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Episode3 - E2


潜っていくにつれ、浅い位置には無かったものを色々と見た。

浅瀬で見たような原生生物は勿論の事、私達のようなプレイヤーも多くなっていく。

それと共に、何やら変なモノを見かける事が多くなった。

……アレは……多分敵性モブ、だよねぇ。

そんな中でも異様な雰囲気を纏っているのが、時折見かける魚のような何かだった。

頭部が完全に魚のソレであり……身体も人の形をしているものの、随所に魚の鱗やヒレなどが生えている。

手には石か何かで造られてた銛を持っており、リーチも十分ありそうだ。

周りの他のプレイヤー達が一定の距離を保ちながら避けていくのを見るに……ほぼ確実に敵性モブだろう。

それも紫煙外装という強力な武装を持つプレイヤーが倒さない、という事は面倒な能力持ちの可能性すらある。


『音桜ちゃん、水中での攻撃ってどれくらい出来る?』

『地上とは違って属性が制限されますが……普段通りには。ですが……狙うんですか?』

『いんや、狙わない。ただどんな能力を持ってるかは把握しておきたい所でもあるよ』


今後戦わないとは限らない。

だからこそ出来るならばどれくらいの強さで、どのような能力を持っているかは把握しておきたいのだが……流石にまだリスクも高い。


「ご主人様、向こうに建物のようなものがあったんですが……」

「あ、本当?行ってみようか」


そんな中、ルプスが何かを発見したようで。

私は音桜にその旨を伝え、案内される形でそちらへと移動していく。

すると、だ。

それなりに大きくはあるものの、それなりに真新しい建物が見えてきた。

一見するとちょっとした遺跡の様にも見えるそれは、かといって敵性モブが近くに居たりはしない。

この前挑んだ外界の遺跡よりも平和そうだ。

……これがNPCが言ってたルルイエが設置したって言うセーフティエリアかな。

ルプス達を止め、ある程度自由に動ける私が先行して中へと侵入していく。

すると、


【ここはセーフティエリアのようだ……身体を休めよう】

【チェックポイントを登録しました】


ログが流れると共に、内部は浸水していない事が分かった。

外から見た大きさよりも狭いものの、学校の教室程度の大きさはあるだろうか。

その程度の広さの部屋に、潜る前に海岸で見た門が1つ。

……うん、ここなら十二分に休めそうだねぇ。

チェックポイントの登録も自動でされている為、ここから地上に戻ったとしても戻ってこれるはずだ。

紫煙を貯める事も出来るだろうし……一度、簡易的な拠点として使うのも手かもしれない。

少しばかり危険が無いかを確かめた後、私は2人の元へと戻り内部へと案内し、休憩を取る事にした。


普段とは違う、全身を使っての運動だ。

いくらVRとは言え、精神的にも疲れが溜まっていく。


「……ふぅー……ST自体は問題ないけど、やっぱ窮屈だねぇガスマスクは」

「出来れば装着せずに……ルプスちゃんみたいに泳げればいいんですが……」

「私は人形の身体ですので……皆様方は、スキルがあれば出来そうですが」


【潜水】や【水泳】といった、水中での行動をより楽にするためのスキルは存在している。

しかしながら、補助が入る、というだけで基本的には自身の実力がモノを言うのがこの世界だ。

……泳げなくも、潜れなくもないし……今までは必要なかったからなぁ。

そもそもとして、その手のスキルを使う場面はここまで一切なかった。

外界をメインに探索しているプレイヤーならばあったのかもしれないが、私は基本的には【世界屈折空間】がメイン。

必要がないものをラーニングする必要もない為、放置されていたジャンルなのだ。


「ま、正直このトレジャーハント中にラーニングは出来るでしょ。問題は……」


ちら、と遺跡の外を見る。

そこには先程見た魚人のような敵性モブが1体、遊泳するかのように漂っていた。

こちらを追ってきたのか、それとも私達がここから出るのを待っているのかは分からない。

だが、あの場所に居る以上……私達が出た瞬間に襲い掛かってくるのは必然だろう。


「中から御札って飛ばせる?」

「無理ですね、入り口で止められます。恐らく紫煙や酒気なんかも操っているならば同じ事になるかと」

「……成程ねぇ……ルプス、水中で刀は振れそう?」

「少し難しいですが、いけるかと。地上とは違うので最初は外すと思いますが、その都度修正を入れればいいので」

「……オッケィ」


頼もしい限りだ。

そう思いながら、私は手に持っていた手斧を杯形態へと変えると共に、液体化し身に纏っていた酒気を棒状へと変え固体化させた。

相手の実力が分からない以上、変に手加減した状態で戦うのは良くはない。

だが流石に周囲への影響や、水中で使った場合の挙動が分からない『想真刀』を使うのは怖い為……今回は紫煙駆動で誤魔化す事にしたのだ。


「よし、じゃあそれぞれ準備が終わったら挑もうか。その後、一度地上に戻ってメウラくんと合流。合流出来なさそうだったら……また潜りに来る感じで」

「「畏まりました」」

「……ルプスは良いけど、音桜ちゃんにもそう言われるの、やっぱりちょっと違くない?」

「今更ですか?!」


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