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Episode5 - E4


戦闘が終わり、再度下へと潜ろうとした私を音桜が障壁を発生させる事で止める。


『どうしたの?まだモブ居る?』

『いえ……もう夜になります。流石に明かりの無い中、暗闇に潜るのは危険でしょう?』

『あー……』


言われ、頭上を見てみれば。

既に日は落ちかけており、これから夜が訪れる事を暗示していた。

……そういえば、今回は昼夜の設定があるんだっけね。

海という環境だからなのか、それともモチーフになっているもの故か。

今回のイベントでは時間経過によって、昼と夜が切り替わる。

明確にそれが何を意味しているのかは分かっていないものの、音桜の言う通り暗闇の中を潜っていくのは危険だろう。


『よし、じゃあ撤退で。夜時間は……自由行動にしよっか』

『畏まりました。私も少し調べたいことがあるので……』

『うん、強制しないよ。行っといで』


ルプスに撤退の指示をジェスチャーで出しながら、私達はセーフティエリアへと戻りルルイエ近くの海岸へと戻っていく。

イベント1日目にしてはかなりゆっくりとした進行ではあるものの……開催期間はそれなりにあるのだ。

そこまで探索を急ぐ必要はないだろう。




「なーんて、思うわけもなく」

「ご主人様ならそうですよね……」


音桜と別れた後、私とルプスは再度海岸へと訪れていた。

理由は簡単。いつもの持病こうきしんだ。


「いやぁ、普通出来ないよ?夜に素潜りなんて」

「出来ないとやらないは違うんですよ」

「あは、まぁそうだねぇ……しっかし」


周りを見渡す。

そこには昼時間の時のように人影……のようなモノが見えていた。

プレイヤーではない。

少なくとも、私は魚の頭をしたプレイヤーなんて見た事は一度も無かった。

……まぁ、これ自体は良いのだけど。

時間も時間だ。海の中に居た連中が陸地に上がってくる事もあるだろう。

昼間に戦った時よりも紫煙が使える分戦いやすくもあり、そこまで苦戦はしないはずだ。

それよりも気になる事が1つ。

私は後ろに振り向きながら、


「で、君達はなんで居るのかな?」


3人の知り合いへと声を掛けた。


「ワシはこの時間帯の方がプレイヤーが少ないだろうと踏んだだけやで?能力的にも邪魔にならんやろしな」

「わ、私も偶然よ?モチーフ的に怨念が活かせそうだしね」

「俺はお前が都市の外に行くのが見えたからな。音桜から1人で行動させるなって言われてんだわ」


スリーエス、患猫、そしてメウラの3人は笑いながらそう言った。

まだ前者2人は良いだろう。

だが、1番最後の身内の発言に関しては少し思う事がある。


「まるで私が自制出来ない子供みたいな扱いじゃん」

「「「「そうだろ(でしょう)」」」」

「ハモってまで肯定しなくても良くない?!てかルプスも言ったな!?」

「私は逆らえませんので……それより、メウラ様は兎も角、他の方々には宜しいので?」


ルプスが言っているのは、彼女の姿が見られて良いのかという点だろう。

今まで、マイスペース内でも彼らが居る時には従者は召喚せずにやってきていたのだ。それを隠さず、ここで大っぴらにしている理由と言えば単純で、


「あー……いや、良いと言うか。もう隠してる意味もないんだよねぇ」

「?」

「っていうのもだよ。そもそも患猫ちゃんは兎も角として、スリーエスくんは多分従者が居る事自体は知ってたよ?」

「知ってたってよりは、居そうやなぁって思ってたくらいやけどな」


私の言葉に続くように、スリーエスが話し出す。

そも、この段階で私がルプスを前に出し始めたのは単純な話、特に隠す必要も無くなったからだ。

従者という存在が掲示板でもよく見られるようになってきたのに加え、同時期に始めているプレイヤー……最初期からこのゲームに触れている者達が【世界屈折空間】の中層に至っているのを考えると、ほぼ全員が従者を持っている可能性が高い。

只でさえマイスペースでの作業を効率化出来る存在だ。絶対にその存在には何処かで気が付くようにはなっていると思われるし……その手の情報自体はしっかり自分で探していけば見つける事も出来るだろう。

……そもそも、最初に隠してたのってスリーエスくん達じゃなくて、彼らの視聴者さん達が信用できなかったからだしね。

本人は信用できるが、その本人を取り巻く周囲が信用できない。

だからこそ、本人に伝わらないように隠していく。これは単純でありながら難しい問題でもあった。


「……って感じでな?嬢ちゃんがマイスペースでもてなしてくれる時、なーんかぎこちなかったんよ。うちのリスナーは気が付いてなかったけど……伽藍ドゥ辺りは気が付いてたんちゃう?」

「あー、ぎこちなかった?これでもリアルの知識とか総動員してたんだけど」

「そらもう。普段から使ってるはずなのに皿の位置とかで一瞬目が泳いだりとかな。戦闘職の観察眼を嘗めちゃあかんで」

「あは」


そこまで観察されているとは思わなかった為に、少しばかり反省する事にした。

流石にリアルで喫茶店の店員だからと言って、慣れていない場所での接客は無理があったらしい。


「ま、ここまでの話はそこまで重要じゃないんだよ。私は海に潜る。メウラくんは保護者みたいな事言ってたから付いてくるとして、他の2人はどうする?」

「こ、ここで会ったのも何かの縁だし……邪魔じゃないなら同行させてもらうわ」

「お、じゃあワシもえぇか?1人の方が自由やけど、友人らと一緒に行動するのも嫌いじゃないしな」

「オッケィ。じゃあ4人で行こう」


こうして、突発で組まれた4人パーティで夜の海へと潜る事にはなったものの。

先に海岸の魚人達をどうにかする方が先になるだろうと、私達は武器を構えた。


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