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Story Ending


■ 狼谷 赤奈


「――とまぁ。そんな感じでね?色々あったわけだよ」

「成程、楽しんでるようで何よりだ」


リアルで私が勤務している喫茶店。

その店主にこれまであった事、知り得た事をある程度かいつまんで話していた。

『人斬者』の調伏後、それなりに色々と好奇心が刺激される事があった。

患猫から紹介された、ゲームストーリーに精通しているプレイヤーと共にゲームの大筋から、ちょっとした小話まで蒐集したり。

『Sneers Wolf』の面々と共に、外界の大型ボスを何度か討伐したり。

【世界屈折空間】の中層のダンジョンをそれぞれソロでクリアしたり。

話をするならば長くなるものの、全て簡潔にまとめるならば、


「うん、楽しかったよ。本当に」


簡単な言葉であるが、確かにここまでの道のりは楽しかった。

そんな事を話していれば、店内に掛けられた時計が鳴り正午である事を報せてくれる。


「お姉様、そろそろ」

「あぁーそうだったね。……じゃあ今日はここまでで大丈夫だよね?」

「おう、なんか用事があるんだっけか?」

「うん。まだまだやる事が大量にあってねぇ」


そう言いながら、当然のように店内に居た音桜を連れ店を後にして。

私は自宅へと帰宅し、VR機器を装着してからベッドに横になる。

すぐにゲームが起動し、私の意識は水の中へと落ちていくかのような感覚に包まれた。

VR特有の感覚も、今ではこれが無いとやってられなくなってきた。




■ レラ


「よぉーし、それじゃあやっていこうか!」

「元気だなお前……そんなに俺と戦いたかッたのか?」

「そりゃあもう。バトロワの時に倒されてからずっとね」


娯楽区、その中にある『Sneers Wolf』所有の闘技場。

その中心には完全装備の私と、同じく完全装備である禍羅魔の姿があった。

観客席には何時ぞやの調伏の時とは比べ物にならない程の数の人々が、戦闘の始まりを今か今かと待ち望んでいるのが観える。

……やっぱり、超えていかないとね。

リベンジと言えば聞こえはいいが、これは私の自己満足。

禍羅魔と戦い、打ち負かす。当時私には出来なかった事を成し遂げる為の行動だ。


「はッ――良いだろうやッてやらァ!」

「すぐに負けても知らないからねッ!」


私達の周囲に、様々なモノが渦巻いていく。

私の周りには紫煙、酒気、怨念が。

禍羅魔の周りには紫煙と熱気が、それぞれ渦巻き様々な形を作り出す。


「……やりたい事、結構見つかったなぁ」


小さく、禍羅魔にも聞こえないように呟いて。

目の前に出現したカウントダウンを視界の中に収め。

私はゆっくりと足に力を入れる。

煙草を咥え、酒を操り、怨念の込められた装備を使い、強敵を倒す。

友人達と共に馬鹿みたいな事をやりながら、新しい事実を発見する。

自身の従者と共に、観た事の無い景色を目に焼き付ける。

それぞれ、このゲームを始めた時には考えつかなかった私の『やりたい事』だ。


「これからも、沢山見つけていこう」


カウントダウンが零となり、私と禍羅魔は同時に地面を蹴った。

何事も、まずは。

目の前の彼を倒してから、始めていこう。

この紫煙が満ちるゲーム世界は、私の好奇心やりたい事満たし見つけ続けてくれるのだから。


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