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Chapter1 - Episode 12


「一応聞くが……本気か?」

「本気も本気!というかちょっとくらいはレベルも上げたいでしょう?」

「それはそうだが……だからって俺が付き合えるレベルってのもあるんだぞ……」


そんなこんなで、私とメウラはパーティを組み『惑い霧の森』の入り口前へと立っていた。

理由は単純。メウラ自身のレベル上げと実際にミストベアー、ミストイーグルを見せた方が良いと考えたのだ。


メウラに教えてもらったのだが、このArseareのアイテム生産システムというのは中々に変わっている……らしい。


昨今発売されるVRMMOでの生産コンテンツというものは、ある程度プレイヤーの自由が利きはすれど、形などと言った所謂『整えなければならない部分』はゲーム側がきちんと整えてくれている。

例えば某針金細工のような殺人鬼の持つ大鋏だったり、某モンスターをハントする狩猟ゲームの可変斧のようなものは作れないわけではないが……やはり何処か無理が生じてしまう。


しかしながら、Arseareは作り方を覚えてさえいれば……それこそ妄想の類であろうときちんと設計出来るのであれば作れてしまう。

明らかに不格好でも、形を成していないものであってもアイテムとして認められるほどにゲーム側が柔軟に対応してくれる……らしい。

勿論、加工に自分で創った魔術を使うなどと言った他の者が真似しにくい要素なんかも加味すれば……本当に唯一無二の装備が作れてしまうと言うわけだ。


そして今回、私はメウラに武器と防具、そして私の戦闘スタイル……というよりは習得している魔術の関係でそうなっている戦い方を大まかに教え、その上でどんな物を作ってもらうか決めたわけだが……その話をしていた時に彼がポロっと溢したのだ。

「実際に戦っている所を見ればこっちもやりやすい」と。

ならばと一応承諾をとってから彼をこの場へと連れてきたわけだが……何やら顔色が優れないようだ。


「確かに俺はそう言ったが、連れられた先がダンジョンとは思わねぇだろ?!」

「詳しく場所を聞かなかったメウラが悪いと思うよ。まぁ、普通にここには欲しい素材もあるし……丁度、木の枝に変わるものも手持ちにあるから、色々試したいんだ。いいでしょ?」

「……それ、俺に断る権利ってあるのか?」

「断ってもいいけど?」


ここで断られても、こちらには何も痛手はない。

彼と私じゃ戦闘能力に差があるであろうことは事実だろうし――彼の実力を見ていないため、どちらが上とは言えないが――本当に断る気があるのなら、ここまでずるずると一緒に来るわけがないのだ。


「……チッ、いつまでもビビってんのも恰好悪ぃ。で?このダンジョンの特徴は?」


舌打ちを一度吐き、真面目な顔でこちらを見る彼に、少しだけ笑みを浮かべる。


「霧が濃いよ」

「外から見りゃわかる」

「今の所発見したのはミストイーグルとミストベアーの2種類。他は発見出来てないかな」

「それも聞いた」

「あとはぁー……中に入ると、霧の所為でマップが意味なさなくなるし、セーフティエリアに行くまで出れないかなって所?」

「それは聞いてない」


溜息を吐かれる。

確かに重要な事を伝え忘れていた。


「ごめんなさい。ソロでやってた歴が長いから仲間と何を共有すればいいのかイマイチ分かってないの」

「……はぁ……いやまぁ、入る前に確認できて良かった。まずは戦闘を見てるだけでもいいか?流石に初見の相手と視界の悪い中ぶっつけ本番で戦いたくはない」

「堅実堅実。危なくなったら手伝ってね」

「それは勿論。任せてくれ」


本当に直前となってしまったブリーフィングをした後、私達2人は森の中へと入っていった。

瞬間、私達の周囲は霧で囲まれマップの表示も切り替わる。


【ダンジョンに侵入しました】

【『惑い霧の森』 難度:1】

【ダンジョンの特性により、MAP機能が一時的に制限されました】


二度目となる通知を読み飛ばしつつ、私とメウラは周囲を警戒する。

不定期に襲い掛かってくるミストイーグルがダンジョンに侵入したこの瞬間から襲ってくる可能性もあるのだ。

それに私はまだいいが、人族であるメウラは種族特有の索敵方法なども持っていないだろう。

2人分警戒しなければならない。あまり経験したことはないがこれもいい経験になるだろう。



「きたっ!また鷲だ!」

「了解ッ!出来るだけ引き寄せてぇー……堕ちろッ!」


指を鳴らし、襲い掛かってきたミストイーグルに【霧の羽を】を行使する。

視界を非実体の羽で覆われ、地面へと堕ちていく霧鷲にメウラが近づき、その頭を手に持ったトンカチで殴りつけた。


現在、『惑い霧の森』へと侵入してから約30分。

どうやら、ミストイーグルはプレイヤーの数だけ出現するらしく……それが不定期に襲い掛かってくるという特性と合わさってか、連続してこちらへと襲い掛かってきていた。


「そのままその鷲よろしく!」

「了解、そっちは?!」

「新しいのが来てるから蹴り下ろす!【衝撃伝達】」


そう言って、宣言通り新たに襲い掛かってきたミストイーグルを【衝撃伝達】込みの蹴りで地面へと叩き下ろした。

レベル上げと考えればいいだろうが……それでもここまで続くとなると辛いものは辛い。


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