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Chapter1 - Episode 13


「流石に休憩しよっか……」

「そうだな……」


ミストイーグルとの連続戦闘の後。

移動しながら戦っていたため、道など覚えていないが偶然発見することが出来たセーフティエリアの中で私とメウラは休憩することにした。

HP的な消耗はほぼない。

ミストイーグル自体、突然の襲撃に対応できれば処理は楽な方のモブだからだ。

だがそれでも戦闘に次ぐ戦闘は精神的に疲労する。


「で、セーフティエリアがあるってことはボス戦でも近いのか?前回来た時はボスまで行ったか?」

「行ってないね。……というか、ここ前に来た時と少し違うから、前に寄ったセーフティエリアとは別の場所かも」

「別、か……こんな特性のダンジョンだからこその複数設置か……?」


私はこの『惑い霧の森』以外のダンジョンへと侵入したことがないため良くは知らないが、ダンジョンにはそれぞれコンセプトのようなものがあるらしい。

掲示板ではそれらを総称して『特性』と呼ぶらしい。


ここで言うならば、『惑い霧』という部分がこのダンジョンの主な特性。

そこに『森』という副題とも言うべき特性が加わりこのダンジョンを形作っている……とのこと。

特性の詳細については【始まりの街】のNPCから色々と聞けるらしいが、掲示板にまとめられたものもあるらしいため、今はそちらを2人して覗いていた。


「えーっと……『惑い霧』の特性はマップ機能の制限、敵性モブが奇襲を仕掛けるようになる、単純に霧が立ち込める、入り口と出口は別、あとは……あぁ、あったあった。セーフティエリアの複数設置」

「一種の救済措置だろうな。じゃねぇと死ぬか攻略しない限り外に出れねぇから」

「ありがたいと言えばありがたいけど……その分、モブの出現数とかも上がってそうねこれ」

「あり得るな。結局ここに載ってんのはプレイヤーが調べたものと、NPCから聞いた話を一緒にしたものでしかないからな」


事実、今回『惑い霧の森』へと入ってからまだ1時間も経っていないにも関わらず、ミストイーグルの素材はかなりの数手に入っていた。

『霧鷲の羽』や『霧鷲の肉』といった私が元々持っているものから、大量に処理したはずなのに1つしか手に入っていない『霧鷲のかぎ爪』というレアそうな素材まで様々だ。

連続した戦闘だったからか、レベルも7を飛び越え8まで上がってしまっている。


「そっちもレベル上がってるし魔術創る?見られたくないならそっぽ向くけど」

「いや、見てていいぞ。他のプレイヤーが何を選んだかとかは分からないようになってるからな」

「あ、そう?じゃあ遠慮なく」


私も何か魔術を創ろうかと思ったものの、どうせなら既存の魔術の等級を強化すべきだろうと自身の習得魔術の一覧を開いた。

目の前ではメウラが【創魔】を使っているようだが、彼の言っていた通りただただ彼が空中に指と視線を這わせるだけで、全く見どころがなかったため、すぐに興味がなくなってしまった。


……【魔力付与】用のミストイーグルの素材は集まってる。他の魔術で強化できそうなのだと……【霧の羽を】とかならミストイーグルの素材を使って強化できそうかな。

他の魔術を創るのに使った素材はイニティラビット産の物ばかり。

強化するにしても、ミストイーグルよりイニティラビットを大量に狩った方が良いだろう。


「よし、創れた」

「マナー違反だと思うけど聞くね?どんなの創ったの?」

「あー……まぁ他には聞くなよ?今創ったのは【素材収集コレクター】っていう掲示板でも人気のあるアイテム収集用の魔術だ」

「あ、やっぱりそういうのあるんだ」

「あぁ。この魔術の対象にした奴を一定時間以内に狩れればアイテムドロップが確率で増えるっていう、序盤から最前線までずっと使える良い魔術だろ?」

「確かにね。私も後で創ってみよう」


恐らくはこの場で色々と手に入れるつもりなのだろう。

そりゃあ次から次へと襲い掛かってくるミストイーグルに行使できれば、ドロップ品が潤沢にはなるだろう。

だが、彼はまだこのダンジョンに出現する強者とは出会っていない。

正直あの調子で延々とミストイーグルが出現する中、ミストベアーまで出現したらどうしようもない気がする。


「あー、どうせなら今ここで防具の方は作っちまうか」

「え、いいの?報酬は?」

「報酬は後でも貰えるからな。今はアリアドネの強化を優先した方がいいだろ?……まぁ、普通に材料は出してもらうがな」


そう言って、こちらにアイテムのトレード申請を出してくる彼の笑顔を見ながら。

私はその申請を承認し、事前に話し合っていたアイテムを彼に譲り渡すのだった。


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