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Episode25 - ECBR


--マイスペース


「各地、っていうか掲示板が凄いことになってるねぇ」

「自覚あります?お姉様」

「あは、無いっちゃ無い」


『邪宣者』を討伐した後。

私はいつもの様に【隠蔽工作】を発動させ、ルルイエ=オールドワンから脱出し、そそくさとマイスペースへと戻って来ていた。

それを察知したのか、戻ってくると考えていたのか程なくして音桜も場に合流し、事の顛末を話していたわけだが、


「見つかっちゃったね、新たな可能性」

「今まで知らずに使ってた人や、知ってて秘匿してた人も居そうですがね。それこそ、知り合いに1人」

「まぁスリーエスくんは確実に知ってるだろうね、あれは」


そこで私の見せた『共鳴』について、様々な憶測が各掲示板で飛び交っているのだ。

曰く、紫煙外装による特殊な強化だとか。

曰く、特殊環境下のみで使える技だとか。

曰く、1YOU達『Sneers Wolf』が何処かから引っ張り出した救援NPCだとか。

見方によっては合っていても、正解に辿り着いているプレイヤーは掲示板にはいない様だったが。


「音桜ちゃんはどう?出来そう?」

「出来ると思います。ただ……私の場合は怨念系の装備がないので」

「同じ様に使うのはまぁ無理だよね」

「残ってる【過去事変】で試行錯誤してみます」


現状、私が使った『共鳴』は4種。

その内、【酒鬼顕現】に関しては昇華の過剰供給によって解放されていたスキルの為、再現は難しいものの……他の3種に関してはいつでもどこでも、やろうと思えば再現は可能なはずだ。

……STの回復手段は増やさないとなぁ。

だが今回得た技術によって、今後の戦闘スタイルにはかなりの変化を求められる事となった。

以前までの様に、薬草系の具現煙を過剰供給している状態では『共鳴』をおいそれと使えないからだ。

下手に使って過剰供給が切れた瞬間に致命傷を喰らってしまったら目も当てられない。


「ちなみに、お姉様は最後の一撃を連発出来るんですか?」

「あー、無理無理。アレ、『想真刀』で滅茶苦茶ステータスが強化されてる状態だったからあぁなっただけだし。同じ様に発動するにしても、今回みたいなレイド戦で長時間斬ってないと難しいと思うよ」

「成程……でも劣化版なら出来ると」

「まぁね。煙質とSTの許す限りなら出来るはず。コツは掴んだしね」


マイスペース内では、ルプスも含めた従者3人が今も全力でST回復用のアイテムを生産し続けている。

酒精入りに始まり、煙草型、普通の薬品型など、どれが良いかを紫煙人形で試しながらやっている所だ。


「……ちなみに、ルプスちゃんも『共鳴』は?」

「勿論出来る。ただ紫煙人形って身体的に、あんまり使えないかな。直接燃料を消費するわけだしね」

「成程……でもそれらしいのは使ってましたよね?」

「使ってたねぇ……あれなんだろ。【過集中】と【狼煙】かな」


燃料として煙質を使う関係で、使えばするものの私の様に連発は出来ないのが紫煙人形……の筈なのだが。

所有者の私にも分からないが、ルプスはそれを近接戦闘中に延々と使っている節がある。

何かしらのコスト軽減措置がされているのか、それとも使っている『共鳴』のコスパが良いのかは分からないが……後で本人に聞いてみるしか無いだろう。

アレを私も使えたら、戦闘が全体的にもっと楽にはなるのだから。



「あ」

「どうされました?」

「いやね、今回……結局これ使わなかったなって」

「あぁ……確かに使ってはいませんでしたね」


そうして考えていると、思い出す。

あまりにも自然に着いていた為に、使う事すら思い出せなかったピエロの仮面。

自身の分身を生み出す事ができるというユニークな効果を持っているものの、


「使い所がねぇ……私がもう1人居たとしてもって場面が多かったし」

「お姉様が近接戦闘する時は、大抵紫煙外装が使えなくなってますものね」

「そういうこと。私が手斧握って、分身に『想真刀』渡しても良いんだけど……ちょっと怖いし」

「あぁ……確かに……」


正直な所、ルプスであっても怨念由来の装備は託せない。

変に私の様に乗っ取られても困るし、それを責任もって対処する事になるのは私なのだ。

確定しているリスクでもデメリットでもないが、可能性があるのであればやめておくのが吉だろう。


「……さて、と。音桜ちゃんはこれからどうするの?まだまだ今回のイベントは続くっぽいけど」

「今月末までですもんね。……一応、【過去事変】対策用のアイテムの量産ですかね。何処かの誰かと違ってゴリ押しは効かないので。お姉様は?」

「あは、ちょっと棘があるなぁ。……私は私で一度ちゃんと挑もうかなってね。今回もダンジョンが出て来たみたいだし?」


実の所、『邪宣者』が倒された後のルルイエ=オールドワンはそのままの形で残っている。

紫煙駆動都市側のNPCが言うには、あの石造りの都市に残った怨念によって浮上し続けている状態であり……丁度、その怨念を使い果たすのが月末、イベントの終わりと同時期になるらしい。

だがそれと共に、ルルイエ=オールドワンの中心部……『邪宣者』が出現した場所には1つの門が出現した。

例によって、『邪宣者』がボスとして君臨するダンジョンだ。


「今回は暴走状態で削ってただけだから、あのボスの行動パターンとか知らないままなんだよね」

「成程、お姉様的にはそれが気に入らないと」

「気に入らないっていうか……気になるって感じだねぇ。ほら、季節ものとか1回は味わっときたい気持ちあるじゃん?」

「分かりはしますが……アレを季節ものって言うのも……」


だらだらと、そんな会話をしながらも時間は進んでいく。

今回は中々に反省するべき事も多かったが……その分、得る物も多かったと言っても良いだろう。

願わくば、紫煙奇譚の期間中に『邪宣者』とのソロでの戦いを終えられるよう祈りながら……私は1本、煙草を吸う。

何処か酒の匂いがするそれは、いつも通りに私の肺を満たしていった。



――――――――――

プレイヤー:レラ


・紫煙外装

『外装三式 - 杯型ニ種』


・所有スキル

【煙草製作】、【観察】、【フィルター加工】、【背水の陣】、【回避】、【魔煙操作】、【隠蔽工作】、【複製】、【状態変化】、【投げ斧使い】、【多重思考】、【酒精操作】、【酒気展開】、【酒精生成】、【居合】、【疑似腕】、【投擲】、【斧の心得】、【剣魂一擲】、【心眼】、【紫煙の眼吹】


・装備

『死水魔女のボディス』、『隠矢小娘のドレススカート』、『死水魔女のグローブ』、『隠矢小娘のロングブーツ』、『死骨王者の外套』、『信奉者の指輪』、『怨斬の耳飾り』、『解体者の指輪』、『切裂者の指輪』、『酒呑者の指輪』、『狂道化師の指輪』、『私が被った4人の人格』


・煙質変化

【狼煙】、【怨煙変化】


・紫煙人形

『紫煙人形:ルプス』

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