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Chapter2 - Episode 22


もう1つ、等級強化と共にしれっとした顔で紛れ込んでいる通知を見て顔を顰める。

私のランクが『novie magi』になったという通知だ。

今まで私のランクは『beginner』、つまりは初心者だったのだが……これによって所謂新米魔術師になったらしい。


新米として認められるのに『中級』魔術を3つ習得しなければならない所はまぁいいのだが。

今まで私はランクだけ見ると魔術師として認められていなかったようだ。


「で、機能追加だっけ……なんだろうこれ」


オンラインヘルプを確認されたし、と通知にご丁寧に書かれているためメニューから呼び出し確認していく。

ご丁寧に追加されたと思われる項目には『New!』という光る文字が付けられており、なんとも分かりやすい。


「……図書館の開放?」


色々と追加されたものはある。

NPCの店から買える商品が増えたりだとか、NPCからクエストを投げつけられる頻度が増えたりだと本当に色々だ。

しかしながら私がその中で気になったのは、施設関係の機能追加。

図書館に行けるようになった……らしい。


「えっ、【始まりの街】に図書館なんてあったの」


正直な話、私が街を散策している時に図書館らしき施設を見た事がない。

いや或いは見てはいたが、それが図書館だとは思わなかったと考えるべきか。

どちらにせよ行ってみる価値はあるだろう。

図書館……本が大量に存在する場所なんて、魔術に関係のある本が大量にあるに決まっているのだから。



「ようこそ、ウェールス図書館へ。私達は貴女様を歓迎いたします」


マップ機能に頼って街の中を彷徨う事数十分。

よく『惑い霧の森』で会い顔見知りになった『駆除班』のプレイヤーに案内され、ようやっと図書館へと辿り着くことが出来た。

中に入ってみると、現実との違いに一瞬戸惑いを隠せなかった。


本が勝手に宙を飛び、本棚に収納される。

本棚の数も尋常じゃなく、天井が見えないほどには多い。

それに比例して本の数も増えるのだから……その数は計り知れない。


「この図書館って、他の街にもあったり?」

「大きなものならば【始まりの街】以外だと……この街から北に進んだ先にある【クートゥ】という街に。もっと小さい場所ならばどの街にも存在していますよ」

「成程……ちなみに文字を勉強するにはどこの本棚に行けばいい?」

「あぁそれならば……こちらの本を」


歓迎してくれた司書に話を聞いていると、本を1冊手渡された。

本の表紙は……『魔術言語入門』。

分かりやすく求めていたものを差し出してきてくれた。


「ありがとう、これ貸し出しも出来る?」

「いえ、貸出する必要はありません。そちらの本は所謂お通しのようなもので、自由に持ち帰っていただいて構いません」

「ほう……一応聞くけど、この本を1冊作るのに掛かるコストってどれくらいなの?」

「そこまで掛かりませんよ。精々が装丁用の皮と紙くらいのもので、書き記すのは全てそれ専用の魔術が存在しますので」

「成程……よし、ありがとう。文字読めるようになったらまた来ます」

「貴女の文学生活に幸あれ」


こうして私は図書館からすぐに外に出た。

目当ての本がまさか貸し出しどころか貰えてしまうとは思わなかったために、空き時間も確保することができてしまったため……そのまま宿の部屋に戻り、早速魔術言語について勉強を始めることにする。



「……うーん、難しくはないけど……何ともいえないかな」


本を開き、その内容を読んでみると……その内容自体はそこまで難しくはなかった。

そも、文字の書き方よりも前に日本語で魔術言語の成り立ちを読まされているのだから、何とも言えないという感想も出てくるだろう。

そして実際の文字の書き方、文法だなんだと言うところに差し掛かったタイミングで、本の上にポンという軽い電子音と共にゲージが出現した。


「解読、読み込み中……あー、時間が取れない人用の自動読み込み機能か」


一応オンラインヘルプを開き、該当する項目を確認してみると。

この自動読み込み機能が完了すると、内容を理解していなくともそれに関する事を実行しようとした時に視界の隅にTipsという形で抜粋された内容が表示されるというもの。

一応普通に読んで内容を理解した上でも表示されるみたいだが、その場合は補足程度の簡単なものになるらしい。


……まぁ頑張って理解してみようかな。時間は余ってるわけだし?

誰に言うでもなく、自分の心の中で呟いて本をそのまま読み進めていく。

どうやら私が読み進める度にゲージも進むらしく、一度読み終えると同時に消えてしまった。

ただ、ゲージが消えたからといって言語の勉強が終わったわけではない。

こういったものは繰り返し読み、そして使わない限りはまともに扱えないのだから。


その日、私は精神的に疲労した状態でログアウトし、そのまますぐに眠りについた。

魔術言語の勉強は……ある程度進んだとだけ、言っておこう。

言語習得までの道のりは長い。


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