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Chapter2 - Episode 10


とりあえず部屋の中にこれ以上居るのは危険だと判断し、逃げ道の多い通路へと逃げるため【衝撃伝達】を発動させる。

最悪私の近くに地雷が再度設置されていたとしても、足から発生する衝撃波によって破壊することが出来るだろう。

床を蹴り、無理やりに近い形で扉から外へと出る。

その時に扉にかけられていた糸が切れ、扉の上からギロチンが降ってきたものの。速度のおかげか問題なく通過することが出来た。


「……見た事ないタイプの罠だ」


罠自体は散々このダンジョンの中で見てきたものの、ギロチンは今初めて見た。

思えばスイッチ式で矢が飛んでくる罠も初見のもので、今までの罠とは少しばかり趣向が異なっているようにも感じた。


私は無言で掲示板を開きつつ、安全であろう最初の部屋へと向かって走り出した。

見るのは敵性モブの特徴が複数載っている場所だ。

例えばミストイーグルに代表されるイーグル種ならば、


――――――――――

・イーグル種

プレイヤーの人数によって出現数を変化させる。

主に上空から奇襲をかけてくるため注意が必要。

――――――――――


なんていう簡単な説明が書かれているだけの図鑑のような場所だが、今回はそれが役に立つ。

探すのは罠を設置するタイプの敵性モブが発見されているのか否か。

サッと斜め読みしながら、1種1種にあまり時間を掛けないように確認していくと……見つかっていないのか、それとも既存のモブには存在していないのか。そんなモブの情報は載っていなかった。


代わりに発見する事が出来たのは『ボスモブは既存のモブの能力に加えて特殊な能力を持つことが多い』という書き込みだけ。

これに関しては間違いないだろう。『惑い霧の森』のボスである『白霧の森狐』は、発生させた霧に触れた者を転移させる能力を(恐らく)持っていた。

他の霧を発生させるモブであるミストシャークにそんな能力はなかったし、私の持っている『白霧の狐面』にもそんな能力は備わっていない。


一応気になったため、掲示板に『罠を新たに設置する類の敵性モブを確認した者がいるかどうか』と書き込んでみたものの……返ってきた反応は否だった。

見た事がないという者もいれば、私と同じように『蝕み罠』や『遺跡』の特性を持った罠が配置されるダンジョンに挑んだことのある者も出会った事がないとのこと。

……もしかして、ボスと知らない間に出会ってた?


考えられるのはそれだろう。

しかも特にムービーも入らなかったということは、向こうが一方的に発見しこちらを攻撃してきているということ。


「徘徊型、しかもこうして見つけられてないってことは探さないといけないタイプかぁ……!」


私がそう声を出した瞬間、私の足元から再度カチッという軽い音が聞こえてきた。

それと共に周囲にルインズパペットが3体出現する。

定番のモブ出現系の罠だろう。このダンジョンで見るのはやはり初見だが。

……声を出した瞬間に罠に引っかかった……声で識別でもしてるのかな。足音には反応してないし。


出現したルインズパペット達が動き出す前に、私が2体、【血狐】が残った1体を相手にする。

『白霧の狐面』によって霧を発生させ視界を塞ぎ、背後に回り首を『熊手』によって破壊する。

流石は人形だからか、それだけでは倒れてくれないものの。

頭に索敵系の機能が集まっているのか、それだけで棒立ちになるため後々の処理が楽になるのだ。


音によって私の位置を割り出したのか、もう1体のルインズパペットがこちらへとその腕を振り上げながら襲い掛かってくるものの。

私は首を破壊したルインズパペットを突き飛ばしぶつける事で一瞬だけ動きを止めつつ、近づいてその胴体に蹴りを入れる。

声を出すことによって罠を設置される可能性もあるため、【衝撃伝達】すらも乗っていない蹴りではあるものの……獣人の特徴である高い身体能力のおかげか、それだけでも中々な威力となる。


HPを減らしながらふらついたルインズパペットに近づき、先程と同じように首に向かって『熊手』を振るう事で破壊する。

こちらの戦闘はこれで終了だ。

【血狐】の方はどうなっているかと視線を向けると、そちらも今しがた首と腕、足をそれぞれ1本ずつ破壊し満足に動けないようにしていた。


すぐさま3体全てのHPを全損させてドロップアイテムを回収しつつ、私は最初の部屋へと走って向かう。

……【発声行使】がこういう所でデメリットになってくるのは予想外だなぁ。まずはボスを探さないとだけど……あっ。


私は立ち止まり『白霧の狐面』へと触れ再度霧を発生させる。

その霧を最大限……凡そ半径50メートルほどまで広げ、ちりんと腕に着けている鈴を鳴らした。

瞬間、1本の青い矢印が出現する。

『霧の社の手編み鈴』。一定範囲内の霧の中にいる敵性モブを索敵し矢印で存在する方向を指し示してくれるアクセサリーだ。

特に、現在のように敵を探さねばならない時に霧さえ発生させることが出来るならば非常に役に立つ代物で……普段、あまり使わないからこそ意識していないと忘れてしまう装備でもあった。


表示された矢印の方を見る。

私が走ってきた通路の方を指し示しているそれは、依然動く気配はない。

まだ移動はしていないのだろう。探し出すなら今しかない。

……1回戻るべきか、それとも進むべきか……。

悩み、考えて……私は答えを出した。


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