私にとっては馴染み深く、このゲーム内で最も多く触れてきたと言っても過言ではない
操作系だ。
持ち合わせているのは紫煙、酒精のみではあるものの、それらを使い時には巨大な敵を拘束したり、時には広範囲の殲滅をしたりと好き放題やってきた。
そして、それらスキルの特徴として、操れる対象が
「多分、あれはこれのおかげだったんだろうなぁ」
私の目には、しっかりとこの場に3種類の輝いて見えるモノが存在していた。
1つは、紫煙。マイスペースという事もあり、生産系施設を稼働させる為にルプスを始めとした従者達が使っている煙草から発生しているモノ。
2つは、酒精。私と、スキル共有がされている従者達から発生した酒気がマイスペース内で充満している。
そして3つ目。それは、
「どう見たって怨念、なんだよなぁ」
私が具現化概念を出現させる為に、煙質を使って紫煙を変化させた怨念。
それが薄く輝いて見えているのだ。
近くを漂っていた怨念を軽く摘むように操作してみれば、少しばかり抵抗は感じるものの他の操作系と同じ様に操作することが出来る。
「怨念操作、ですか」
「まだ詳細見てないから詳しいことは言えないけどね。多分そうだと思う。それも……段階は初期も初期かな。他みたいに遠隔操作は出来ないし……怨念の特徴かな?少しだけ抵抗感がある」
「私には……触れませんね。共有の対象外です」
「装備の能力だからかな。まぁそっちが使えてもって感じではあるんだけどさ」
手の中で怨念を捏ねながら、どこまで適用されているのかを確かめていけば。
基本的には操作系スキルの初期段階と同じ事は出来るようで、『人斬者』が作り出していた怨念の小刀や、私が良く作る手や刀、手斧などは作ることが出来た。
代わりに、触れられない範囲では全くと言って良いほどに反応しない……のだが。
「ご主人様?触れてなければ操作できないという話では?」
「ん、まぁそれは正しくてさ。でもこれ【擬似腕】なんだよね」
「……成程?【擬似腕】は本人の腕として認識されている、と?」
「まぁ見る限りはそうらしいね。……悪さ出来るなぁこれ」
試しに【擬似腕】を使い、少し離れた位置に漂っている怨念に触れてみれば。
直接手で触れるよりも抵抗は増したものの、同じ様に操作出来ることが判明した。
一見すれば私が怨念系操作スキルを持っているように見えるだろう。
……一旦、きちんと詳細は見た方が良いな。
そもそもの話、詳細を見る事なく検証のような事をしているのがおかしいのだ。
今までのように見れないならばまだしも、今はもう見れるのだから。
「よし、御開帳っと」
――――――――――
『師生』
種別:防具・具現化概念
形状:編笠
通常能力:怨念操作能力獲得
視線隠蔽能力獲得
過剰負荷:ダメージ
制限:使用後一定時間具現化不可
説明:人斬りの修羅が被っていたとされる編笠
一度以外、この編笠は主人の顔に傷は付けなかった
――――――――――
「……強いですね」
「うん、強いね……」
予想はしていた。
それこそ、怨念の操作能力を獲得できるというのは合っていたのだから、私の考えは間違っていなかった。
しかしながら、それに付随する形で持ってきた能力が強いのだ。
……ダメージ無効化とか霞むなぁ、ちょっと。
視線隠蔽能力。
察するに、装備者がどこを見ているのか分からなくさせる能力なのだろうが、これを私のような近中距離対応のプレイヤーが持っている事自体が問題だ。
何せ、どこを、誰を狙っているのかが視線では測れなくなるのだから。
「ちょっとルプス、これ見えてる?」
「……えぇっと……何かされてます?」
「……【狼煙】で目を覆ってるんだけど……【観察】、【心眼】持ちでも観えないか」
今の一瞬だけで中々に面倒な事が分かってしまった。
この能力を使っている間、私が『始まりの視標』を使っていたとしても分からなければ、相手が視線を使用する類のスキルを使っていたとしても分からない。
……視線に乗る類のスキルをちょっと探しておくか。
これを利用すれば中々に戦闘では役に立つだろう。
惜しいのは、これから少しの間は戦闘から離れた位置に身を置くタイミングでコレを手に入れてしまった事だろうか。
「怨念具は強いのは変わりないねぇ」
「……患猫さんはコレに準ずる装備を大量に持っているんですよね?」
「……持ってるねぇ。あの子、地味に知り合いの中で最強かもしれないな」
地味に知り合いの中での最強ランキングに変動があったものの。
今更になって、調伏が終わった後にスリーエスに患猫の相手を任せてしまって申し訳なくなってきてしまった。
無事だといいのだが……まぁもう終わった話ではある。
心の中で手を合わせておこう。