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Chapter1 - Episode 25


「私が選んだのは『対話』なので、こっちの方に」

「あぁ、成程成程……じゃあこの劣化ボスっていうに挑む形になる、と?」

「そうなります、って言いたいんですけど……すいません、まだ劣化ボス用のエリアを設置出来てなくて」

「もしかしてこのボスクエストってので止まってるのかい?ふむ……どんなの?手伝おうかバトくん」


いつの間にかこちらのウィンドウを覗き込んでいたフィッシュがバトルールに対してそう問いかけた。

男口調でそう言った彼女は、得物であろうナイフを取り出し曲芸師のようにジャグリングのような事をしながら話始める。


「どこまで進んでるんだい?ボスクエスト」

「え?ええっと、まだ0%です」

「ほら、まだまだ全然だぜ?アリアドネちゃん……だっけ、君から見てボスクエストは簡単に終わりそう?」

「あー……無理そうですかね。こっちのメウラも手伝ってくれるんですが、それでも簡単には終わらないかと。手伝ってくれるならありがたいですけど……」

「おぉ、本当かい?」


パァ、と華が咲いたような笑みを浮かべる彼女に少し面食らいながらも私は了承する。

警戒はしているものの、思い返してみれば彼らからボスエリアへの侵入権限を与え不利益が生じたとしても、すぐに許可を取り消せばいいだけの話なのだ。

協力してもらえるのならば、出来る限りの所まで協力してもらうことにしよう。


「そうと決まればすぐに出発しよう!ちなみにボスエリアってどんな場所なんだい?」

「朽ちた神社です……ってこの人数だとミストイーグルが凄い事になるんじゃ」

「あぁ、大丈夫です。そっちの……メウラさんのゴーレム?と組み合わせれば楽になるかと」

「ん?おぉ?いいぜ、やってみよう」


成り行きではあるが、バトルールとフィッシュという2人をパーティに加えボスエリアを目指すことになった。

道案内、それと索敵は霧が見通せる私が、それから漏れてしまう相手を同じく獣人族で鼻の利くフィッシュが。

そして主な敵の迎撃はメウラとバトルールの2人という構成だ。


少しばかり不安はあるものの、種を知っているらしきフィッシュが何も言っていないため恐らく問題はないのだろう。

……まぁ危なくなったら霧出したりすればいいよね。魔術はぁー……少し、考えておこう。

今後協力するかも分からない相手に全ての手の内を見せるような事はしない。


セーフティエリアから出て空を見上げてみると、案の定私達を待っていたのかミストイーグルが大量に……パッと数えただけでも6体ほどこちらへと突撃しようとしていた。

恐らく匂いでフィッシュは気が付いているだろうが……他の2人は流石に気がついていないだろう。


「もう6体近くいます!」

「了解です……メウラさん」

「おうよ、【ゴーレマンシー】」


私の声に、全く焦らず準備を始めた2人の姿を見て逆に私が少し焦る。

狐面の効果で周囲の霧を操り、無理やり濃度を上げこちらを視認しにくくしてはいるものの……彼らの準備が間に合うかどうか分からないため、それ以上の備えをしようにもすることが出来ない。


土を素材に作り上げられた人型のゴーレムが、上を向く。

それと共に、6体のうちの1体がこちらへと突っ込んできた。

それを皮切りに、他のミストイーグルも後に続くようにして突っ込んでこようと体勢を変えた瞬間。


「【攻撃3番】」

『ギャッ?!』


ドゴン、という音と共に何かが空へ射出されこちらへと突っ込んできていたミストイーグルに命中した。

ダメージを喰らい、尚且つ驚いたのか体勢を崩し地面に落ちてきたミストイーグルを素早く『熊手』によってトドメを刺しながら、今も鳴り続けている音の方向を見てみると。


メウラの作り出した土のゴーレムが、頭に茶色の砲身のような物を乗せながら上を見上げていた。

砲身から弾が出る度に先程の聞こえた音が聞こえ、それと共にゴーレムの立っている地面の近くがへこんでいく。


「効果あり。あと3体作りましょうメウラさん」

「了解だ!」


男2人は私が呆然としてみているのにも気が付かず、そのまま新たにゴーレムを生み出してはその頭に砲身を乗せ砲撃させるという行動をとり続けている。

雨のように周囲に墜ちてくるミストイーグルが少しばかり可哀想になってくる。

ここでポンと肩を叩かれ振り返ると、そこには達観したような表情をしたフィッシュが立っていた。


「フィッシュさん……」

「……いいかい、アリアドネちゃん。バトくんは、いつもこうなんだ。ロマンだなんだって言いながら、結局効率だけで物を見て、傍から見てる側が居た堪れない気分になるものを創り出すんだ」

「フィッシュさん……!」


徐々に死んだ目になっていくフィッシュに、こんな光景が日常茶飯事であろうことを悟り……彼女に少し同情してしまった。

別に最高効率を追い求めるのは良いのだ。そこは別に否定するつもりはない。

だが私や、恐らくフィッシュのように身体を動かし派手に戦ったりしたい派の人間からすれば……彼の魔術らしきこれは、少し効率的すぎる・・・・・・ものだ。


地面に堕ちてくるミストイーグルに2人でトドメを刺しながら、楽しそうに高笑いをし始めた男性陣2人を死んだ目で見つめていた。

とりあえず、フィッシュとは仲良くなれる気がする。


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