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Chapter2 - Episode 11


来た道を戻り、ボスを探し出すための行動を開始する。

一度死ぬ可能性は有るものの、相手の姿を確認しておけば再度挑む際に探しやすくなるため、危険ではあるがリターンも大きいと判断した結果だ。

それにまだ相手がボスとは決まったわけではない。

十中八九そうだろうとは思うものの、それでもまだ未発見の新種モブの可能性だってあるのだ。


離れた位置の声を識別し、罠を設置する。

そんな特徴を持ちそうな動物、または道具を思い浮かべながら私は通路を走って進んでいく。

そうして辿り着いたのは、先程まで居た地雷部屋……扉にギロチンが落ちてきたあの部屋だ。

『霧の社の手編み鈴』の矢印はこの中を指し示しているため間違いないだろう。


まだ残っているギロチンを何とか退かしながら、私は先に【血狐】を部屋の中へと入らせる。

【発声行使】が事実上封じられているため、再発動できないが、それでも【血狐】による罠の先行破壊は私の安全を確保する為には必要な事だ。

次いでに【血狐】がボスを発見する事が出来たなら万々歳なのだが……そこまで容易くはないらしい。


部屋の中できょろきょろと辺りを見渡し、最終的にこちらへと戻ってきた【血狐】に少し苦笑しつつ。

私は『熊手』片手に部屋の中へと侵入する。

正直な話をすれば、既にある程度何が相手であるかは予想がついている……というか、予想以前に私が見かけたモノの中から考えるなら1つしか選択肢がないのだ。


私はそのまま部屋の中を突き進み、今もぽつんと置かれているフランス人形の前へと立つ。

気に留めるくらいにはおかしいと思ってはいたのだ。

以前、この遺跡を住居として使っていた人がいるのならば、このフランス人形以外にも何かしらの生活用品などがあってもいいはず。それなのに、私がこの『蝕み罠の遺跡』で見つけたのはこの幼女形の人形のみ。

それに加え、このダンジョンにはルインズパペットという人形型の敵性モブが存在している。つまり人形だからと言って、敵ではないと考えられないのだ。


一度、人形に向かって手を合わせる。

これで別に関係ないただのオブジェクトだった場合、私の目覚めが悪いから。

一息にその少女を模した頭に向かって『熊手』を上から振り下ろす。

【動作行使】によって発動させた【魔力付与】によって破壊力が増したダガーが頭を破壊する……その寸前。

フランス人形の目が紅く光ると同時、ガキンという音と共に『熊手』を防ぐように横からギロチンが出現した。


『フフッ……フフフッ……♪』


少女のような、しかしながら何処か機械音のような声が部屋の中に木霊する。

発生源はもちろん、目の前のフランス人形からだ。

瞬間、私の視界は頭上に……自分自身のアバターを見下ろす俯瞰視点へと移動した。

こうなったということは、そういうことなのだろう。

近くに居た【血狐】がバシャッ!という音と共に、ただの血溜まりになったのを見ながら、ムービーの開始を静かに待つ。


――――――――――――――――――――


『フフフッ……遊ビマショウ?ア……ソビ……♪』


何処かノイズが混じる声が木霊する。

それと共に、フランス人形と私の足元にはぽっかりと穴が開き、抵抗することも出来ずに落下していく。


『誰モイナイ……アナタハ何時マデ遊ンデデクレル?』


暗く、そして周囲には矢によって頭を壁に縫い留められた白骨死体が見える落とし穴を落下していくと、下に光が見えた。

何とか受け身をとろうとジタバタしていると、そのまま落下してしまう。


ぼふん、という気が抜けた音と共に私が落ちてきた先は、何処かおもちゃ箱を連想させるような場所だった。

目が痛くなるような色彩の柔らかい床に、所々ラッピングされたプレゼントが置かれている広い部屋の中心で、フランス人形はもう一度ノイズ混じりに笑った。


――――――――――――――――――――


【ダンジョンボスを発見しました】

【ボス:『万触の遺人形』】

【ボス遭遇戦を開始します:参加人数1人】


……ちゃんと破壊しようとするか何かしないとボス戦に辿り着けないパターン、かな?

子供部屋、おもちゃ箱、なんでもいいが……とりあえず子供が喜びそうな部屋へと落下してきた私が最初にした行動は、距離を詰めることだった。


部屋の大きさはさほど広くはない。

精々が高校の教室程度で、走ればすぐに反対側まで辿り着けてしまう程度には狭い。

私の場合、ダメージを与える方法が至近距離に寄っているため広い部屋よりは狭い部屋の方が戦い易くはあるのだが……しかしながら罠を新たに設置する相手に対してこの狭さは逆に厄介だ。


一瞬でほぼ零距離となった距離感の中、私は再度『熊手』を上から下へと振るう。

フランス人形はまだ行動、と言うよりは移動する事自体していない。

ただただ目を紅く光らせ笑うだけだ。


先程の繰り返しのように、フランス人形の頭へと『熊手』が迫り……しかし私の腕は途中で何かに止められる。

何かと思い焦りながら腕へと視線を向けると……細い糸が私の腕に巻き付き、動かせないように固定しているのが見えてしまった。

瞬間、足元からカチッという軽い音が聞こえてくる。


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