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Chapter1 - Episode 11


正直な話、私は序盤から色々と創りすぎではないだろうか。


ミストベアーとの戦いの次の日。家の用事を早々に片付け、すぐにArseareへとログインしていた。

場所は【始まりの街】の宿。私と同じプレイヤーが数人ログインポイントとするために部屋をとっているようだが……運が良いのか悪いのか、今まで出くわしたことはない。


話は戻り、私の魔術の話。

ここまで私は5つの魔術を創りあげ、そして行使してきた。


手に持つ道具に魔力による膜を張り武器とする【魔力付与】。

声の聞こえる者をこちらへと引き寄せる【挑発】。

高速移動、そして離脱を可能としてくれる【脱兎】。

脚さえ繋がっていれば便利に使うことの出来る【衝撃伝達】。

そしてミストベアー戦で役に立ってくれた、非実体の羽を創り出し相手を惑わす【霧の羽を】。


攻撃に用いる事が出来るのが2つ、それの補助を行う事が出来るのが残りの3つ。

だがちゃんとした戦闘が出来るかと言われると……私は首を傾げざるを得ないだろう。

【魔力付与】は手に持つ道具が未だ木の枝のみという貧弱さから、【衝撃伝達】はと言えば……正直【脱兎】よりも瞬間的に使える加速手段としての行使の方が多くなってきている。


「うーん……やっぱり若干死んでる【魔力付与】をどうにかした方がいいよね」


強化のための素材も【霧の羽を】を創るために使ってしまったため、もう一度『惑い霧の森』へと赴かねばならない。

ならば、先に攻撃力を上げてミストベアーと再び出会っても大丈夫なくらいに戦闘能力を上げるべきだろう。

そう考え、私は宿の部屋から外へと出た。




「良いのはあるかなぁーっと」


まともに散策をしていなかった【始まりの街】をぶらぶらと歩きながら、私は目当てのものを探していた。

MMORPGというのはソロでもプレイは出来るが、人と人との繋がりが現実以上に大事になってくるものだ。

その中でも私個人がゲームを始めたてに交流を持つべきだと思っている人種のプレイヤーがいる。


「お兄さん見ていってもいいかな?」

「ん?おぉ、いいぜ嬢ちゃん。どうせ客もいねぇんだ、ゆっくりしてけ」


それは、生産職。

所謂ゲームに人生を掛けているタイプの人間や、職人気質の人間、変なモノばかり創り出す人間と様々な種類がいるものの……総じて言えることは、使えるものを創ってくれるということだ。

勿論無償ではなく有償による依頼にはなるわけだが、それに関してもフレンドとなり普段から色々とアイテムを卸していれば少しは値引きしてくれたりもするため、交流を持っておくことは重要だ。


今も、私よりも年上……大体30代くらいだろうか?

それくらいには見える皮の鎧を着た人族の男性プレイヤーの露店を物色している。

そこには明らかにプレイヤーメイドらしき武器や、普通の素材、それから私が見た事のない回復薬など、生産職らしさが滲み出ているラインナップが並んでいる。

……うーん、一応聞いてみようかな。


「ねぇ、お兄さん」

「おう、何か欲しいもんは見つかったか?」

「あーいやいや、そういうわけじゃないんだけど。お兄さんって生産職の人だよね?依頼とかって出来る?」

「依頼……っていうと、武器とかアイテムを創ってくれって?」

「うん。お願いしたいんだけど、どうかな?」


私の言葉に男性プレイヤーは少し考えるような素振りを見せる。

……あ、私結局防具とかも買ってないから布の服のままじゃん。

恐らくはこのゲームを始めたばかりの初心者だと思われている可能性もある。

まぁ思われた所で別にいいし、断られたら別のプレイヤーの所へと行けばいいので問題はないのだが。


「……あー、キチンと払えるモンは持ってんだろうな?」

「素材と通貨どっちがいい?」

「素材で」

「おっけーい」


私はインベントリ内から『霧熊の爪』、『霧鷲の羽』を取り出し見せる。

人通りが多い場所だが、まぁ良いだろう。それよりも素材を見せろと言ってきたのだ、このまま話を押し切ってしまいたい。

私が出した素材に目を奪われている男性プレイヤーは、ハッとしてこちらの顔を驚いたような顔をして見てくる。


「お前それ……」

「詳細が知りたいなら依頼受けてくれる?こっちもタダじゃないし」

「……OK、分かったよ。試したようで悪かった。俺はメウラってんだ。嬢ちゃんの名前は?」

「私はアリアドネ。よし、フレンド申請もしたし続きは私の泊ってる宿か他の場所でしようよ」


……あー、やっぱりダンジョン産って結構前線に近いのかな。素材の価値。

薄々感じてはいたのだ。【始まりの平原】に出現するイニティラビットと、『惑い霧の森』に出現するミストイーグル、ミストベアーの強さには数段以上の差が開いている。

単純に私が弱いというのもあるのかもしれないが、それでも強さの上り方が極端だったのだ。

出した素材を仕舞い、メウラが準備出来たのを見てから私が泊まっている宿へと移動した。



宿に到着し、よくファンタジーで存在している食堂と休憩所が一緒になっているようなスペースにて机を挟んで対面に座る。


「で、改めて自己紹介でもしとくね。私はアリアドネ。エンジョイ勢だよ」

「どの口で……俺はメウラだ。よろしく。……それで、さっきの素材だが」

「慌てない慌てない。……さっきの素材を使っての武器の作成、それと一緒に防具も作ってくれると嬉しいなーっていう話なんだけど、どう?」

「ふむ……使いたい武器種、それと防具は戦闘スタイルにも依る所があるが?」

「えっとねぇ――」


真面目に聞いてくれているようで、こちらの目をしっかりと見て話してくれている。

これなら暫くは問題ないだろう。

私とメウラはその後約1時間ほどお互いの考えのすり合わせを行い、正式にメウラへと武器と防具を発注することが決まった。


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