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Chapter2 - Episode 16


翌日。

私は【カムプス】の宿の部屋にて、手に入れた素材と睨めっこしていた。

『蝕み罠の遺跡』のボスである『万蝕の遺人形』。

アレから手に入った素材は間違いなく現状では優秀なものだろう。

特に、ボスが使っていた罠設置能力。あれが魔術で使えるのならば戦闘がぐっと楽になるのは間違いない。


しかしながら、その能力がどちらの……【攻撃行使】と【補助行使】のどちらの分類なのかが分からないのだ。

否、ほぼ間違いなく【攻撃行使】なのだろうとは考えているものの、ゲームによっては罠の設置と言う行為はサポーターやシーフと呼ばれる者達が行う戦闘補助だったりもする。

何処かのゲームでは罠1つで軍を半壊させたりする英雄もいるらしいが……ほとんどは補助の為だろう。


「……うーん。いやまぁ先に等級強化をするべきなのはわかってるんだけど」


今回も活躍してくれた【霧の羽を】の等級強化。

こちらは既に素材が集まりきっているため問題ないし、やろうと思えば今すぐにでも開始出来る程度には準備も整っている。

【創魔】によって新たな魔術を創って出来る事を増やしてもいいが、先にやるべきはこちらだろう。


息を吐き、習得魔術一覧を呼び出し【霧の羽を】の等級強化を開始する。


【魔術の等級強化が選択されました】

【【霧の羽を】の等級は現在『初級』となっています】

【習得者のインベントリ及び、行動データを参照します……適合アイテム確認】

【『霧鮫の霧発器官』、『霧鼠の毛皮』が規定数必要となります……規定数確認】

【『霧鮫の霧発器官』が上位素材『霧霊狐の霧発器官』に置き換えられました】

【【霧の羽を】の強化を開始します】


「おっと」


通知を流し見していたが、流石に見過ごせない文章があったため目を留める。

どうやら、上位素材……元々要求されていた素材よりも質が良い素材があれば、勝手にシステム側が素材を置き換えてしまうらしい。

別に何かに使う予定もないし、特に貴重というわけでもなかったため別に問題はないが、そういう機能があるというのは覚えておいた方がいいかもしれない。


そして前回のように【白紙の魔導書】が出現し、やはり見覚えのあるページが開かれる。

……この言語も、解析とかすれば自分で色々書き込めるのかな。

そんなことを考えながら、私の身体から白い光の粒子がページへと吸い込まれていくのをぼうっと眺めていた。

続いて巨大な羽ペン……【追記の羽ペン】が前回と同じように出現した。

前と同じように先から血が滴っているのを見ていると、少しだけ気になることが出来てしまった。


「……これって、【血術】が元になってるのかな。血で誓約って中々にそれっぽいし」


私の習得している魔術体系の1つである【血術】。

血を扱い魔術を行使するその体系の技術が、この【追記の羽ペン】には使われているのではないだろうか。

そうなってくると、目の前の【白紙の魔導書】に書き込むというのも【血術】に関係ある技術が使われている可能性が高い。


「回復薬は……よし、まだ残ってる。こういうのは試してみるのが吉だよね。【血狐】」


私は手に【追記の羽ペン】を握ったまま、【血狐】を発動する。

瞬間、少しばかりいつもよりも【血狐】が出現するまで時間が掛かったような気がしたものの、無事魔術は発動した。

回復薬を飲み干しながら、私はそのまま足元に待機している【血狐】に質問するように聞いてみた。

ページは……一応開くことが出来たため、【魔術付与】のページを開いた状態でだ。


「もしかして、この本に書かれてる文字って動かせたりする?」


その問いに【血狐】は少しだけ【白紙の魔導書】を注視するように動きを止めると、すぐに頭を軽く振った。

だが、その後にべちゃべちゃと前脚を私の左足に叩きつけているため、何か伝えたいことがあるのだろう。

こういう時に声帯……というよりは魔導生成物と意思疎通が出来る手段が必要だと思ってしまう。


「……うーん。私なら動かせる、もしくは【血狐】を等級強化すれば出来る……かなぁ。とりあえず現状は無理か」


少しでも情報が手に入っただけ収穫だろう。

何も情報がなくHPを減らしただけよりは絶対に良い。

とりあえずは前向きに進んでいこう……ということで。


「よし、とりあえず制限内容はある程度決まってるしー……っと」


【【追記の羽ペン】による制限の記入を確認しました】

【制限『戦闘以外の用途を禁じる』】

【この制限で間違いはないですか?】


迷いなくYESを押す。

【魔力付与】とほぼ同じ制限内容だが、どうせ【霧の羽を】を戦闘以外で使う予定もないため最初はこの制限でいいだろう。

手に持っていた羽ペンが吸い込まれ、本が光る。


【承認確認しました】

【【霧の羽を】の等級が『初級』から『中級』へと強化されます】

【等級強化を終了します】


――――――――――

【霧の羽を】

種別:補助

等級:中級

行使:動作行使指を鳴らす、発声行使

制限:【戦闘以外の用途を禁じる】

効果:この魔術の『起動方法』を見聞した敵対者に対し、精神力+5秒の間、視界阻害を行う非実体の羽を出現させる。

   霧の中で発動した場合、効果時間にボーナス。

   この魔術を行使した後、3分は同一の相手を対象にすることは出来ない。

――――――――――


「……なんかボーナス付いたなぁ」


もしかしなくてもボス素材に置き換わった関係で付いたものだろう。

ありがたいとは思うものの、霧が発生していること前提のスペックになってきている気がするため、爆弾など霧を吹き飛ばすような物用の対策も考える必要があるだろう。


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