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Episode11 - GR1


--マイスペース


逃げる様に闘技場から帰ってきた私は、いつもの様に薬草系の具現煙の過剰供給によって腕を生やした後。

耳飾りへと怨念を流し込み、3つの装備を出現させていた。


「ご主人様、それが完全体ですか?」

「うん、『怨斬の耳飾り』の具現化概念3種だね。まだ具体的に具現化概念ってのがよく分かってないけど」


『想真刀』に関してはいつも通り。

『死傷続』は精神世界ではボロボロになっていたが、一度仕舞ったからなのか綺麗に元通りになっている。

そして、今回手に入れた『師生』。

何処か赤黒いものの、見た目は右目の所に切り込みが入った普通の編笠だ。

……ん、詳細見れるようになってる。

今まで『怨斬の耳飾り』から何が調伏出来ているかは確認出来ていたものの。

その詳細な能力や情報は一切見る事はできなかった。

『想真刀』は分かりやすい能力だった為に特に不自由は無かったものの、他2つは未だ謎が多い為に詳細が見れるのは素直に助かる。


「えぇーっと……まず『想真刀』から見ていくか」

「仕舞わなくても大丈夫ですか?」

「うん、問題ないね。寧ろ今まで燃費良いみたい。完全に調伏が終わった影響かな」


具現化概念の燃料でもある怨念はここまでほぼ減っていない様に思える。

視界上の【怨煙変化】のゲージに関しても同様だ。

これなら出現させるだけならば幾らでも出来るだろう。

そう考えながら『想真刀』の詳細情報を表示してみると、


――――――――――

『想真刀』

種別:武器・具現化概念

形状:刀


通常能力:ダメージを与えた相手のステータス・バフ・デバフをダメージ量分獲得


過剰負荷:与ダメージ(獲得したステータス分)%増加

    制限:使用後一定時間具現化不可


説明:人斬りの修羅が使ったとされる妖刀

   その刀身は血に塗れたにしては白く、美しい

――――――――――


「……ん?過剰負荷?」


見覚えのない能力が存在しているのに気がついた。

……普通に考えれば……魔煙術の過剰供給とかと似た様な感じだよね。

具現化概念については一旦置いておいて。

過剰負荷というの能力の起動の仕方は凡そ予想はつく。

というか、私は一度それを起動している可能性が高い。それは、


「あの時の一撃、ステータスだけじゃなかったんだ……」


記憶に新しい、レイドボス版『邪宣者』で見せた『共鳴』付きの一閃だ。

あの場には怨念が満ちており、その上で私が得ていた追加ステータスも過去最大。

過剰負荷が起動している状態であったならば、これ以上ない環境だった筈だ。


「余計にロマン砲みたいになっちゃったな」

「ロマンにロマンを重ねてませんか?」

「まぁね。でもこれが出来るって考えると……今後は本当に自分の位置は考えないと」


刀が届く位置から放たれる、どれほど重くなっているか分からない一撃。

特に性質が悪いと感じるのは、過剰負荷に目立ったエフェクト類が設定されていない点だろう。

存在を知らない相手は、受け切れると思っていた一撃が致命となり。

存在を知っている相手は、変に警戒してしまい刀の届かない位置へと移動する。

どちらでも私にとってはおいしい展開になってしまう。


「さて、まぁ次」


続いてはよく分からないバフのようなものを与えてくれた『死傷続』。

現時点での予想は食いしばり系……HPを1残してくれる類の能力を持っていると思われるが……それが合っているかは分からない為、しっかり詳細を見ていく事にしよう。


――――――――――

『死傷続』

種別:防具・具現化概念

形状:羽織袴


通常能力:装備者に対し『死傷続』を付与

     周囲の怨念量によって効果時間変動


過剰負荷:付与されている『死傷続』を消費し、HP全回復

    制限:使用後一定時間具現化不可


『死傷続』:周囲の怨念を消費し、致命となる一撃を耐える状態

      HP回復不可デメリット


説明:人斬りの修羅が纏ったとされる羽織袴

   その全身は血と怨念に塗れ、元はどんな色だったかさえも分からない

――――――――――


「……強いなこっちも」

「具現化概念という都合的に、一定以上の強さが確約されているのでしょうか?」

「多分ね。そもそも調伏しないと満足に使えないし……ある意味でご褒美みたいなものだからかな」


能力自体は予想通りのモノ。

食いしばり性能持ちであり、HP回復不可という巨大なデメリットを抱えてはいるものの……相手の必殺技を耐えるという一点だけを考えるならばデメリットも無いようなもの。

過剰負荷を起動させれば一定時間は具現化出来なくなってしまうものの、必殺技を耐えた後に全回復出来るのは魅力的だろう。

問題はどれほど怨念を使うか分からないという点だろうか。


「怨念の確保が一番厄介かもなぁ、コレ」

「紫煙を変えるにしても……『共鳴』なんかを使うレベルの戦闘になったらそれも難しいですか」

「そうだねぇ。最悪、『共鳴』は【狼煙】だけに絞って、【怨煙変化】を全部こっちに回すのはありだけど……それでも足りるかどうか……後で患猫ちゃんに相談かなぁここは」


専門的な話は専門家に聞くのが手っ取り早い。

幸いにして既に先程の暴走状態からは立ち直っているだろうし、話を聞く分には問題ないだろう。

……さて、最後見ていくか。

私は一度、『師生』を手に取りしっかりと眺める。

色以外は特に可笑しなところの無い、普通の編笠であり変な能力はないように思える。


「でも、これもこれでしっかり変な能力持ちなんだろうなぁ……というか」

「というか?」

「もう、大体理解は出来ちゃってるんだよね。能力」


だが、既に私にはこの編笠の能力が目に観えて理解出来ていたのだった。

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