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Chapter3 - Episode 3


「うーん、まぁ創っちゃっていいんじゃないですか?」

「ほう、その心は?」

「勿論適当に言っているのではなくて、単純に使える手札を増やすというのは戦闘でも戦闘以外でも出来る事が増えるというメリットがあるんですよ。それに別段魔術を創った所でデメリットは……まぁ習得限界数に近づくというのがありますけど、それくらいしかないでしょう?」

「あー……確かにそう言われるとそうですね」

「えぇ。ですから私の場合は割と欲しくなったら創ってます。ただ使ってる素材が割と限られてるんで似たような魔術ばかりになってるのが玉に瑕なんですが……」


確かに灰被りの言う通り、彼女が行使する魔術は似通ったものが多い。

イベントで私相手に見せた氷の茨に、火の花弁、岩雪崩に泥沼発生。

そして今この『天日照らす砂漠』の攻略中に見せてくれたのは、氷の花を発生させる魔術に、氷の雪崩など……他の魔術と属性が違うだけでほぼ似ているようなものだ。

だがだからこそ色々な状況に陥ってもいつもと同じ勝手で魔術を行使できるとも彼女は言う。


「成程。よし、じゃあ創っちゃいますか」

「あ、それなら私は離れておいた方がいいですか?」

「いえいいですよ。どうせすぐに使うんで、詳細さえ見られなかったら大丈夫ですし」


そう言いながらイベント報酬のダンジョン選択で『死病蔓延る村』を選び、そのまま流れる通知を見ながら素材を選んで【創魔】を発動させる。

今回使うのは『菌死体の唾液』という、多分ゾンビ系のモブからのドロップであろう素材。

素材元になったモブは1度見た事はあるものの、戦闘自体は行っていないためどんな性質を持っている素材なのか全くわからないが、まぁ良いだろう。ある意味でいい勉強になりそうだから。


私の目の前に3冊の魔導書が出現し……どうせだからと私は【血術の魔導書】を選択した。

特に意味はない、気分で決めただけである。


「ふむ……他人の【創魔】だと魔導書は見えないみたいですね」

「あ、そうなんです?」

「えぇ、こちらからはただ手元が光っているようにしか見えませんね」

「へぇー……きちんとそこらへんは隠されてるんだ」


全く意識していなかったが、思えば灰被りの前で【創魔】を使うという事はイコールで私の持っている魔術の系統がバレるという事。

今回はシステム的に保護されたようだが、少しは気を付けないといけないだろう。


『起動方法』は【発声行使】。

『種別』は【攻撃行使】を選び、次に『効果』を選ぼうとしたと所で手が止まった。

気になったことは先駆者に聞いた方がいいだろう。


「灰被りさんは範囲攻撃系の魔術創る時って効果はどれ選んだりしてます?」

「そうですね……その時に寄る、といえばいいでしょうけど、素材との相性も見たりしてますね。今回はそのままイベント報酬から選んだんですよね?」

「えぇ」

「元となったモブと戦った事は?」

「見た事がある程度ですね。どんな動きをするかってくらいは頭に入ってます」

「成程……なら【放射状スプレッド】とかですかね。あれは無難に範囲攻撃に出来る効果なので。他だと……物には寄りますが、【連鎖チェイン】なんかも範囲攻撃になりやすいそうですよ」


彼女の声に頷きつつ、私は手元で【連鎖チェイン】を選択した。

どうせアドバイスを貰っているのだ、そこまで奇抜な『効果』を選ぶ必要はないし、この場合使いやすさの方を重視した方がいいだろうから。

いつものように魔導書が光り輝き、魔術の創造が完了する。


【魔術を創造しました】

【名称を決めてください】


――――――――――

【血術『名称未設定』】

種別:血術・攻撃

等級:初級

行使:発声

効果:相手の血液を侵す病魔を射出する

   命中した相手を中心に5m範囲に存在する者に対して、弱体した状態で同じ効果を与える

ダメージ:病魔 1ダメージ

     【感染症:血液】 20ダメージ/s

――――――――――

――――――――――

Tips:【感染症】

罹ってしまうと一定確率で周囲のこのデバフに罹っていない相手にも効果が表れる

種類によって効果が異なるため注意が必要となる

時間経過、店売りの風邪薬を服用することで回復可能

――――――――――


「あー……」

「どうしました?」

「いえ、これは私の素材選びが悪かったかな、と」

「あぁ、成程……まぁそれは仕方ないです。一応範囲攻撃にはなったんでしょう?」

「えぇ、一応は」


名称を【血液感染アンフェクシオン】に設定しておく。

少し試す必要はあるだろうが、先に確かめておいた方が良い事を聞くべきだろう。


「あの、灰被りさん」

「なんでしょう?」

「風邪薬とかって……持ってたりします?」

「は?」


何言ってんだこいつ、という表情を浮かべる彼女の前で私は目を逸らし続ける事しかできなかった。


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