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Chapter1 - Episode 27


モブ達が境内内に辿り着く。

瞬間、私とフィッシュは動き出した。

私の場合は呟くように【衝撃伝達】を発動させ、一気に加速するように。

フィッシュは一度自身の指を噛むような仕草をした後に赤いオーラをその身に纏い、普段よりも数段上の速度で接近し、両の手で持ったナイフでミストベアーに対して切りかかった。

速度が速すぎたのか、ミストベアーはそれに反応出来ずに無防備にそれを喰らい仰け反った。


それに続くように、彼女の切った傷に対して『熊手』を上から下へと振り下ろすようにして使う。

決められた動作をしたことによって発動した【魔力付与】によって出現した魔力の膜が、そのまま刀身から伸びるように形状を変えていき、天に向かって刃を伸ばす。

当然、上から振り下ろすようにして切ったのだから……上に刃が伸びればそこにはミストベアーの胴体、そして頭部しかない。


一瞬も抵抗する事が出来ずに光となって消えていくミストベアーを尻目に空中にてこちらを伺っているミストイーグルに目を向けた。

だが、その瞬間散々ボスエリアに辿り着くまでに聞いたあの破裂音が聞こえ、ミストイーグル達は地面へと堕ちていく。

メウラの【ゴーレマンシー】、そしてバトルールの【攻撃3番】という味気ない名前の魔術の組み合わせによる、敵を捕捉し砲撃を行うシステム的攻撃だ。

そうして振ってきたミストイーグル達を、私とフィッシュは空中でトドメを刺し見えている敵性モブは全て狩り終わる。


【First Wave Clear!】

【Next Wave :1:00:00】

【ウェーブ発生条件を満たしていません。防衛を終了します】


そして空中に新たな文字が出現したかと思えば、そのまま消えていく。

ボスクエストのウィンドウを表示させると、『次のウェーブ開始まで』という文と、その横に現在進行形でカウントダウンしていっている数字があった。

恐らくはこの数字が0になったら先程のように防衛が始まるのだろう。

……説明が足りないなぁ、これは。


「ひとまず次はないみたいです」

「ふぅー……道中暴れられなかったから良い運動になったぁ。でも物足りないっちゃ物足りないね。ウェーブって事は次もあるんだろう?いつ来るんだい?」

「えっと、一応このままだと1時間後くらいかと」

「1時間後……成程、少し話し合いましょう。アリアドネさんも先程のウェーブ防衛に関して知らなかったみたいですし」

「流石にあれが突発って言うのは無理があるだろうしなぁ」


こちらへと駆け寄ってきたバトルールとメウラの言葉に、私達は頷き一時的に話し合いを行うことにした。

このままウェーブが激化していくのであれば、この4人だけで対処できるかと言われると……厳しいと言わざるを得ないだろう。

メウラとバトルールの砲台も、設置、発射、維持にそれぞれMPを持っていかれているらしく、数が多くなればなるほど現状では継続戦闘は出来なくなっていく。

その為、最終的には私やフィッシュのような肉体を動かし敵を倒す戦闘方法になるのだが……それはそれで敵が多い場合、すぐに囲まれ袋叩きになるのが関の山だ。


「……といっても、特に理由というか伏線は無かったんですよね。クソ狐……あ、ボスの事なんですけど、何かそういう事を仄めかすようなことは言ってませんでしたし」

「じゃあこのダンジョン特有の物じゃない可能性はどうだ?ほら、一応他のダンジョンでも似たような改修クエストとか発生してんだろ、多分」

「一応それっぽい事を書いてる人は居ますね。ただこの人が言うには、『改修に伴って邪魔をしてくる存在がいる』ってだけなので、それが僕達みたいにウェーブ防衛って形なのかは……」

「あは、難しい問題だねぇ。……アリアドネちゃん、一応聞くけどイーグルとベアー以外にこのダンジョンってモブ居たりする?」

「いえ、見てないです。もしかしたら居るのかもしれないけど……少なくとも攻略中に見た覚えはないですね」


見た事のないモブが出現し始める可能性がある。

普段の攻略中、探索中だったらまだ良いだろう。

しかしながら、今回は確実に乱戦になる防衛戦。そこに全く対処法を知らない相手が出現したらどうなるか……下手したら、そこからパーティが壊滅する恐れだってある。

掲示板で人を集める、というのも手ではあるがそれはそれで悪ふざけするようなプレイヤーが居ないとも限らないためリスクが大きい。

仕方ない、と思い私は『白霧の狐面』をしっかりと被った。


「ん?どうしたアリアドネ」

「いや、ね。試せることはしてみようかなと思って。事情を知ってそうな奴を呼び出すのよ」

「……成程。でも呼び出せるんですか?」

「まぁ、叫んで呼べばなんか出てくるでしょう。多分」

「あは。行き当たりばったりなその姿勢、お姉さん嫌いじゃあないぜ」


そうして、朽ちた神社に向かって私は身体を向ける。

息を大きく吸い、どうせならとお面を触って霧を引き出す。

もうこの2人に知られてもいいだろう、防衛戦があるのなら近いうちに戦闘中に見られるだろうし、早いか遅いかの違いだ。


「こっんの馬鹿狐ェ!出てこぉおおおおおい!!!!」


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