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Chapter1 - Episode 22


次の日。

色々と頭が痛くなりつつもログインし来ていた通知を確認する……前に。

私は着ていた装備を全て脱ぎ、ゲーム開始時に着ていた布の服を取り出していた。

独特な酸っぱい匂いがする装備達を広げながら、メウラに連絡を取る。

彼は彼で新しい魔術を創り出したとか何とかいっていたため、ついでにそれも見せてもらう予定だ。


「……さて、と。メウラが来る前にこっちも見ておかないとかな」


インベントリから出現させるは、白い狐の仮面。

『白霧の森狐』から渡された謎の仮面だ。

きちんと調べて……装備していないからなのか、名前や効果すらも『???』となっているそれを見て溜息を吐いた後に、一度つけてみる事にした。


【特殊アクセサリーが装備されました】

【データ観測……該当データ発見】

【第一候補効果設定……承認、実装します】

【ボスインフリクトアイテム『白霧はくむの狐面』の効果を発現します】


装備した瞬間に流れた通知と共に、私の視界は狐面を付けた事によって狭まら……ない。

どうやらシステム側でサポートしてくれているのか、視界に関しては問題ないようだった。

次いで、アイテム詳細や名前も開示されていたためきちんと見てみる。


――――――――――

『白霧の狐面』

種別:アクセサリー・ボスインフリクトアイテム

等級:特級

効果:装備者を中心に一定範囲内に霧を自由に発生させることが可能

   装備者を中心に一定範囲内の霧を自由に操作することが可能

説明:『惑い霧の森』のボス『白霧の森狐』から与えられた狐の面

   人や獣を惑わせ、時に魔術すらも曖昧にしてしまう力の一片が備わっている

――――――――――


……ぶっ壊れでは?

詳細を見た私の第一印象はそれだった。

【霧の羽を】との相性は悪いものの、それ自体はどちらも同系統だからこそのものだ。仕方がない。

しかしながら自由に霧を……それも恐らく書き方的にクールタイムなしに発生させることが出来る、というのは序盤に手に入るにしてはかなり個性的な性能をしている。

私はあまり興味がないためそこまでだが、対人戦なんかではかなり使える効果だろう。


「……うん、一応発生させてみようかな」


何事も一度体験してみるのが吉だ。

もう一度体験しようと思ったものの、その相手を内部から倒した私が言う事ではないが。

顔につけている狐の面に意識を向けてみると、何かを出せそうな感覚があったため……狐の面に触れてみると、何か布のような物を摘まむことが出来た。

そのまま一気に引き抜くと今居る宿の部屋……ベッドや簡単な木の机程度しかない部屋が一気に濃い白霧に染まる。

それはまるで『惑い霧の森』の霧のような濃度だった。


「わわっ、予想以上に出ちゃったっ!」


そんなことを口にしつつ、私は次いで周囲の霧に意識を向ける。

どうやらこの部屋内程度は効果の範囲内らしく、ドアなどから霧が漏れ出ていかないように意識することでその場に留める事が出来た。

……うん、発生も操作も割と直感的に出来る。でも一番良いのは視覚補助こっちかな。

周囲を見渡してみる。

普通、というか昨日までの私ならば自身の発生させた霧によって部屋に置かれているものすらも見えなくなっていたはず……なのだが。


この『白霧の狐面』の効果なのか、霧の中でも何がどこにあるかをはっきりと見る事が出来ていた。

これが『惑い霧の森』でも発揮されるのであれば、私はあの森で迷う事はなくなるだろう。

下手したら誰かを案内も出来るかもしれない。


「……あ、他の通知も見てみないと」


見るべきは何だろうと考え、『白霧の森狐』が与えてきたクエストについてみておいた方がいい気がして、メニューから進行中のクエスト一覧を表示させた。

このArseareというゲームを始めてから開いた事のないウィンドウではあったものの、そこにはしっかりと『『惑い霧の森』の神社を改修せよ』というクエストが出現しているのを発見出来た。


――――――――――

『『惑い霧の森』の神社を改修せよ』


『白霧の森狐』から与えられたクエスト

濃霧の森の中に存在する朽ちた神社を改修するために素材を集めてこよう


種別:ボスクエスト

進行度:0%

――――――――――


……本当に簡潔な説明だなぁ。

恐らくは書いてある通りの事しか事実はないのだろう。あの狐が何故襲い掛かってきたのかは未だ分かっていないが、それを知るためのクエストなのかもしれない。

少なくとも、『討伐』を選んでいたら分からなかった部分だろう。

そこまで考えて現在『惑い霧の森』がどうなっているのかが気になってきた。


統治していたかは別として、私がボス戦を終わらせたのだ。

【始まりの平原】の近くにぽつりと存在しているようなダンジョンが他のプレイヤーに見つかっていないわけもないだろう。

そのプレイヤーが私のようにボスを見つけていないとは限らないわけだ。


「……ボスが討伐されたらダンジョンが消えるんだよね。そこはどうなってるんだろう?」


何かヒントが通知に紛れていないかを探していると、気になる通知を複数発見する事が出来た。

恐らくは私が昨日戻る時に確認せずそのままにしていた通知だろう。


【『対話』が選ばれたため今後『惑い霧の森』のボスエリアに到達するには許可が必要となります】

【『惑い霧の森』のボスエリアへの侵入許可を得ました】

【侵入許可をパーティメンバーに付与する事が出来ます】


「あーっと……これはうん。そういう方法?」


丁度私が考えていた、ボスとの戦闘関係についてだ。

この通知をその文面通りに受け取るのであれば、今現在あの朽ちた神社があるフィールドに侵入することが出来るのは私しかおらず……追加で他のプレイヤーが侵入したい場合は、私とパーティメンバーになるしかない。

しかも私はそのパーティメンバーを侵入させたくなかったら自由に権限をはく奪することもできる、という事だろうか。


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