Chapter3 - Episode 10


「ごめん!皆何があったか教えてもらえる?!」

「あっ、やっときた。遅いっすよアリアドネさん……って、灰被りさんまでいるじゃないですか」

「どうも」


いつものように劣化ボスエリアへと屯していた『駆除班』の面々、そして数人の見知らぬ初心者らしきプレイヤー達に事情を聞いていく。

『駆除班』の面々とはたまに共に狩りを行う仲の為、ある程度は打ち解けているものの……初心者達にとっては今の状況自体緊張するのだろう。少しばかり身体や声が震えていた。


「ここにいるの、全員アリアドネさんとフレンドになってないからメッセージ送れなくて」

「あー。ごめん、あとで代表1人とフレンドになっておこうか。そっちの方が後々も楽そうだしね……とと、大体これくらいかな?ありがとう」


どうやらあまりフレンドを作ろうとしない私の性格が出たのか、緊急事態ともいうべきこの状態でも私に連絡がつかなかったようだ。

……割と人との交流はあるのに、フレンドはまだ5人程度だしねぇ。

今後は少しばかりフレンドを増やしておいて連絡手段を増やしておいた方がいいだろう。


「っとと、状況をまとめると……突然劣化ボスに挑めなくなったと」

「そうです。挑もうとすると【現在イベント進行中の為、劣化ボスを出現させることは出来ません】って通知が流れますね」

「オーケィ、灰被りさん」

「了解……はい、流れましたね」


教えてもらった事をその場でしっかりと確認しながら、何が起きているのかを把握していく。

緊急事態であることから一応メウラ達にもメッセージを送り、掲示板の方にも『惑い霧の森』に緊急事態が発生した旨、危ないので初心者が近づかないようにしてほしいと書き込んでおいた。

流石に初心者用のダンジョンと謳っているのに、難度5の場所へと無理に突っ込ませることは出来ない。


「ダンジョンの管理側だけど……特にイベントの進行関係の通知は流れてない。ってことは誰かがダンジョン内で変な事してるって事か……?でもそれだけで難度が一気に上がるかな」

「私はダンジョンについては詳しくないので……『駆除班』の方々は何かダンジョンの難度が一気に上がる原因など知っていませんか?」

「原因……原因か……」


一応色々なシステムメニューを開き確認していく。

無いとは思うがクエスト関係の一覧を開き……そこで見知らぬクエストが追加されているのに気が付いた。

名称は『ダンジョン内に出現した辻神を討伐せよ』。

……これじゃん。


「あぁ、思い出した。何かしらによってダンジョンの難度が一時的に上がることはありますね。例えば『駆除班うち』で管理してる『死病蔓延る村』だと、ゾンビが突然変異してボス級になったりとかしたらしいです」

「成程……アリアドネさんどうしました?」

「いえ、今クエスト一覧見てたらそれらしいのがいつの間にか追加されててですね」


そう言いながら、私は発見したクエストの詳細を開き、周りに見えるように表示した。


――――――――――

『ダンジョン内に出現した辻神を討伐せよ』


何処かからか迷いこんだ辻神を討伐せよ

放っておけば、徐々にダンジョンが侵食されてしまう


種別:ダンジョンクエスト

進行度:23%

――――――――――


「完全にこれですね」

「これ、通知来なかったんですか?もろ原因じゃないですか」

「来てないね。……突発系のクエストだから?なんでだろう……まぁとりあえず。この森の中の何処かに辻神が出たってわけか」


辻神。

辻と呼ばれる、道が交差している場所に棲むと言われている災いをもたらす妖怪だ。

元より辻神は異界に棲むと言われ、昔から道が交差している場所は異界に通じている……という話からそこに棲むとされているようだが……この森の中には道なんてものはない。

あって精々獣道か、ボスエリアの方の神社に続く道程度だろう。

ではどうしてそんな妖怪が出現したのか、と言われれば。


「……これ、霧の所為か……」


異界と現世の境界とされている霧。

それが今回は悪く働いてしまったのだろう。

異界と繋がるのであれば、イコールで異界に棲むと言われる妖怪が迷い込んできてもおかしくはない。

クエストの通知が来ないのだけは納得できないが。


「『駆除班』の人って、近くに居るメンバー呼べたりする?」

「呼べますね、どれくらい呼びます?」

「……最低でも難度4のダンジョンを攻略した事ある人達で。ボスまでじゃなく道中なら問題なく倒せるくらいなら問題ないかな」

「了解っす、連絡とります」

「灰被りさんは……一応私と一緒に森の中の探索及び辻神を見つけ次第討伐、でいいですか?」

「異論ないです。ここならアリアドネさんに色々と任せた方が良いでしょうしね」


やるべき事が定まったため、周囲に指示を出していく。

一番頼りになるであろう『駆除班』のメンバーも出来る限りの協力をしてくれるらしいため、かなり心強いだろう。

メッセージを確認すればメウラ達も掲示板を見ていたのか、既にこちらへと向かってきてくれているそうで、そこまでしないうちに合流できるようだ。

こうして、私達の大々的な辻神捜索が始まった。


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