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Chapter1 - Episode 17


【脱兎】を使う事で加速しながら待ち合わせの場所である噴水広場へと急ぎ走る。

【脱兎】……速度加速系の魔術は皆重要だと思っているのか、掲示板にも似たような能力の魔術の創り方が載っていたため、街中で使った所で特に注目されないのが良いところだ。

それに【発声行使】ではあるものの、別に他人に聞こえるように言わなくていいのも優れている点だろう。

そんなこんなでメウラが既に待っている噴水広場へと辿り着いた。


「おぉ、やっと来たか」

「いやぁ、ごめんね。少しやることがあってさ」

「大丈夫だ。そこまで急いでるわけじゃなかったしな。とりあえずは武器以外を渡していいか?」

「オッケー」


トレードにより送られてきた装備達を見て、私はにやりと笑う。

中々序盤にしてはいいものばかりではないだろうか。


――――――――――

『ミストミリタリージャケット』

種別:防具・上

等級:初級

効果:装備者の防御に+4%のボーナス

   周囲が濃霧時に潜伏能力にボーナス

説明:主にミストベアーの素材を用いて作られたミリタリージャケット

   実際にミストベアーの毛が使われたファーが付いている

――――――――――

――――――――――

『ミストショートパンツ』

種別:防具・下

等級:初級

効果:装備者の防御に+3%のボーナス

   周囲が濃霧時に潜伏能力にボーナス

説明:ミストベアーとミストイーグルの素材を用いて作られたショートパンツ

   所々に羽のアクセサリーが付いている

――――――――――

――――――――――

『イニティグローブ』

種別:防具・手

等級:初級

効果:装備者の敏捷に+1%のボーナス

説明:主にイニティラビットの革を用いて作られたグローブ

――――――――――


その場で装備してみる。

上下に真っ白な装備が、そして手には焦げ茶色のベルトで留めるタイプのグローブが出現する。

どれもサイズがぴったりでどこかがきつかったりゆるかったりすることもなかった。

それに加え、それぞれの装備のどこかしらにはブーツと同じ刺繍が施されていた。

中々速く、それでいて良い仕上がりに素直に感心してしまった。


「いいね。主に白だから私の髪とか尻尾が映えるし」

「よし良かった。じゃあ次は武器だな」

「おっけおっけーい」


そう言いながら上機嫌になった私は再度メウラから送られてきたアイテムトレードを承認し、武器の詳細を確認した。


――――――――――

『熊手』

種別:武器・短剣

等級:初級

効果:切り払い範囲+1m

説明:ミストベアーの爪を削り作られた白い刀身のダガー

   イニティラビットの革で作られた鞘が付いている

――――――――――


実体化させてみると、説明にもあった通り革の鞘に入った状態で私の手元に出現した。

それをメニューから装備状態にすると、腰へと移動した。

鞘からダガーを抜いてみる。


「説明通りに白いね」

「まぁ元々の素材が白いからな。全身ほぼ真っ白になった気持ちはどうだ?」

「最高だね、ありがとう」

「こちらこそ、良いアイテムを扱わせてもらえて助かった。余った素材は貰っていいんだよな?」

「どうぞどうぞ。今後も頼りにすると思うからよろしくね」


ダガーを鞘に戻しメウラと握手を交わす。

彼のおかげで装備の質が一気に上がった。

アクセサリーの枠がまだ何個か分余ってはいるものの……それに関してはまたあとででいいだろう。




装備を更新した私がルンルン気分で訪れたのは『惑い霧の森』。

今まで2度訪れたが、いずれもセーフティエリアの焚火で【始まりの街】へと戻って来てしまっていた。

なので今回は、このダンジョンの攻略を目指して先に進んでいく予定だ。


「自分で立てたゲッシュだけど、検証自体は面倒ね」


次いでにこっちから探さなくても襲い掛かってきてくれるミストイーグルを使って【魔力付与】の性能を確かめていこうと思っている。

といっても、確かめるのは魔力の膜の形状変化だけなのだが。


「とか思ってたら出てきてくれるんだからありがたいなぁ」


【挑発】でも大声で使ってやろうかと思っていたが、すぐにこちらへと突っ込んでこようとしている音を耳が拾う。

『熊手』を鞘から引き抜きタイミングを計る。

既に慣れた相手とは言え、武器の重量や防具の新調によって少しだけ身体の動きが変わっているため慢心は出来ない。

しっかりと音を聞き、そして白い霧の中からこちらへと一直線に近づいてくるミストイーグルに『熊手』の刀身を合わせ魔術の宣言を行う。


「【魔力付与】」

『ギィッ?!』


瞬間、『熊手』の刀身に見慣れた魔力の膜が出現するのが見え、そのまま突っ込んできたミストイーグルの身を切り裂いていく。

致命傷ではあるものの、すぐにHPを全損させるほどの傷ではなかったのか地面に落ち痙攣しているミストイーグルに視線を向ける。

……うん、意識すれば膜の形を変えられる。沿う形から……もっと長く……。


魔力の膜が私の意思に呼応するように伸びていき、刀身1つ分ほど伸びた所で停止する。

恐らくはこれが今の限界の長さなのだろう。そのまま痙攣しているミストイーグルを魔力の膜の部分のみで斬りつけてみると、しっかりと裂傷が付き光となって消えていった。

MPを確認してみると、形状変化をしたからなのか今まで以上に消費していたが、それでもおつりがくるくらいには良いものだと言えた。

使う場面を考える必要はあるだろうが……それでも戦術の幅が広がるだろうと笑みを浮かべた。



――――――――――

Name:アリアドネ Level:8

HP:240/240 MP:115/115

Rank:beginner

Magic:【創魔】、【魔力付与】、【挑発】、【脱兎】、【衝撃伝達】、【霧の羽を】

Equipment:『ミストミリタリージャケット』、『ミストショートパンツ』、『イニティグローブ』、『イニティロングブーツ』

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