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Episode12 - E11


私とルプスが先頭に立ち、そのすぐ後ろにスリーエスとキヨマサの2人が立つという形に変えてから都市の中を進む速度は少し上がり。

時間と各々のリソースは掛かったものの、祭壇の周辺近くへと足を進める事が出来ていた。

と言っても、だ。

主に私とルプスが敵性モブが見えた瞬間に倒し続けている為に、私達以外のリソースは減っていない。

そんな私達も【酒気展開】によって身体から発生した酒気をメインで扱っている為に、そこまでリソースを使ったという意識はない。


「で、見えてはいるけど……患猫ちゃんはどう見るー?」

「か、確実に厄ネタね。文字通りの」

「俺も横に同じだ。俺の眼でも情報が抜けない、名称すら分からない祭壇など厄ネタ以外の何物でもないだろう」

「あちゃ、伽藍ドゥくんの方もお手上げか。……でも近付かない事には仕方ないよねぇ」


少し離れた位置。石造りの都市の中心であり、広場のようになっている場所にそれはあった。

今回の探索の目的となった、濃い怨念を纏い放出している祭壇だ。

両目を紫煙外装へと置換している伽藍ドゥ、怨念関係の知識を持ち合わせている患猫、そして【心眼】や【観察】などの眼を用いて情報を得る事が出来る私の3人の見解は同じものだ。

……うーん、敵性モブってわけでは無いし、建築物なんだろうけど……見た目以外の情報が全く入ってこない。

一見すれば、普通に教会などに置かれていてもおかしくはない祭壇。

アレを作るのに怨念の込められた素材しか使っていない、と言われたならばある程度は納得できるかもしれないが……もしそうだとしても、そんな素材を使って作られた祭壇を都市の中央に置くなど狂っている。


「どうする?ここからなら一応私は狙えるけど」

「俺の人形が先行しても良いぞ?」

「いや、やめておいてくれ。あそこまで怨念が濃いと自律行動型の紫煙外装にどんな影響が出るか分からない。やるなら破壊を第一で良いだろう。そもそもアレを残しておくのは……危険、だよな?」

「き、危険ね。今は海中に放出されているみたいだけど、都市の方に溜まりはじめたら……さっき私が作ったのなんて比較にならない規模の呪地が出来てもおかしくはないわ」

「あっちゃっちゃ、リアルじゃ絶対お目にかかれない角度からの海洋汚染だねぇ」


言いながらも、私は投擲の準備を開始する。

万が一が無いよう、酒気や紫煙ではなく自身の紫煙外装である手斧をしっかりと構え。

STを消費する事で、三対の紫煙の斧が紫電を纏いながら私の周囲へと成形されていく。


「じゃ、投げるけど……怨念の操作は患猫ちゃんに任せていいよね?」

「だ、大丈夫よ。ここからでも操作範囲内だから……問題があるとしたらそれ以外ね」

「……大方予想は出来てるけど、まぁいいや。『煙を上げろワイルドハント』」


視界の隅に表示されている【葡萄胚】を全て消費し、手斧の与ダメージ増加効果を最大限発揮させ。

私は自らの腕に群青の紫煙を纏わせる。

瞬間的に視界が白黒に染まっていく中、祭壇だけは色付いたまま怨念を放ち続けているのが観えていた。

……おっと、【紫煙の眼吹】はそうなるのか。

それと共に、私の周囲の、特に操っていない紫煙が独りでに身体へと纏わりついてくるのが分かった。

全ステータス上昇、そして追加行動が入るというスキルではあるものの……ここまで一度も発動させた事はなく。

少しだけ胸の内側が高鳴るのを感じつつも、私は息を軽く吐き、


「ッ!」


手斧を投擲する……が、見えない。

いつものように空気が破裂する音と共に、既に群青の狼と化した手斧は祭壇へと命中していたのだ。

それと共に、少し遅れるように……今度は私の目でも見える速度で3本の紫煙の斧と、1本の紫煙の手斧が祭壇へと殺到し、


「破壊、完了かな?」


凄まじい衝撃波、音と共に土煙が巻き上がる。

通常の建造物ならばこれで破壊は出来ているだろう。その証拠に、紫煙外装が通過したと思われる都市の地面は祭壇に続くように抉れており……祭壇の近くの地面はひび割れ、地形が変わる程の被害が出ているのが分かった。


「……嬢ちゃん、ちょっと見んうちにワシの火力を越えてんなぁ」

「え?コレまだ本当の全力じゃないよ?」

「驚愕。まだ上があるのか」

「まぁちょっとね。……患猫ちゃん、伽藍ドゥくんど――ッ?!」

「ご主人様?!」


前衛2人が興味深そうに視線を向けてくるものの、少しだけ流しつつ。

私は目を必死に凝らしている2人へと声を掛ける。

だが、答えを聞く事は出来なかった。

……何だコレ……触腕!?

祭壇の方から高速で伸びてきた、タコにも似た触腕によって身体を絡めとられてしまったからだ。


『汝、我が主の眠りを妨げる者。――万死に値する』

「……ッゥー……いやいやこういう時ってまずSANチェックからとかじゃないの?」


しわがれた老人のような声が聞こえ、土煙の中へと視線を向ければ。

次第に晴れていく煙の中から、それは現れた。

否、現れていると言えば現れているのだが……正確に言えば、全体像は見えていなかった。

祭壇が在った位置。私の放った手斧によって抉れた地面から、巨大な触腕が生え……その奥から大きな長方形の目がこちらを覗いていたのだ。

……こりゃマズったな。

そう思った瞬間、私はその触腕によって握り潰された。



【死亡しました】

【デスペナルティ30m:全ステータス制限怨念耐性低下水圧耐性低下

【全プレイヤーへ通達:水没都市ルルイエ=オールドワンが発見されました。怨念により、不完全な状態で都市が浮上を開始します】

【プレイヤーの皆さまに良き紫煙が漂う事をお祈りします】


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