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Chapter2 - Episode 4


「好き勝手に……っていうか、自立行動オートモードにしてみるとこんな風に攻撃するわけか……。もしかして呼び出した私の行動から学習してたりするのかな」


確かに身体が液体ならば身体の中に入り込めば色々悪さが行えるだろう。

特に生物相手には特攻と言っても良い位には悪くない手……なのだが。

流石にこんな殺害に特化している戦法を最初から使えるほどに殺意が高い魔術とは思いたくはない。

私の行動を見て、それを学んで自身に反映させる。そんな能力があると考えたい。


「ん、まだ死んでないか。攻撃力不足かな」


とりあえず、ということで。

細かいところはまた別で確かめないといけないが、【血狐】の発動した感覚などをなんとなく掴んだ私は一度魔術を解き、『白霧の森狐』を倒すことにした。

といっても、ここまで弱っていればあとは1回急所を斬りつけるだけで勝手に死ぬだろう。

そう考えながらも何と無しに小さな声で【血液強化】と【魔力付与】を発動させ、指を鳴らすことで【霧の羽を】を発動させて視界を塞ぐ。

次いで【挑発】を発動し赤い円が『白霧の森狐』に作用しても身体を動かさないのを確認してから、私は今も血を流す首に切りかかった。


今持っている手札の中で、出来る限りの用心をする。

特に手負いの獣なんてものは何をしてくるのか分からないことが多い。

……うん、拘束系の魔術も欲しいな。

噴き出した血を浴びながら、そんなことをふと思った。



その後、私はもう一度……今度は初めから【血液強化】を使い『白霧の森狐』を狩ってみる事にした。

結果から言えば、簡単に……それこそ【血狐】を使って攻撃するよりも早く決着が着いたほど簡単に倒せてしまった。

やはり私が最初に戦ったオリジナルと、劣化複製された紛い物では戦闘能力に差があるようで、オリジナルを経験している私からすると多少楽に感じてしまう。


ボスエリアから出た私は、そのままの足で【平原】の奥……まだ行ったことのない方へと進んでいた。

方角としては南。劣化ボスとは言え、ソロでボスとある程度戦えるようになったのだ。

次のフィールド……色々な景色を見に行くには良い頃合いだろう。


歩きながらインベントリを操作し、手に入れたものを確認していく。

中には知らず知らずのうちに手に入れているものがあったりするため、出来る時に整理しておかないとインベントリ内が掃除の出来ない人の部屋のようになってしまう。


「手に入れた素材はー……うん、2回狩るだけでも中々な量だなぁ」


やはりというか、相手は腐ってもボスだったと言うべきか。

ミストシャークなどよりも骨がある相手だったからか、ボス固有と思われる素材もドロップしてくれていた。


「『霧霊狐の毛皮』が4枚、『霧霊狐の目玉』が1個、『霧霊狐の霧発器官』が2個……あとは血液と肉、骨もあるね。よしよし」


霧発器官、というのはアイテムの説明を読む限り名前の通り霧を発生させる器官、内臓の事らしい。

霧を発生させるモブには基本的に備わっているらしいため、恐らくはミストシャークからドロップしていないだけで存在自体はしているのだろう。

そしてそんなドロップアイテムの中でも、1つ気になる物が存在した。


「『霧霊狐の尻尾』、かぁ。狩りゲーみたいに部位破壊はしてないんだけどなぁ」


『白霧の森狐』の巨大な尻尾。振り回して打撃を行うのに使っていた場面は見た事があったが、それ以外に使っている所を見たことはなかった。

というか、何かに使えるものなのだろうか。

……でもまぁこれだけあれば持ってる魔術の等級強化は出来るよね。


次に強化する魔術の候補は2つある。

【挑発】と【霧の羽を】……どちらも使うものの、戦闘中に好んで使うかと言われると首を傾げざるを得ない魔術達だ。

どちらも効果を発生させるのに制限が掛かっており、尚且つ戦闘中では使いにくい効果であるからこそ、あまり使えていないが個々の性能は便利であることには間違いない。


等級強化によってゲッシュを立てる事になるとはいえ、使いやすくもなるのだから強化の優先順位は高い。

その為、どちらを先に強化するのか……と言う問題になってくるのだが……。


「あー、うん。まぁそりゃあそうなるよねぇ」


試しにそれぞれの等級強化を見てみれば、【挑発】の方は足りない素材が存在し、【霧の羽を】は素材が集まりきっている。

当然だろう、ウェーブ防衛で手に入れた素材やボスを狩った素材など、色々な霧に関係する素材を持っているのに対し、【挑発】関係のアイテムなんてイニティラビット以外に手に入れた事などないのだから。

それに加え、【挑発】の等級強化に必要な素材として要求されている『咆哮狼の喉』というアイテムは見た事がない。

そもそもとして『咆哮狼』というモブすら見た事がないのだから当然だろう。


「仕方ない……進んだ先に宿があったら宿で、なかったら【始まりの街】に戻ってからかな」


そんなことを呟きながら、私はぽてぽてと暢気に歩いて進んでいくのであった。



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Name:アリアドネ Level:14

HP:380/380 MP:125/125

Rank:beginner

Magic:【創魔】、【魔力付与】、【挑発】、【脱兎】、【衝撃伝達】、【霧の羽を】、【血液強化】、【血狐】

Equipment:『熊手』、『ミストミリタリージャケット』、『ミストショートパンツ』、『イニティグローブ』、『イニティロングブーツ』、『白霧の狐面』、『霧の社の手編み鈴』

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