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Chapter2 - Episode 18


それなりに劣化『白霧の森狐』を狩り終えた後。

メウラに連絡を入れてから、【始まりの街】の宿で私はまたもインベントリ内の素材のリストと睨めっこしていた。

今回は単純に、新しい魔術を創るために使う素材が決められないというだけなのだが。


「なんで眼球シリーズが2つも……しかもどっちもボス素材だしなぁ……」


そう、前回戦ったオリジナルのボスである『万蝕の遺人形』と、劣化ボスである『白霧の森狐』。

この2つのボス達からドロップした眼球という素材のどちらを使うかという所で迷っているのだ。

『万蝕の遺人形』の眼球……『遺人形の目玉』は、戦闘中の出来事を考慮にいれるのであれば、恐らく罠設置系の魔術を創る素材となってくれる。

『白霧の森狐』の眼球……『霧霊狐の眼球』は、詳細は分からないものの、霧に関係する魔術が創れることは分かるため、私の装備や魔術と相性が良い素材なのだ。


戦闘面を考えるのならば、手数を増やせるであろう『遺人形の目玉』を選ぶべきなのだろうが……このゲームには魔術体系というものがあると知ってしまった後では、『もしかしたら霧関係の魔術体系もあるのでは?』という考えが頭を過って仕方がない。


「うーん……よし、目を瞑ってタッチした方にしよう」


結論、どちらでも問題はないのだ。

習得限界数にはまだまだ余裕があるし、無闇矢鱈に魔術を増やす予定もないため2つの内どちらかが選ばれても別に『あーこっちかぁ。もう一つもあとで創ろ』となるだけなのだから。


そんなこんなで【創魔】を発動させてみると。

【白紙の魔導書】、【血術の魔導書】の他に1枚のウィンドウが出現した。

何かと思いそれを読んでみると、


「……15レべになったから素材を2つまで1度に選べますぅー……?」


との事。

つまり、知らなかったとは言え……すさまじく無駄な時間を私は過ごしていた、ということらしかった。


「はあぁ……まぁいいや。どっちも選ぼう。うん、今回はもう勿体ないとか関係ない。今の私を止められると思うな……」


少しばかり下がったテンションのまま、私はボス素材の眼球2つと【白紙の魔導書】を選び魔術創造を開始した。

【血術の魔導書】を使わない理由は特にはないが……どうせ使うのならば血に関係ある素材を使いたいなぁと思ったくらいの考えしかない。


『起動方法』は【発声行使】。痛い目に遭った後ではあるものの……単純に【動作行使】よりも使いやすいのは事実なのだ。出来れば無詠唱みたいな感じの方がカッコいいので、早めに全部等級を上げて【動作行使】も加える予定だが。

今回作るのは攻撃用の魔術……出来れば罠設置系が良いな、という淡い期待に沿って『種別』は【攻撃行使】を選ぶ。


「あとは目玉の『効果』……目玉だけに」


独りで何を言っているんだろうと少しだけ悲しくなりながら、私はどれを選ぶか吟味していく。

【創魔】がいくら素材の性質に引っ張られるといっても、『効果』もしっかりと魔術の仕様に関わってくるのだから、適当に選ぶと後が面倒だ。


「うーん、こっちには『生み出す』のアイコンはやっぱりないか。あったらそれだったんだけど……いや、『見た相手に』でも良いのかな……?アレは【霧の羽を】だったからこその縛りだろうし……」


数分悩んだ末に、私は【霧の羽を】と同じ『見た相手に』を選択し、その後の確認も承認した。


【魔術を創造しました】

【名称を決めてください】


――――――――――

【名称未設定】

種別:攻撃

等級:初級

行使:発声

制限:【霧のない場所では行使できない】

効果:2秒注視した場所に対し、罠を設置する

   敵対者を注視した場合、周囲の霧が敵対者へと襲い掛かる


『罠』

耐久:10

効果:事前にセットした罠が設置される

   1.『トラバサミ』

   2.『落とし穴』

――――――――――


何やら突っ込むべき所が多々あるような気がするが……とりあえずは喜んでいいだろう。

欲しい欲しいと考えていた罠設置型の魔術なのだから。


「……えぇっと、とりあえず【ラクエウス】で」


そのまま罠や霧という言葉を使わずに、ラテン語でスネア……兎なんかを獲る時に使われるトラップを意味する単語を設定する。

……まぁうろ覚えだけど多分あってるでしょ。多分。

別にあっていなかったとしても、それはそれでPvPならば相手を困惑させることが出来るためそれでいい。


「なんで制限がもう付いてるんだろうなぁ……2つもボス素材使ったからかな。でも初級……等級強化で罠の種類が追加されるタイプか……下手に戦闘以外使用禁止とかに設定すると困りそうだなぁ……」


2秒注視しなければならない、という点については置いておく。

そもそも戦闘中に敵から目を離すことなど早々ないし、意図的に目を離すような奴は大概頭がおかしい上位層の人間だ。

私はそんな事が出来るほどプレイスキルが高いわけじゃないが、そもそもとして使用するのは霧の中。

私には『白霧の狐面』があるため障害にすらなっていない。

とりあえず検証は後日『白霧の森狐』で行うことにして、メウラをゆっくり待つことにした。


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