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Chapter2 - Episode 9


要領さえ分かってしまえば、探索自体は楽に進んだ。

ある程度進み、見慣れない通路に出たら【血狐】に先行してもらって罠の有無の確認。

罠が存在した場合、【挑発】を行使する事で周囲からモブを呼び寄せ漢解除を行わせる。

そうしてまた進むを繰り返すだけだ。


【挑発】を行う際に一気に進んだ通路を戻って罠やモブから逃げる事にはなるのだが……それでも爆弾などを喰らうよりはマシだ。

但し、この探索法は通路上の罠のみにしか対応出来ないという欠点も存在している。


「うっげ。また地雷部屋?」


そしてこの『蝕み罠の遺跡』に存在している部屋は、今のところ最初の部屋以外全てが全て何かしらの罠が仕掛けられていた。

扉を開けたら複数の矢が部屋の中から飛んでくるものを始め、一見何もないように見せ掛けて床に感圧式の地雷が埋め込まれていたり、頑丈な細い糸が張り巡らされている部屋なんかも存在していた。


大体そこらの部屋に関しては、【血狐】が先行し罠を破壊することで何とかなるのだが……糸部屋など破壊出来ないタイプの部屋もあり中々探索自体は大変だ。

まぁそういう部屋に関して言えば、目ぼしい面白そうな物や敵性モブが居なかった場合はスルーすることになるのだが。


私は目の前の部屋の地雷を【血狐】に破壊させつつ、これからどうするかを考える。

マップ自体はある程度埋まってきている。

それこそ、ダンジョンだからか外から見えた数倍の広さのマップがだ。

道は入り組んでおり、ある種迷路のようになっているこのダンジョンはマップ機能がなかったら確実に迷っていたことだろう。


「……ボスエリアも見つかってないんだよねぇ」


だがそれだけ探索しても、ボスエリア並びにセーフティエリアを発見出来ていないのが現状だった。

セーフティエリアはまだそういうダンジョンだから、と言われれば分かるものの……ボスエリアが発見出来ないのはちょっとばかり不可解だ。

一瞬、迷路なのだから出口のようなモノが存在するのかと思ったものの……それらしきモノに繋がる道も発見出来ていないため、本当に出口が存在しているのかも怪しい。


「あ、終わった?ありがとう」


1人で云々と唸りながら考えていると、こちらの近くに【血狐】が尻尾を振りながら戻ってきたのを見て、部屋の掃除が終わったのを知り中に入ろうと目を向ける。

一応【血狐】が地雷を破壊したと言っても、他に壊せなかった罠がある可能性もあるため、すぐに入ることは出来ない。

糸などが存在していないのを確認し、私は部屋の中へと侵入した。


ランタンで灯りを向けながら部屋の中を注意深く確認していると……ふと、何かに見られているような気がした。

敵性モブか?と思い、警戒しながらそちらの方へと目を向けてみると。


「……フランス人形?」


所々汚れているドレスに身を包んだ幼女形の人形がそこに置いてあった。

人形から見られているように感じる、というのは現実でもよくある話だ。

その話を紹介しているのがホラー系のコンテンツかそれ以外かによって、対応が一気には180度ほど変わってくるのだが。


……こんな遺跡に、人形……ってそういえばルインズパペットが居たか。

何故人形がここに、とは思ったものの……敵性モブとしてこちらへと走ってくる人形が居るのだから有ってもおかしくはないだろう。

もしかしたらこの遺跡では以前人が生活していたのだろうか、と考え部屋を出ようとした時の事だった。


何故か【血狐】が焦ったように、私より先に部屋から出ようとしていたのだ。

何だ?と思い、とりあえず足を止めてその姿を目で追ってみると。

この部屋の入口の扉、そこにてらてらと血で光る糸がピンと張られている事に気が付いた。

【血狐】が慌てていた理由はこれだろう。もしかしたら仕事をきちんとしてないと思われるとでも考え慌てて私に報せようとしてくれたのではないだろうか。

だが問題はそこではなく……私がこの部屋に入る時には糸なんて・・・・張られていなかった・・・・・・・・・ことだ。


きちんと部屋に入る前に確認し、糸がない事は確認している。

次いでに言えば、私が通ってきた道の罠は全て壊れたままで再配置がされる気配はなかったため……突然今再配置されたとは考えにくい。

……もしかして、新種のモブ?


ならば私が出会っていない敵性モブがこちらへと攻撃を仕掛けてきている、というのが一番妥当な考えじゃないだろうか。

『熊手』を取り出し、いつ襲い掛かられても良いよう軽く構える。

何か動くものがないかとしっかり周囲を観察しながら、私はこの部屋から出ようと一歩踏み出した……その瞬間。

足の裏からカチッという軽い音が聞こえ、それと共に通路側から私に向かって複数本の矢が飛んできた。


「ちょっ?!」


幸い、矢の軌道は読みやすい。

扉の正面から離れるように横へと跳べばそれら全てを避けることが出来るのだから対処自体は簡単だ。

だが、またしても……新しい罠が設置されていた。

しかも次は私が向いていた方に、知らぬ間にだ。

【血狐】の方を見るものの、いつ設置されたのか知らないのか首を左右に振っている。

……中々、面倒なのに見つかったかもしれないなぁ。


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